2008/1/24

大阪公演まであと2週間  しばいデイズ


「仇男」東京公演からはや2週間経ちました。
その間、他の舞台を見る予定もないのでごろごろと
人様のレポを読んだり、それについて考察したりなんぞしております。

他の方のレポを読んだり、感想を読んでいろいろ刺激をいただいておりますが
皆さん、「ものたりなさ」を感じているとは云え、概ね好評のようですね。


私はといえば、この作品、
どうしても一昨年上演された「地上最低のショウ」を比べてみてしまうようです。

注:以下の文章はネタバレの上に
1時間ほど考えたことをたらたらと書き綴っただけなので、レビューとしては穴だらけです。
一旦、あげますが、時間を置いたところで大幅に訂正を入れると思います。


ので、まあ、軽く読み流してください。







ストーリーの作りとしてはこの2つ非常に似ていると思います。


複数の人物にあるイベントの招待状が送られてくる。
招待された人物は、それぞれ赤の他人である。
指定された場所に集まった招待客は「何故、自分が?」という疑問を持つが、主催者に「特に理由がない。こちらが意図して択んだわけではない。」と聞かされあっさり納得する。
もちろん、主催者側にとっては招待する相手が「彼ら」でなくてはならない理由があるが、それはクライマックスまで問われることはない。
主催者が「彼ら」を集めたのは、自身の「恨み」を晴らすためである。
但し、集められた「彼ら」は自分が人から恨まれているなんて思ってもいない。
むしろ、自分は「(主催者のこととは別にとある理由から)被害者的立場にある善良な市民だ」と、思っている。

こういった共通点があるので、
「地上最低のショウ」をごらんになった方は、「仇男」、見ている途中でだいたいのオチは予想できたのではないでしょうか?

そんな「仇男」と「地上最低のショウ」ですが、ラストは大きく違います。

「仇男」は、すべてが計画通りに運び、イベントを主催した男は自分の手を汚すことも無いまま見事に復讐を果たします。

ところが、「地上最低のショウ」の場合は、昔激しいいじめに遭い、深く心に傷を負った男が、数年後、いじめた相手に復讐をしようと画策したところ、相手は自分のことを覚えていないばかりか、計画は途中で頓挫し、彼は何一つ復讐を果たせず、「犯罪者」=「加害者」として警察に連行されてしまいます。

もはや死語となっていますが、これでは「…そ、そんな殺生なぁ。」です。

おそらく観客としては、いじめの事実を知った時点で、多少は「じゃあ、復讐しても仕方ないか。」と云う気持ちになっていたのではないでしょうか?
ところが、この「地上最低のショウ」では、いじめられっこは復讐を実行に移す前に、悲しいかな、かつてのいじめっ子の目の前で刑事に手錠をかけられてしまいます。

さらに追いうちをかけるかのように残ったかつてのいじめっ子たちは「まさか…あんなんなるまで追い込んでしまっていたとは。」「ほんま反省ですよね。ボクら、ただふざけてるだけのつもりやったのに。」と嘯くのです。

これでは、見終わってからも憤懣やるせない気持ちになったとしても仕方ないと思います。

思うに観客と云うものは、こういう「恨みつらみ」がことの動機となったいる話の場合、たとえ救いのないダークなバッドエンドになろうとも、何人も殺されることになろうとも、復讐は復讐としてきっちり果たして欲しいと思うものなのかもしれません。

なんやかんや云っても、人は勧善懲悪なストーリーが好きなのではないでしょうか?
悪いヤツはちゃんと報復を受け、成敗されないと気がすまないというか…。
だから、「地上最低のショウ」は見た後、どうしてももやもやしたものが残ってしまうのでしょう。


たとえば、仮に

過去にいじめがあった。
いじめを受けた少年にとっては、それは一生を台無しにするくらいの出来事だった。
その呪縛から逃れられない少年は数年後いじめた相手に復讐することにする。
復讐する相手を騙して集め、しばらくは様子を見る。
やがて少年は当初からの計画を実行に移す。
最後に自分の正体を(復讐相手と観客に)明かし見事に復讐を果たす。

こういう筋だと、たとえ、見終わった後苦い思いが残ってもまだ納得できるのではないでしょうか?

しかし、「地上最低のショウ」では肝心の復讐が始める前に物語はあっけなく終わってしまいます。

かつていじめた相手が殺人未遂で連行されていくなか、声をかけることも謝ることもなく見送るだけの元いじめっ子たち。
彼らはこのあと、またいつもの生活に戻って、日々の生活の中でいじめた子のことも再び忘れてしまうことでしょう。
いじめられたほうのとっては一緒を左右する出来事もいじめた側にとっては「ふざけてるだけのつもり」でしかなく、こんな事件が起こっても、あの頃のいじめはいじめた側にとっては相変わらず「ふざけてるだけのつもり」でしかない。
まあ、ともあれ、みんな無事でよかったよかった。
そんな(観客にとっては)苦々しい大団円で終わったのが「地上最低のショウ」でした。

それと比べ、「仇男」は話の筋立てがすっきりしています。

ことは、主人公の思い通りに運び、死すべき(と主人公が思っている)人物は往々にして殺されていきます。
収まるとことに収まるものがちゃんと収まったという感じです。
主人公が生き延びた上に「人を殺したこと」を懺悔することもないので、不安が残ると感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、ストーリーとしては丸く収まっています。

ただし、この「仇男」もまたただの復讐劇では終わりません。
「仇男」では、何故、一人の男が「犯罪」に手を染めることになったか、最後の最後に判るようになっていますが、その理由が予想に反して凄いです。

あのラストを見る前に(私が)想像していたように、殺された4人が主人公にとっては殺されたも仕方ない仕打ちをした4人であれば、かわいそうな主人公の復讐は完結し、めでたしめでたしとなったかもしれません。
しかし、そうではありませんでした。

いじめと云う「悪」が正されることもなく「被害者」の情けない敗北で終わってしまうのが「地上最低のショウ」ならば、自己満足的な理由で目の前にあった「悪」を討ち果たしてめでたしめでたしと終わるのが「仇男」です。

最後のシーンを見れば主人公は他の4人を憎む理由は判るのですが、殺す理由としては「たかだかあれぐらいのこと」です。
ですから、最後のエピソードを見て拍子抜けになった方もおられるかもしれません。

彼らのために主人公の娘が死んだわけではありません。
彼らの手にかかって主人公の娘が殺されたわけではありません。
あの時、彼らが募金の邪魔をしなくても、
手術できるだけのお金が集まったとも思えません。

でも、主人公は彼らを恨んで、殺してしまいます。

一見、あっさりして見えるこのエピソードが実は、この復讐劇に「人間の怖さ」を加味しているように思えます。

まさに、人は知らず知らずのうちに、どこかで仇をなしているのかもしれない、ですし、人はこんなにもささいな理由で人を殺せるのです。
(それから、話は少しずれますが、「法律」でOKという大義名分があれば、殺せますよね、意外に。)

「地上最低のショウ」ではいじめっ子にとっていじめっ子の恨みは「たかだかあれぐらいのこと」でした。
「仇男」では、観客が、復讐のきっかけとなるシーンをみて「たかだかあれぐらいのこと」で、思ってしまう。
上手く云えませんが、このズレはちょっと怖いです。
どちらもなんだかバランスが悪いです。
(特に「地上最低のショウ」は折角積み立てた物語を最後に自らの手で崩してしまった感じさえします)

だから、見終わった後も、すっきりせず、理由が判らないままもやもやしてしまうもかも。

これは復讐されても仕方ないと思う「悪」がいて
その「悪」のために人生を台無しにされた「被害者」がいて
それなのに「被害者」は「悪」に復讐できなかったのが「地上最低のショウ」。

復讐を決意した「被害者」がいて
その「被害者」の「被害」には直接関係しているわけではないけれど
「被害者」の恨みをかった「被害者にとって悪」なるものが成敗されるのが「仇男」。

思えば、「こわがり」なんかもそうで、復讐される側が純粋に「悪」かと云うとそうではなく自分の起こした罪に怯えているただの「小心者」です。

決して、善悪二元論では語ることができず、安易な勧善懲悪にはならないのが、THE PLAN9の芝居なんですね。



そういえば、「仇討法」という法律があり、それが実行できると聞いたとき、択ばれた4人は迷わず、「仇討ち」=「仇を殺す」と、考えるんですね。
この発想ってなんか怖くないですか?

私も含め普段、大概の人は「人を殺してはいけない」と、思っていると思います。
でも、反面、自分の大事な人を殺された時には
「自分の命を持ってして償って欲しい。」
という思いもどこかしら持っているような気がします。
これって、「死んでくれ」ってことですよね。

それでなくでも
ワイドショーで凶悪な殺人事件の報道があれば
「こんなヤツは死んでしまえばいいのに。」
「死んで被害者に詫びろ。」
と、思ってしまうのではないでしょうか?

私も、人には「死んでしまっていい人なんていません。」
と、口で云うだけでなく、本心で思っているのですが、
その内なる部分にこういう殺人衝動を持っているのも確か

そう思うと、やりきれないですね。


「新・必殺仕置人」の中にこんなセリフがあるそうです。
「ねえ、そんなに人殺さないとさ気分が晴れないの?…可哀想だな。」



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