私は信義を重んじる日本人である・・・ということが分かりました。
あさってに迫った東京行き、土日、2回にわたっての公演。
「ありどおろ座」の座長さんは、G5の3人に“2泊分の宿泊費”と“新幹線往復旅費”を支給してくださることになり、ほかの2人はウハウハ喜んでいます。
昨夜のG5練習はオペラの特訓ということになりました。
私は3曲のうち『パリアッチ(道化師)』をリタイアすることになりました。
ほかの二人は過去1〜2回歌ったことがある。私だけはじめてなんです。
しかもよりによって合唱団の出番が非常に多い。
ついに匙、ではなく‘楽譜’を投げ出しました。
これは『イル・タバッロ(外套)』の楽譜なんですが、オペラの楽譜なんて大体こんなもんで、私なんぞ一度見たくらいではどこをどうやって歌っていいのかまずわからない。それを短期間で覚えようと言うのが土台まちがいでした。
それにしても、投げ出すのも厄介なくらい楽譜が重いんです。仰々しいんですねえ。
メンバーの倉知くんは、オペラと聞くととたんに元気が出るという根っからのオペラ好き。
普段の練習ではいつも遅刻、来るたびに「ああ疲れた」とか「ねむたい」とかいってるのに、オペラの練習となると一番先に来て、楽譜を開いてみんなを待ってるんです。
もう一人の奥村くんは、もう“東京に行く”というので異常に張り切っています。
講演が終わったら「大江戸博物館」に行くんだそうです。
この二人のはしゃぎようは、やはり“自信”から来ているんですね。
そこで私は決心して、主催者との連絡をしてくれているピアニストに伝えました。
「3曲のうち2曲しか出演できないんだから、私は2日目の宿泊費までいただくわけにはいかない。終電で帰るからキャンセルしてもらってください!」
すでにいただいている新幹線の切符は、その夜木曽川駅で前日のものに変更してきました。
私はやはり、信義を重んじる日本人だということがわかったのです。これはめでたい。
これからもこうやってカッコつけながら世の中を渡って行きます。

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