2008/5/24

人の優しさは目に見えない、だから難しい。  しばいデイズ


大川興業の公式サイトから購入できる本公演ビデオのなかで最高傑作と思うのは1997年に発表された第22回公演「全身全霊」ですが、好きなのは2001年に発表された第25回公演の「悪い人も積もればお金となる〜刑務所の民営化」です。

たまたまニコニコ動画でこの舞台のラストシーンだけが紹介していました。
「江頭カッコヨス」と題された映像です。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm2278841

このラストシーンは何回見ても江頭さんが登場したところで目からドバっと涙が噴出してしまいます。

上演初日は2001年9月17日。
その1週間前に、世界を震撼させる事件が起こりました。
そのため、この舞台の台本は大きく変更せざるをえなかったそうです。

ニコ動の映像にはあらすじも紹介されていますが、これだけでは初めて見る方は良く判らないと思います。

補足すると





主人公の阿部(松本キックさん)は共産主義を信じる革命家でアメリカ資本主義の象徴でもあるディズニーランドで爆弾テロを行い罪のない人間を殺したため、民営刑務所「巣鴨プリズン(株)」に服役中。
阿部は、性格が非常に悪く刑務所の中でもたびたびトラブルを起こし他の囚人にも嫌われている。
中でも無銭飲食で服役中の不法滞在中国人キョ・コン(江頭2:50さん)は何かにつけ阿部に絡まれ、散々な目にあっているため内心辟易している。
「巣鴨プリズン(株)」では、囚人たちの過去の出来事を寸劇にし更生に導くプログラムなど、いろいろな更生プログラムを実施している。
阿部は昔、高校受験に失敗し、中学浪人になることを恥じた両親が世間体を気にするあまり、彼を拘束し卒業式に出席させてもらえかった過去がある。
その出来事を寸劇にして演じている途中で激昂した阿部は父親役を演じていたキョ・コンに殴りかかり、騒ぎを起こしたことでキョ・コンの服役期間が延びてしまう。
ますます阿倍のことが疎ましく思うキョ・コン。
ある日、オルゴールを製作する更生プログラムでバスジャックをして逮捕された引きこもりの囚人が、バスジャックの理由は親に薬を飲まされたからだと阿部に話す。
それを聞いて阿部は、自分ははじめて暴れた時に両親が警察を呼んだことを話す。そして、2回目の時には保険所が呼ばれたとも。
「巣鴨プリズン(株)」に新しく赴任してきた医療刑務官(大川豊さん)は阿部の幼馴染で、彼の性格の悪さが彼の両親に愛情がなかったためと知っており、阿部は本当はとても優しい人間だと信じている唯一の人物である。
医療刑務官は、なんとか阿部を更生させようといろいろな手段を試みる。
しかし、なかなか更生しようとしない阿部を見かね、元の優しい男に戻すため、最新式の精神洗脳を試みることを決意する。
洗脳は成功。
ただし、阿部の粗暴な性格は彼の優しさの不器用な表現であったため、洗脳で阿部の精神は完全に崩壊してしまう。
更生プログラム中の囚人達の元にそんな阿部が戻ってくる。
無表情で何の反応もない阿部に対し、これまでの仕返しとばかり罵倒し始める囚人達。
その様子を見て、一人の囚人が声を荒げ、他の囚人達をののしり始める。
彼は、かつて酷いいじめにあったためこれまで「お前らそれでも人間か」という言葉しか喋れなかったのだが、責められる阿部を見て初めてことの真相を他の囚人にぶちまける。
阿部がキョ・コンにやたら絡んだのは、キョ・コンが次男であり、一人っ子政策を実施している中国に強制連行されれば想像を絶する重労働を課せられる、それならば少しでも刑期を長くし日本にいさせようという心遣いのためだった。
ほかにも、阿部の行動が単なる嫌がらせや意地悪ではなく、全て他の囚人のためだったことが判る。
事実を知り、深く後悔する囚人達。
しかし、その思いは廃人となってしまった阿部にはもう伝わることとはない。
それでも囚人達は更生プログラムにかこつけて阿部が望んでやまなかった中学の卒業式を彼のために開こうとするのであった。

で、この映像になります。


阿部が廃人となってしまったのは、悪意からではありません。
医療刑務官の善意からです。
純粋な善意が阿部の心を殺してしまいました。

そして、阿部が廃人になるまで阿部の優しさは誰にも見えませんでした。
見えたときには、もう全てが手遅れになっていました。


そういう話です。

私の書いたあらすじでは、上手く伝わらないと思います。
映像を見て気になった方は、公式サイトでビデオを通販しております。
4000円ですが、それだけの価値はあると思います。





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2008/5/26  13:33

投稿者:ひつじ


奇しくもこの日記を書いた24日にオープニングが追加されたみたいですね。
2時間ほどの舞台なので、全部上がるまでは時間がかかるかもしれませんが、楽しみです。

大川興業は、もって生まれた性格や環境(主に両親)による性格のゆがみから否応なく社会不適合者になった登場人物がそれでも社会の一員として認めてもらおうと必死で足掻く作品が多いような気がします。
そういう社会不適合者を斬り捨てることなく、温かく包み込んでいるのも特徴です。

私はこの卒業式の場面と、「全身全霊」でボランティア活動にいそしんでいたクンタキンテさんがアイデンティティクライシスに悩み電車の中でうずくまるスライドで泣いてしまいます。

「人を泣かせるのは簡単だが、笑わせるのは難しい」と云いますが、人を泣かせるというのも難しいと思います。
実際に、日常生活でも人を笑わせることはあっても、意外と人を泣かすのはなかなかできないです。


2008/5/25  0:13

投稿者:あいき

最初に動画だけを見ても、やっぱり話がよく分からず、「?」と思っていたのですが、ひつじさんの補足を読んで動画を見て、なるほど、と…。
というより、かなりグッとくるというのか…、くるしい話ですね…。
つらくて、どうしようもない話で…。胸がくるしくなる話ですね…。
動画の説明を見てみたら、最初から順にアップしていく、と書かれていました。
最初のオープニングが、また凄いですね。
お笑いも感動もシュールも、全部やるのが大川興業、ですか…。なんか、ほんとに、今まで見たものとはまた、比べるものが違い過ぎて、言葉が出てこないです…。

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