2010/5/15

「下荒井兄弟のスプリング ハズ カム」見ました  しばいデイズ

DVDでTEAM NACS「下荒井兄弟のスプリング ハズ カム」見ました!



このTEAM NACSの2009年の公演「下荒井兄弟のスプリング ハズ カム」で日替わりアドリブで出演者があまり似ていないモノマネを2、3パターン披露する場面があります。

DVDの副音声(コメンタリー)では、作者である大泉洋さんがこのアドリブの場面について「ずっと続けて欲しいほどモノマネのシーンは笑えるのだけれどもやりすぎるとストーリーの流れを殺してしまうので泣く泣く2、3つでやめてもらった」と云ったようなことを語っておられます。

これと逆の作品作りをしているなぁ、と私が思うのがTHE PLAN9の本公演です。
THE PLAN9の本公演では毎回ストーリーを一旦中止して日替わりのゲームコーナーを挿入していますし、お客さんの受けさえ良ければ、ストーリーの流れなどお構いなしで延々とアドリブ部分を引き伸ばすことも多々あります。
(これはザ・プラン9のアドリブ部分はもともと全体の流れから少し離れたところに用意されているので長々と引き伸ばしても大丈夫なのでしょう)

ザ・プラン9の姿勢としては「W−MEN」のようにアンケートに「長すぎる」と書かれようとも(そしてエンドトークで本人がそのことを暴露しようとも)その時その場で笑って見てくれるお客さんの反応を最優先しています。

これはザ・プラン9が7,8割程度まで作りこみ、後は実際に舞台に上がってから観客の反応を見てその場その場で笑いを作っていくタイプの作品(ネタ)を作っているからなのでしょう。

逆に「下荒井兄弟のスプリング ハズ カム」のコメンタリーを聴くと、TEAM NACSが客席から舞台がどう見えるかを念頭に、舞台での立ち位置、小道具の位置から衣装の動きに到るまで丹念に作りこんでから作品を舞台に挙げていることが伺え知れます。
そこまで用意周到にリハーサルをした上で舞台に挙げた後は少しずつアンケート等を見て補正しているようです。

ラーメンズ、KKPに代表される小林賢太郎さんの舞台も、TEAM NACと同じようにどの客席からは舞台がどう見えるか、舞台のどの位置に立てば全ての観客にちゃんと演技を楽しんでもらえるか、そこまで計算しつくしてから始めて作品を観客に提供しているように思われます。(実際に小林さんは上演前に客席からどう舞台が見えるかを確認されるそうです)

ほぼ完成された状態で作品を舞台に挙げているのですから、アドリブや日替わりの科白があってもストーリーやネタを邪魔しない程度にしか入りません。

全体の調和を重視するTEAM NACS、その場その場の客の反応を重視するザ・プラン9、どちらが良いとか悪いとか面白いとか面白くないとかではなく、観客はそれぞれ好きな方を見ればよいでしょう。
前者に慣れている演劇好きな人にはその場その場で笑いを取る後者も目新しくて面白く見ることができるかもしれません。

まあ、どちらにしろ、前者は客席からどう舞台が見えるかを意識しており、後者は客席の反応を意識しているわけですから、映像になったものより生で見るほうが得られるものが大きいと思います。




(*)
とは云うものの、ザ・プラン9のメンバーはこの芝居の中でのアドリブ(特に会話におけるとっさの受け答え)があまりお上手ではないような…。
1メンバーが1人でアドリブを捲くし立てるような場合はまだ面白いのですが(ただし、この場合同じ舞台に立っている出演者がぼ〜っとアドリブ演技をしている一人を眺めて演技を止めてしまう傾向があります)、複数でアドリブで会話をすると言葉に詰まったり相手との意思の疎通が上手くいかず会話のテンポが悪くなりリズム感が失われグダグダになってしまうことは多いようです。(とは云え台本上の科白でも決してテンポが良いわけではありません。少なくとも私はザ・プラン9のネタ・芝居・漫才を会話のテンポで楽しんだ記憶がありません。)
これはラジオでも云えることですが、例えば、灘儀さんと浅越さんが会話をする際は浅越さんは聞き手に回り対等な会話ではなく灘儀さんの相槌係と化してしまいます。
また、ギブソンさんはザ・プラン9におけるツッコミ役ですが、最年少のため他の3人に強く出ることができません。ツッコんでもどこか「遠慮」が透けて見えてしまいます。
久馬さんは大喜利を得意とされているのでアドリブがききそうに思えますが、大喜利における「考える時間」を必要とするため会話の中で瞬時に上手いことを云えるわけではありません。むしろ他メンバーの会話を少し離れたところから見てここぞと云うところで口を挟んでいます。
これか私感に過ぎませんが、仲の良さが定評のザ・プラン9ですが、それぞれの間には目に見えない薄い膜が存在しているように思えてなりません。
芝居におけるアドリブの場合でも、彼らは与えられた役になりきってアドリブ演技するのではなく、どこか吉本におけるこの先輩後輩の関係やメンバー内の素の立場をそのまま舞台にも引きずっているかのように見えます。
今のお笑い界には「ガチで笑わせてこそ凄い芸人」という風潮があるのかもしれませんが、ザ・プラン9は決してガチが上手いように思えないんですよね。
会話形式のアドリブが上手いわけではないから自ずと本公演のような芝居の中でもピン芸人のアドリブになってしまうのかもしれません。
だったら、ユニットの際には稽古を重ね作りこんだものを披露したほうがずっと彼らの良さを発揮できるのでは、と思ってしまうのです。

とは云うものの、実際に何の打ち合わせもない状態で2人の人間がテンポの良い会話のキャッチボールをするのも困難です。
ですから、ザ・プラン9はあの人数でテンポ良い笑える会話をガチでできるようになれば、今のようにファンだけを相手にした芝居だけでなくより世界が拡げることができるのですが…。




<後日談>

なかにはアドリブでさえ稽古を重ね完璧に用意してからはじめて観客に披露する劇団もいらっしゃるようです。

TBSラジオ「ウィークエンドシャッフル サタデーナイト・ラボ」
「喜劇特集・特別講師・三宅裕司!」(前編)
http://podcast.tbsradio.jp/utamaru/files/20100529_satlab_1.mp3


この放送を聴いて、「バンパイア・キス」と云う映画でニコラス・ケイジが撮影用に用意された作り物のゴキブリに納得せず、本物を生きたまま食べたというインタビュー記事を思い出しました。
どうやらコラス・ケイジはそれが自慢のようでした。
このエピソードをインタビュー記事で読んだとき、作り物のゴキブリを本物を食べたとしか観客に思わせないのが本当の役者ではないかと思ったのですが、それと同様に台本に書かれたものをアドリブとしか見えないよう演技するほうが正直凄いと思います。


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