2016/3/5

かもめはかもめ  MOVIE

本日の映画は
「ブロークン・ポイント」

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です。

原題は「Days and Nights」。
レンタルDVDのパッケージに並ぶキャスト名は
ベン・ウィショー(「パフューム ある人殺しの物語」)、
ジャン・レノ(「レオン」)、
ウィリアム・ハート(「 蜘蛛女のキス」)、
ミカエル・ニクビスト(「ミレニアム」シリーズ)、
ケイティ・ホームズ(トム・クルーズの元嫁)
と地味に豪華でしたので
TSUTAYA 準新作・旧作96円(税抜)レンタルで
借りてきました。

レンタルDVDを再生してすぐに
(と云っても17分もある「新作案内」!の後)
登場人物の一人
ピーター(クリスチャン・カマルゴ)による
これから始まる物語の登場人物の簡単な紹介があります。

ピーターはそこそこ売れている映画監督で
恋人である大女優であるエリザベス(アリソン・ジャニー)とともに
病気療養中の彼女の兄ハーブ(ウィリアム・ハート)の元に
誕生祝いに行くところです。

ピーターのモノローグから判ることは

・エリザベスとの関係がすでに倦怠期に入っていること。
・エリザベスが主演の舞台が中止となり
 映画女優としてもも彼女はもう落ち目であると云うこと。
・ハーブの病状は医師が隠しており不明であること云うこと。
・エリザベスの息子エリック(ベン・ウィショー)が
 訳のわからない前衛芸術にのめり込んでいると云うこと。
・屋敷の管理人の娘ができちゃった結婚をしていること。
・ピーターがハーブの元を訪れるのはこれがはじめてということ。

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後、百合の香りは毒であると云う豆知識も。

以上のことが
エリザベスとピーター以外の人物たちが
まだ一人も登場もしていない時点で語られるため、
映画を観ているこちらとしては今一つ頭がついていけず
始まって4分で脱落。

先に進む前にどういう話かネットで確認したところ
この映画、原作がチェーホフ「かもめ」なんですね。

本作の公開に当たって
劇作家チェーホフを囲んで「かもめ」の内容を聞いている
モスクワ芸術座の団員たちの写真@と同じ構図の
宣材写真A(?)を用意するくらいですから
本作を見る観客なら、
元ネタであるチェーホフの「かもめ」を知っていて当然
と云うスタンスなんでしょうか?

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写真@中央が戯曲を読むチェーホフ。若い時は相当イケメンさんだったらしいです。

「かもめ」をご存知の方であれば
この若干前のめっている冒頭も
「ああ、これは『かもめ』におけるあのことね。」
と、すんなり頭に入っていけるのでしょうが、
人名が覚えにくいと云う理由からロシア文学初心者の私には
かなりハードルの高い映画の幕開けです。

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写真Aかなり意識して映画を撮っているとは思うのですが。

上の2枚の写真を見比べればお判りのように
映画の舞台は19世紀末のロシアではなく
1984年戦没者追悼記念日の週末
アメリカ合衆国ニューイングランドとなっております。

「世界演劇史上画期的な作品」とまで呼ばれる戯曲を
わざわざ時代も場所も変えて脚色しているのですから
まあ、手強い。

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舞台がアメリカに移っているのでかもめの代わりに白頭鷲が出てきます。

とにかく登場人物たちの関係が複雑すぎるのです。

Windows Media Playerの
「一時停止」ボタンをクリックして約10分。

wikipediaの
「かもめ(チェーホフ)」の記事に目を通し
登場人物の大まかな相関図をチラシの裏に自作することで
なんとか最後まで見終えることができました。

とは云っても登場人物自体はとても少ないのです。



家主ハーブの誕生祝いに参加するため集まったのは
普段から一緒に住んでいる使用人も含め11人。

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全編通して鈴木清順監督にしか見えないウィリアム・ハート。

妹のエリザベスと
彼女の公私ともにパートナーであるピーター。
エリザベスの息子でハーブとも仲の良いエリックと
彼の舞台の主演女優である
エヴァ(ジュリエット・ライランス)。

後は管理人のヨハン(ミカエル・ニクビスト)と
その妻メアリー(チェリー・ジョーンズ)、
娘のアレックス(ケイティ・ホームズ)、
娘婿で鳥類学者スティーヴン(マーク・ライランス)。
ハーブの主治医である
ルイス(ジャン・レノ)と小作人1名。

全員が揃い夕食を済ませた後

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久しぶりに再会した息子に最初にかけた言葉がこれ。
母親にとってはいくつになっても幼子のようなもの。


森の中に設えたステージに場所を移し
エリックがハーブへの誕生祝いとして
自作の舞台を披露します。

ところが、始まって早々
母親であるエリザベスから
聞くに堪えない辛辣な批判や揶揄を次々とに投げつけられ
カッとなったエリックは舞台を中断してしまいします。

おそらく
エリックの目指す前衛芸術を理解できなかったのは
エリザベスだけではないのでしょう。

しかし、他人であれば黙って見ているところを
わざわざ言葉にして口に出してしまうところが親と云うものです。
特に周りに他人がいればなおさら。
「親の私が云わなきゃどうするの?」ってものです。

それが一番子供の心を傷つけるのですが、
本人はそれが愛情と思っているのでお構いなしです。

愛する母親に認められなかったことで
失意のままその場を立ち去るエリック。

ステージに取り残されたエヴァはこれ幸いと
映画監督であるピーターに近づき
女優としての売り込みをかけます。

ピーターの方も満更ではなく
エリザベスの目を気にしつつも
エヴァを受け入れるようになります。

ハーブの誕生祝いはその後も続きますが、
そこには、エリックとエヴァ、ピーター、
そして、スティーヴンの姿はありません。

翌日、ヨハンと一緒に森に狩りに出かけたエリックは、
スティーヴンが保護観察している白頭鷲に襲われ
誤って撃ち殺してしまいます。

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そりゃ卵のある巣に人間が勝手にあがりこんで寛がれては鷲だって怒りますわな。

その夜、エヴァは都会で女優になるため家を出る決意をし
ピーターはエリザベスに黙ってヨハンから車を借り
一人帰途に着き事故を起こします。

それから3年後。
再び、ハーブの元を訪れるエリザベスとピーター。
今回の来訪は、屋敷と森を売り払い
ハーブを介護のしやすい都会に引き取るためです。

屋敷には気鋭のアーティストとして
成功を収めたエリックの姿も。

管理人一家との夕食もこれが最後です。
その食事の席で初めて母親から賞賛を受けるエリック。
しかし、表情は冴えません。

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世間に認められたことでようやく息子の芸術を褒める母。

そこにすっかり落ちぶれた様子のエヴァが現れ
エリックとの3年ぶりの再会を果たしますが、
そのまま姿を消してしまいます。

人生に絶望したエリックは狩猟小屋で自殺を図るのでした。


と云うのがざっくりとしたストーリーです。
いろいろ省いたのでただでさえ判りにくいストーリーが
さらに判りにくくなっております。

もともとの「かもめ」がどうなのかは読んでいないので
判りませんが、
この映画では最も多感な年ごろのエリックを始め
登場人物の殆どが
日本映画にありがちな
「登場人物が自分の心情をセリフでベラベラしゃべる」
なんてヤボな事をしないため、
見ているこちらとしても誰の気持ちにも寄り添えず
のめり込むことができません。

面白いと思う人物は
管理人のヨハンぐらいでしょうか。

自分の思いを表に出さない登場人物たちの中で
彼のがさつさは異様に目を引きます。

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スウェーデン俳優というとこの人かステラン・スカルスガルドか。

冒頭、最寄りの駅まで
エリザベスとピーターを軽トラで迎えに来ますが、
エリザベスのトランクと見舞いの花束を
トラックの荷台に乱暴に放り投げて
エリザベスに注意されるわ

屋敷に到着した後は、
玄関のドアをこれまた乱暴に開け
妹の来訪を楽しみに待っていた家主のハーブの顔面を
2度に渡って強打しておきながら
「すまん」の一言で済ませるわ

これではどちらが雇い主か判りません。

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家族が集まった途端主賓が大参事に…。

また、エリックが事故で
スティーブンが大切にしている白頭鷲を撃ち殺した時も
屋敷中響き渡るような大声で報告するものだから
あっという間にスティーブンの知れるところとなります。

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ことを内内に済ませたいのであれば(*)もう少し声を落とそうよ。

夜が更けてようやく屋敷に帰ってきたエリックに
白頭鷲の件で有無を云わさず
殴りかかるスティーヴンをとめる際には
スティーヴンの首めがけて牛の鎮静薬を打ち込んだりと

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普通、喧嘩の仲裁にそんなもん首に目がけて撃つ?と、娘カンカン。

やることなすことどれもが雑すぎで眩暈を起きます。
しかも、本人へ全然気にしていないのです。

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義理の息子を撃っておきながら親父の方はしれっとしています。

それだからでしょうか、
本国アメリカでも1スクリーンのみの公開にとどまったようで
Rotten Tomatoesでの
トマトメーター(と呼ばれる40人から批評家から)の評価が0%
と云う本作。

日本では2014年にWOWOWが日本初放映し
今回DVDリリースされたようです。

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たぶんこの方の人気にかこつけてのWOWOW放送、DVDリリースかと…。

確かに、一般受けするような映画ではありません。
が、特筆すべきところもちゃんとあります。

それは、ロケーションとセットの美しさです。

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屋敷の内装はもちろん

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都会、田舎共に駅のロケーションも美しく、また、森の描写は鳥肌もの。

たしかにストーリーは退屈で
感情移入しにくいかもしれませんが、
風景描写は本当に美しいので
これだけでも見る価値があると思います。





(*)
1959年アラスカがアメリカの一州になった時、
ハクトウワシは1940年にアメリカ政府が制定した保護法の下におかれ
その後、鷲を殺すことは法律違反行為であり、
死んだ鷲もしくは鷲のいかなる部分を所持することも違反になりました。

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