2016/2/14

今日、新湊で  MOVIE


IT関連企業「N&S global Inc」の
CEO中原祐馬(竹野内豊)の元に
3年前に袂を分かったかつての共同経営者であり
親友だった塩谷航平から
日に何度も電話がかかってくるようになります。

しかし、忙しさを言い訳に祐馬は
電話に一度も出ることはありませんでした。

それから数日経ち
2人のことを良く知る秘書の
大場由希子(優香)にせっつかれ
ようやく航平からの電話に出た祐馬。

しかし、その電話が無言のまま切れたことから
妙な胸騒ぎを覚え、由希子と共に取るものも取り敢えず
航平の故郷、富山県新湊市を訪れます。

そこで2人を迎えたのは既に骨上げも終えた
航平の変わり果てた姿でした。

明らかにお呼びでない焼香の席で
末期の肝臓癌だった航平が新湊曳山まつりをめぐり
地元・四十物町のために奔走し、
その結果病状を悪化させ亡くなったことを聞かされた祐馬は、
遺された航平の娘、瞳(高橋ひかる)に頼まれ
資金と人手不足により隣町・西町に泣く泣く譲渡された
四十物町の曳山を取り戻そうと決意します。



ということで上映開始から早1か月。
地元ではまだまだ大ヒット中の
「人生の約束」

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を見てきました。

この作品が、未だに地元シネコンのスクリーンを
日に4〜5回分独占してしまうため
洋画を中心に初日にそこそこの成績しか残せなかった映画が
どんどんファーストショーやレイトショー落ちしていくのを
目の当たりにしなくてはならず
釈然としない気持ちを抱きつつも
もういい加減諦めて見ておくしかあるまいと
ようやく重い腰を上げた次第です。

まあ、判りますよ。
これだけの豪華キャストが富山に集結するなんてこと
そうそうありませんから。

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映画が進むにつれていい顔になっていく主演の竹野内豊さん。

そりゃ県を挙げて
「ア、イヤサー! イヤサー!」となりますわ。
 


と、あまり気乗りがしなかった割りには
実際に見てみると
個人的には得るものがある映画でした。

これだから映画は見るまで侮れません。

監督の石橋冠氏が、
「生涯1度きりでいいから映画を撮りたい」
と云っていた映画だけに訴えかけてくるものも
大きいです。
(なので脚本も監督が兼業しているかと思っていたら
脚本はあの吉本昌弘なんですね!)


IT企業なのに畑違いの紡績会社との合併を行うなど
会社拡大の為ならどのような手段も辞さなかった
ワンマン社長の祐馬でしたが、

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ちょっとでも意見すればすぐに辞表を書かされるため周りはイエスマンばかり。

親友の死をきっかけに知り合うこととなった
塩谷航平の義兄である渡辺鉄也(江口洋介)や

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短髪にしたせいかやたら耳に目が行ってしまう江口洋介。

四十物町の町内会長である西村玄太郎(西田敏行)の影響を
もろに受けそれまでのビジネスライクな考えを改めます。

と云っても祐馬の心変わりは
この人なくては始まらなかったでしょう。

それが、柄本明演じる
西町の町内会長、武田善三です。

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江本明の真骨頂と云うべき怪演を披露してくださいます。

曳山を巡って対立する
西村町内会長と武田町内会長の関係はそのまま
祐馬と航平の関係に置き換えることができます。

おそらく四十物町と西町の対立に関わることで
意識的ではないにしろ祐馬は初めて
自分の姿を客観的に見ることができたのではないか
と思います。

西村町内会長の語る「踊り場」の話ではありませんが、
一旦立ち止まって自分のことを客観的に見るというのは
とても難しいことです。

なかなかできることではありませんし
そういう機会に恵まれることも稀有です。

もともと心がけさえしていれば
そこたら中に機会は転がっているのですが、
自分の視点から見えるものだけを見ていると
意外と気が付かないものです。

2人の町内会長はまるで迷える祐馬のためだけに用意された
寓話のキャラクターのようです。

他人は自分を映す鏡。

他人を腐す言葉は案外そのまま自分に帰って来ることが
多いもの。

誰かに対して何か感情が動いたとしたら
それが悪意でも好意でも感じる大元の理由は
その誰かにではなく自分の中にあるものです。

武田町内会長の姿に嫌悪感を抱いても
それは祐馬にとっては
そのまま自分に対する嫌悪感でもあるのです。

そのことを私も常に肝に銘じなくては。

親友の死がなければ
四十物町との出会いがなければ
そして、武田町内会長と云う自分と
瓜二つの人物に出逢わなければ
祐馬もまた
使われることなかった「西町」の提灯の前で
一人寂しく佇む西町町内会長のようになっていたでしょう。

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祐馬が受けるはずだった敗北を代わりに押し付けられたこのシーンは泣けました。

何故、武田町内会長が四十物町との約束まで破って
花山車(昼の曳山)、提灯山(夜の曳山)の両方に
拘ったのかは描かれていません。

曳山にこれだけ執着するのには
それなりの理由があるのでしょうが、
普段の生活で他人が抱える事情まで
なかなか目配りできないのと同様
その理由は最後まで伏されたままです。

たぶん監督が伝えたいのはそう云う事ではないからでしょう。

社長の顔色を覗い、強制捜査が入るまで
架空取引のことを云いだせなかった祐馬の社員同様
西町町民も武田のやり方に
全部が全部賛同しているわけではありません。

曳山に対する思いが強い曳き手であればあるほど
武田町内会長に対して思うところがあるようです。

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曳山の譲渡式の間、ずっと浮かない顔の西町の曳山総代。

でも、それは武田町内会長には見えていません。

かつて祐馬が部下である沢井卓也(松坂桃李)ら
重役の内に秘めた思いに気づかなかったように。

前進前進あるのみで気が付いた時には
周りには誰もいなくなっていました。

驚くほど素直に親友の遺志を受け継いだ祐馬と
周りの意見に全く耳を貸さなかった武田町内会長。
曳山祭りの日、町中の人々から祝福を受けた
西村町内会長と
誰からも相手にされず一人ぼっちの武田町内会長。
この2つの対比は
「花咲か爺」や「こぶとり爺さん」のように
あまりに寓話的です。

「立ち止まらなければ見えない景色もある」
親友の最後のメッセージをしかと受け取ったことで
この災難から逃れることができた祐馬。
(まあ、半分ほどは時すでに遅しでしたが…)

そこが航平という友人を持っていた祐馬と
同じ町内会長でありながら西村町内会長と
敵対する関係しか築けなかった武田町内会長との違いでした。

おかげで人が変った(昔に戻った)祐馬は
親友が愛した曳山を通してつながった鉄也と
親友の仏前で語り合うまでの仲になることができました。

そこで出てくるアイテムが煙草です。

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ここでの煙草のやり取りは屈指の名シーン。

今年の年明け早々
WHOが喫煙映画を成人指定するよう勧告したことが
話題になりましたが、
男同士が心でつながった時必要とされるのは煙草です。

殴り合いの後、心がつながり
その証として共に煙草を吸う
これ以上の女がグッとくる男のロマンがありましょうか。

ここにグッと来なくてこの映画、何のために見たの?
と、私は問いただしたい。

だってですよ、
イケメン2人(←ここ大事)が煙草を吸うことで
すっと心を通わすんですよ。
これを「美味しい」と云わずして何と云おうです。

私自身は嫌煙家とまでは行きませんが、
煙草の煙は身体が受け付けません。

でも、このシチュエーションは
是非とも映画史上に永久保存したいです。

無くてもいいけど
あった方が断然良いと思うんですけど、喫煙シーン。

ダメでしょうか?


あれ?
またしても論点がずれたレビューになってしまいました。

う〜ん。


最後に新湊は私が住む富山市の隣の市ですが、
2012年の映画「あなたへ」を見るまで
そんな曳山祭りがあることを全然知りませんでした。
申し訳ございません。

原作者の山川健一さんのブログを読むと
本作について
「映画の撮影と同時進行でこの小説を執筆しました。
ストーリーは、映画と小説は基本的に同一ですが、
枚数が小説のほうが3倍なので、
主人公たちの出会いや別れなど、
映画では描かれていない彼らの過去についても描いています。
我が儘を言わせていただけるなら、
映画の前に小説を読んでいただければ嬉しいです。」
と書かれております。

映画の後になりましたが、
映画に描かれていない部分も多く
それを補うため原作本を読みたく
とりあえず市立図書館で検索をかけたところ
昨年の11月に発売されたばかりだからなのか
入荷されてはいませんでした。

映画公開中のこのタイミングで
在架していなくてどうするの?!

こういうところが富山なんですよね。
良い意味でも悪い意味でも。
 
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