不出来のサツマイモとうらなりのゴーヤ、児童館事務室
不出来「おう、りゅうきゅうの、おめえたち今頃までつるにぶらさがってたのかい」
末生り「これはさつまの親分。あっしたちゃあ“うらなり”っていいましてね。
変な天気のおかげで今頃陽の目を見たって訳で」
不出来「道理でもうひとつ色も育ちもよくねえな」
末生り「あいすみません。でも親分もいつものように立派とはいえねえ」
不出来「そうだろう。こりゃああの爺さんのせいよ、71歳とかのよう」
末生り「ああ、あのおいぼれですかい。
あっしらや日本朝顔の種が生きてるところに西洋朝顔なんか植えやあがるから、
縄張り争いの連続でろくに子分を増やすことが出来なかったって訳でしてね、
今頃まで葉っぱの陰でぶるさがってなきゃあなんねえんだ」
不出来「でもよ、西洋朝顔を植えた後におめえらが勝手にのさばってきたのを、
あの爺さんうれしそうに見てたんだけどな。“日本がんばれ!”なんて言ってよ」
末生り「おや、さっきはあの爺のせいだなんておっしゃってたんじゃあ」
不出来「それもある。でえじな夏になってあの爺さん、なかなか児童館に来なくなってよ。
宮沢賢治じゃあるめえに“裏の畑にいます”なんて喜んでいたのに、
肥料もくれずに葉っぱもつるも伸び放題ってことになってな」
末生り「どこか悪ぃいんじゃねえんですかい?」
不出来「かもしれねえな、もともと脳味噌が悪いなんていってたから」
末生り「やっぱりね。もう長くねえかもしれねえな」
不出来「ま、お互ぇなるようにしかならねえんだ。寿命ってもんを待とうじゃねえか」
末生り「あのじじいといっしょにね」
不出来「秋だなあ・・・」

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