2015/11/10

ファイト! 闘う君の唄を闘わない奴等が笑うだろう  MOVIE

本日の映画は

「ラスト・ナイツ」

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です。

「CASSHERN」
(製作費6億円、興行収入15.3億円)
「GOEMON」
(製作費8.5億円、興行収入14.3億円)
のしくじり先生こと紀里谷和明監督の
映画第3作目であり、

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興行収入を見る限り第1作も第2作も失敗作ではないんですね。お見逸れしました。

ハリウッド初進出作品となっています。

こう云ってはなんですが、
紀里谷和明監督作品と云うだけで
「負のフィルター」がかかる映画ファンが
かなりの数おられると思われるのに
今回はただのハリウッドで撮った映画ではなく
日本でヒットした映画のハリウッドリメイクでもなく
ハリウッド大作と呼んでもよい規模の映画です。
当然、お金(=製作費)もかかっております。

さらにハリウッド大作ですので
字幕も大御所、戸田奈津子先生です。

敢えて字幕を戸田先生に依頼するところに
私なんぞは
「監督、やりよるな。( ̄ー ̄)ニヤリッ」
と、非常に心惹かれたのですが、
戸田先生の翻訳を毛嫌いしている映画ファンが
少なからずいらっしゃるのもまた事実。

そして、ハリウッド大作らしく
出演者も豪華にハリウッドスターを起用。

日本ではアカデミー賞俳優
モーガン・フリーマンが出演していることで
注目を浴びていますが、
主演は今映画女子から注目を集めている
「英国俳優」の一人でありながら
箸にも棒にもかかっていないと思われる
(参考:「SCREEN×イマジカBS 英国男優総選挙2015」)
クライヴ・オーウィンです。

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日本でクライヴ・オーウェン主演を理由に
劇場に足を運ぶファンってどのくらいいるのでしょう?


日本では女性人気が今一つでも
これは何気に凄いことです。

他にも
ノルウェーで何本が映画に主演しているアクセル・ヘニーや
「天使と悪魔」でヒロイン役を演じた
イスラエルの女優アイェレット・ゾラー、
韓国の国民的俳優、アン・ソンギ、
マオリ族出身のハリウッド俳優、クリフ・カーティスが
参加しており相当「国際色豊か」となっておりますが、
このこともまた人によっては
「監督スタッフ俳優の国籍が色々またがってる映画
=失敗作
と、取られかねません。

さらに原作があの「忠臣蔵」と
かなり手垢のついたものとなっております。

そうなると見る方もそれらを踏まえ
いくつもの色眼鏡をかけて見てしまうことになってしまいます。
(そして、私のような自称映画好きに限って
好きが高じて色眼鏡をかけて映画を見ることが多いのです。)

ある意味、マイナスからのスタートと云っても良いでしょう。


ところで、原案となった「忠臣蔵」。
皆様はどこまでご存知でしょうか?


「忠臣蔵」と云うと
古くは歌舞伎・人形浄瑠璃の演目に始まり
落語、講談、浪曲、
はたまたテレビドラマ、映画、舞台、漫画と
いろいろなメディアに形を変え語られ続けてきた
「base on true story」です。

「忠臣蔵」関連の作品だけでもこれまで
数えきれないほど作られています。

基本のストーリーは
Wikipediaからまるっと解説を
お借りすると

@江戸時代中期の元禄14年3月14日、
江戸城殿中松之大廊下で赤穂藩藩主・浅野長矩(内匠頭)が
高家肝煎・吉良義央(上野介)に刃傷に及んだことに端を発する。

Aこの一件で加害者とされた浅野は即日切腹となり、
被害者とされた吉良はお咎めなしとなった。

Bその結果を不服とする赤穂藩国家老・大石良雄(内蔵助)を
はじめとする赤穂浪士(赤穂藩の旧藩士)47名、
いわゆる「赤穂四十七士」は、紆余曲折のすえ

C元禄15年12月14日未明に本所・吉良邸への討ち入りに及び、
見事その首級をあげる。

という皆様ご存知私もご存知なお話となっています。

映画のストーリーも
この@〜Cからいささかも外れることなく踏襲しておりますので
映画をご覧になって
「意外性がない!!!」と思われてもそれは仕方ありません。

基本的なコンセプトは前作「GOEMON」とも
通じるのでその点でも酷評される方がいるかもしれません。

確かにそう思う気持ちも判ります。

でも、むしろ、同じ日本人なら
日本で2本しか映画を撮っていない監督でも
ハリウッドでハリウッドスターを使って
ハリウッド大作を撮らせてもらえる
この事実を喜べ!!ってなもんですよ。

日本では、「CASSHERN」や
「GOEMON」を見て
「映画としてストーリーが全くダメだ。」
なんて小さなこと云っていた(ワタシモナ)裏側で
映画の殿堂ハリウッドは紀里谷和明監督の美的センスを
大きく買っていたのです。

重箱の隅をつついたような感想を述べて
いい気になっていた当時の私を叱りつけたい。

日本では安っぽいCGでしか作れなかった世界も
生のセットを使えばこのとおり。

同じ「忠臣蔵」を題材にした「47RONIN」と
比べてみても迫力が違います。
(ただし、IMDbでの評価は本作6.2、
「47RONIN」6.3とどっこいどっこい)

架空の帝国を舞台に、浪士を中世の騎士に置き換え
ここまで映画として面白くできたのですから
いいじゃないですか。

この@〜Cに渡る基本ストーリーを
赤穂事件の2年後、1703年から312年もの間
あれやこれやとずっと使いまわしているわけですよ、日本人は。

その間に
悪役である吉良側の視点に立ったり
赤穂四十七士の一人にスポットを当てたり
後日談を追加したり
他の物語(「東海道四谷怪談」等)とコンボしつつ
どれだけ多くのストーリーが生み出されたことか。

そんな王道中の王道であるストーリーを引っ提げて
一人の日本人がハリウッドで5年間頑張ったのだと思うと
少しぐらい感慨深くなっても良いじゃないですか。

「杉原千畝 スギハラチウネ」や
「海難1890」といった
「日本人礼賛」映画はちょっと…な私ですが、
この映画は例えロッテントマトの評価が16%*2でも
「ハリウッドで撮影」と云うスタート地点に立てただけでも
誇りに思います。

では、肝心の映画はどうだったかと云うと
日本の映画ファンが眉を顰める長々とした説明セリフも抑え
人間ドラマとして丁寧に描いているのですが、
残念なことがひとつ。

それは何かと云うと
「原作が『忠臣蔵』と知って見ると面白さが半減する」
ということです。

……。
なんという自己矛盾!
今回私、レビューを書き進めているうちに
とんだカオスに突入してしまいました。
この先どのような文章になるか自分でも判りません。

この映画では上の「基本ストーリー」での
Bにある「紆余曲折」を非常に時間をかけて丁寧に描いています。

主君も部下も失った主人公ライデンが身を持ち崩していく様を
これでもかというほどくどくどと描き
演じているクライヴ・オーウェンも
鬼気迫る演技で応えているのですが、
いかんせんこれが敵を欺くための「芝居」であることは
劇場までわざわざ足を運んで本作を見に来るような
観客の皆様ならご存じのはず。

せめて、せめて
「忠臣蔵」が原作であることを知らずに見ていたら
と思わずにおれません。



「世界に届け。新しい『忠臣蔵』。」
そんなネタバレを堂々と公開前から
ネタバレしたらあかんやろ!

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公開日初日の新聞広告からしてこうです。

何も知らないまま、鑑賞し
途中でハッと
「ああ、これって『忠臣蔵』なんだ。」
と気づくのが(私にとっての)ベストな見方だったのに
なんということでしょう。

いや、判りますよ。
ここまで映画ファンからの評価が低い監督の新作、
それも「モーガン・フリーマン出演」が最大の売りの
凱旋映画を日本のお客さんに見てもらうため
どう宣伝するかとなると私でも云っちゃいますよ、
「新しい忠臣蔵」って。

そうすることで普段、映画を見ないような方も
「忠臣蔵」というキーワードに惹かれて
ひょっとしたら見に来てくれるかもしれないじゃないですか。

というわけで
マイケル・コニーベス、ドブ・サスマン
という2人のアメリカ人(?)脚本家の手によって
書かれた「ラスト・ナイツ」は世界観こそは違えども
(外国人が「忠臣蔵」を元に脚本を書いたというのも
この映画の興味深いところです。)
まんま「忠臣蔵」ですので
味方に一人の死者も出さなかった四十七士と違い
何人かの騎士は志半ばで命を落としたものの
ライデンは見事主君の仇を討ちます。

めでたしめでたしですね。

なのに何故かスカッとした気分で映画が終わりません。


と云うのも
主君を嵌め処刑へ導いた大臣ギザモット(アクセル・ヘニー)
も相当に悪党ですが、
その悪党をそうと判っていながら
自分の地位と政治に利用するため囲っている

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1年間ライデンに怯えつづけたため心が壊れてしまうギザモット大臣。

「皇帝」こそが諸悪の根源であり
(「忠臣蔵」では将軍徳川綱吉に当たるのかな?)

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皇帝は第84回アカデミー賞外国語映画賞を授賞した「別離」で
父親役をしていたペイマン・モアディです。


その「皇帝」はその禁断の身分故最後まで生き延びるため
なんだか仇討が終わった後も
思うほどカタルシスが感じられないのです。


まあ、ギザモットの方も
思いのほかあっさり殺されてしまうからでしょうが。

結局のところ
御政道に対する正論を進言しても一切耳を貸さない
老主君バルトーク卿(モーガン・フリーマン)に
生前も死後も振り回され続けるライデンにしても
騎士として思うところがあっても逆らえず
ギザモットに従うしかないイトー(伊原剛志)にしても
ギザモットの悪政を知りながら自分の利益のため目を瞑る
皇帝に仕えるオーギュスト卿(アン・ソンギ)を
始めとする大臣たちにしても
時代が時代だけに
臣下は辛いわ


そんなこんなでいろいろ云いたいこともありますが、
映画公開前から一気に
テレビでの露出が増えた紀里谷和明監督の
「しくじり話」や「裏話」をひっくるめて
(皇帝を監督と重ねてみると
なんとなく「うんうん、ですよね〜。」
と一人納得できたりと)
大変楽しむことができました。

そういう意味では
私は運よく試写会に当選して見ていますが、
往復はがき第程度で見させていただき
大変申し訳なく思っております。


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私もこれしょっちゅしてしまうので今後、肝に銘じます。


本筋とあまり関係ない
アバンタイトルとラストシーンから
もしかすると、ライデンは生き延びていると云う可能性も…。



ちなみにこれは映画通である私の友人のお言葉です。
…え?そうなの?


*2
人気作の続編やアメコミ原作、リブート流行りで
実話をもとにした伝記映画がもてはやされている
今のハリウッドで
「base on true story」とは云え
中世を舞台にしたファンタジー映画を
よく撮らせてくれたと思います。
見た人も「忠臣蔵」と判って見ているようですし…。
そういう意味では16%も仕方ないように思えます。


【追記】
11月14日に公開された本作ですが、
地元のシネコンでは第2週目にして
日に5回の上映から日に1回の上映に格下げされました。
上映スケジュールを見て今年一番驚きました。
…え〜っ?!

【後日談】
BS朝日「ザ・インタビュー〜トップランナーの肖像〜」
によると、
・脚本はカナダの人。
・元の脚本は「忠臣蔵」そのもので役名も「忠臣蔵」のものでありそのため配役も日本人俳優を想定したものだった。
・部隊が中世になったアイデアの元は黒沢明監督の「乱」。
・世界で日本だけがこの映画を買い取らなかったため、仕方なく監督が自力で配給した。
ということが判りました。

配給が「KIRIYA PICTURES」と知ってはいましたが、
自分も含め日本と云う国が
あまりに閉鎖的というか懐が狭いというか
そんなんでいいのか?と、驚きを隠せません。

日本のアニメやラノベがハリウッドで映画化されるより
よほど凄いことなのに…。





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