2015/4/4

モンサンプルール パーフェクトウォーター  MOVIE

本日の映画は

「ぶどうのなみだ」と云う映画

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です。

ご存じな方はご存じと思いますが、本作は
「2012年1月に公開され、小規模の公開ながら
興行収入3.8億をあげる大ヒットを記録した
しあわせのパン」のスタッフが大泉洋を主演に迎えて
贈るオリジナル北海道企画第2弾(wikipedia)」映画
となります。

「しあわせのパン」と云えば、
北海道の月浦ある実在の元パン屋&今カフェを舞台とした
正真正銘のご当地映画。
それなのに肝心の「ご当地」が日本のどこにも
存在しないように見えてしまう
のはなんでなの?

それだけに本作も見る前から
間口の狭い映画とは思っていましたが、
ここまで「見る人」を択ぶ映画とは…
ある意味「しあわせのパン」を遥かに凌いでいます。

ともあれ、見終わった後
頭の中で「映画好きの知り合い」を集結したうえで
いったい誰にこの映画はおススメできるか
篩にかけてきたところ、
どうやら全滅という結果となってしまいました。

いえいえだからと云って駄作ではありません。
むしろ好きな人にとっては
たまらなく好きになるタイプの映画だとは
思うのですが、こればっかりはねえ…。




まずはいちおうのあらすじを。


あるところに2人の兄弟がいました。

兄の名前はアオ、
一回り年の離れた弟の名前はロク。

8年前に亡くなった父親の畑を継いで
アオはワイン用の葡萄を
ロクは小麦を作って暮らしていました。

広い土地にぽつんと立った一軒家に
2人っきりの生活。

でも、オールドイングリッシュ・シープドッグの
バベットもいるので淋しいことはありません。

ある日のこと2人がいつものように畑で働いていると
白いキャンピングカーを引いた青い車が
彼らの畑をめざしてとことこ走ってくるではないですか。

キャンピングカーはアオの畑の近くに乗り上げると
中から赤いドレスと着た女の人が降りてきました。

女の人は2本のロッドを使って
しばらく辺りをダウンジングしたかと思うと、
おもむろにシャベルを取り上げ
畑の横の地面を掘り起こし始めました。

驚いたアオは女の人に駆け寄ってやめるよう注意しましたが、
「ここじゃなくてはダメなの」
と、聞き入れてはもらえません。

そこでアオは急いで家に戻ると、電話をかけて
警官のアサヒさんに来てもらうことにしました。

ところが、やってきたアサヒさんは
女の人と話し込んでいるうちに夕食に誘われ、
ワインボトルを開けた頃には
すっかり仲良しになっていました。

結局、酔ったアサヒさんが聞きだしてきたのは
女の人の名前が「エリカ」ということと
貯金をはたいてずっと車で旅をしていることだけ。

しょうがないおまわりさんですね。

他人は当てにならないと判ったアオは
その夜、番犬であるバベットを連れて
エリカさんにこの土地から出ていくように迫りました。

ところが、肝心のバベットがエリカさんになついてしまい
彼女から離れようとしません。

諦めてバベットをエリカさんに預けて
すごすご家に帰るアオ。

エリカさんのことでイライラしているのは
どうやらアオひとりだけのようで
翌日にはロクや
アサヒさんが連れてきた郵便屋の月折さんも
エリカさんと楽しく食事をする仲になっていました。

アオだけが仲間外れです。

もともと弟のロクと比べアオは近所づきあいが苦手でした。

というのもアオは音楽家になるという夢のため
ふるさとと家族を捨てたことがあったからです。

アオがこの地に戻ったのは父親が亡くなって
随分と経ってからのことでした。
そのことが弟のロクや近所の住民との間に
今もわだかまりを残しています。

秋はどんどん深まり
エリカさんが掘っている穴は
日増しに大きくなっていきます。

穴が大きくなるに連れて
アオもエリカさんといろいろなことを話すように
なりました。

例えば、アオの畑から獲れた葡萄で作ったワインは
いつも土の味がして
アオが思い描くワインはなかなかできないといった
これまで人に話したことのないような胸の内まで
エリカさんに打ち明けるアオ。

一方、エリカさんがいろいろな場所で穴を掘るのは
アンモナイトの化石を見つけるためでした。
アンモナイトはエリカさんが子供の頃家を出て行った母親が
彼女にプレゼントした唯一の贈り物だったのです。

でも、エリカさんは
「荒れ地」という意味をもつエリカという名前をつけた
母親のことはずっと許せないでいました。

エリカさんが葡萄の収穫を手伝うようになった頃
アサヒさんと月折さんが
何でも手作りしてしまう才能を持つリリさんを連れて
兄弟の畑に収穫祭のお祝いにやって来ました。

翌朝、リリさんと急ごしらえで作った
おそろいの衣装に身を包んだ
ロク、エリカさん、アサヒさん、月折さん、リリさんの5名は
それぞれの楽器を手にアオの葡萄畑で演奏会を開きます。

ところが、いきなりはげしく怒り出すアオ。
よろこんでもらおうと思ったのにどうして?

その晩アオをキャッチボールに誘ったロクは
兄の不在中高熱で倒れたロクのため
アサヒさんが手にいっぱいの氷を持ってきたこと、
リリさんが木琴を作り方を教えてくれたこと、
月折さんが木琴を作る木を切ってくれたこと
をぽつぽつ語ります。

ロクにとって大切な人たちに
兄のアオが怒鳴り散らしたことで
ロクは深く傷ついていたのです。

でも、ロクの気持ちはアオには伝わりませんでした。

翌日、リリさんが長年片思い中のイケメンが経営している
バーバーミウラに連れてこられたエリカさんは
お店の壁に指揮者姿のアオの写真が載った
新聞記事が飾ってあるのを見つけます。

かつてアオは都会の交響楽団で指揮者として成功を収め
そのことは村の人々にとっても自慢の種でした。

ところが、ある日突発性の難聴になってしまい
音楽の道を諦めたアオは5年前ふるさとに帰ってきました。

ふるさとの人々はいきなり帰ってきて
亡くなった父親の小麦畑の一部を潰し
葡萄畑を始めたアオよりも
ひとりぼっちで小麦畑を守りながら
兄の帰りを待っていたロクに対して同情的でした。

でも、ワインづくりに精を出すアオが
「いちど葡萄として死んでワインとして生まれかわる瞬間」
が好きなことを本人から聞いていた
エリカさんはアオの気持ちが少しだけ判りました。

誰しも他人には簡単に云えない悩みや辛い過去があるのです。

エリカさんがこの地を訪れてはじめて雨が降った日
エリカさんが掘った穴のことを心配し
たくさんの土嚢を持って駆けつけてきてくれたのはアオでした。

「良い天気が一転して雨になる時には最悪なことが訪れる。」

エリカさんにもアオにもそういう思い出すだけでつらい雨の日が
過去にあったのです。

アオが作った新しいワインの樽を開ける日がやってきました。

できたワインはとても土臭く出荷できるような
代物ではありませんでした。

落ち込むアオの姿を見てエリカさんはある決心をします。

その日からエリカさんのキャンピングカーは
姿を消してしまいました。



というまるで童話のようなストーリー。

そこにあるのは監督が思い描く完璧な世界観です。

作品に使用されるロケ地、畑、建築物、衣装、小道具、
食品、音楽に到るまで
監督が「好き好き大好き愛してる」
と思っているものだけで埋め尽くされたかのよう。

その徹底ぶりたるや
「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネ監督や
「かもめ食堂」の荻上直子監督の
比ではありません。

まずはロケ地の北海道空知地方での素朴で
居心地の良い生活。

ナチュラル&カントリーな素朴なファッションに

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アオとロクの衣装。素材とかにも相当のこだわりが…。

建物は外装から内装に至るまで

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兄弟の家。スウェーデンハウスか?!

手入れが行き届いています。

1軒しかない床屋さんだってこんなに可愛いのです。

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気持ちの好い屋外でイケメンの店主が髪を切ってくれます。

出てくる車もそのへんにごろごろしている
見ただけでメーカー名の判るような車ではありません。

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こんなパトカーは始めて見ました。空知のパトカーってみんなこうなの?

角が丸くて小さくて絵本に描かれたような車しか
出てきません。

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おまわりさんと郵便屋さんの制服も一般に支給されている者と随分違います。

食事は食事で
エリカさんが、屋外でちゃちゃっと用意する料理は
どれも美味しそう。

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小ぶりのトウモロコシは皮つきのまま火であぶって食べます。

こんなカフェ飯もびっくりな食事を
家の中でせせこましく食べるのではなくお日様の下で
みんなで仲良く食べるのです。

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もちろんワインを飲みながらね。

どうよ、これって?

音楽、ロケハン、スタイリスト、フードコーディネーター
美術、装飾と云ったスタッフが
この映画と三島有紀子監督のために用意したものは
小道具の1つ1つに到るまでいっさい手抜きはありません。

パーフェクトです。

近年、ここまでスタッフ一丸となって
微に入り細を穿ち作り上げた映画が
他にありましょうか!と感嘆する程です。

ちょっとこじゃれた「カルピスこども劇場(*)」の世界です。

日本の農家の話なのに「レノアおひさまの香り」しかしません。
働いた後の汗の匂いすらしないのです。

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たまに兎が荒らすくらいで害虫や病気などには無縁に見える葡萄畑。

ただし、そんなジブリの作画による世界が
似あっていそうな作品を
日本を舞台にそれも実写で撮ったため、
その違和感たるや半端ありません。

それだけダメな人は本当にダメだと思いますし、
年間3ケタは映画を鑑賞していて
映画通もしくは映画ファンを自負している人ほど
(特に成人男性の方々は)
生理的に受け付けるのが難しい映画ではないかと思います。

なにしろ、目に映るものどれをとっても
「どこか別の国(たぶんヨーロッパの方の片田舎)」
のものなのに舞台は試される大地北海道。
配役は

大泉洋

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アオ

染谷将太

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ロク

安藤裕子

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エリカさん

田口トモロヲ
前野朋哉
りりィ

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アサヒさん、エリさん、月折さん

きたろう

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バーバーミウラ

と、とびぬけた美男美女は起用していません。

そんな無粋なことをしたら
この映画ならではのほっこりとした空気を
ぶち壊しちゃいますからね。

見るからにどこにでもいるような日本人の顔。
抑えるところはちゃんと抑えてあります。

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以上の人々がこんな牧歌的な衣装で楽器を奏でます。

こんな方々が、真面目に地道に
「カルピスこども劇場」の世界を演じているのですから
人によってはついていけなくなるのも無理ありません。

これだけ衣食住に関してこだわり抜いている割には
生活臭がどこにもないのですから。

近くに買い出しできるようなお店もなく
室内のどこにもテレビも携帯電話もありません。
東芝のCMであれだけ快適生活を送っている
大泉洋さんが主演なのに生活家電、電化製品が
殆ど出てきません。

あるのは売り物にならないワインをつくるための
小さな葡萄畑とおなじくらい小さな小麦畑だけで
この兄弟がどこから生活できるだけの収入を
得ているのかも不明です。

それは、兄弟以外の空知の住民にも云えること。

今ここにどこでもドアがあれば
映画もそこそこに空知に行きます。
本当にこの映画の通りの世界が広がっているか
自分の目で確かめるために空知に行きます。

これがまるまる同じストーリーで
北欧や南欧を舞台にした映画だったら
また評価が異なってくるのでしょうが、
日本人が日本の映画としてみると
流石に辛いものがあります。

しかし、いったんこの世界に入り込んでしまえば
もうこの映画の虜になる人がいても何の不思議ではありません。

それはこれら上映館での扱いを見れば判ると思います。

「ぶどうのなみだ」劇場ディスプレイ

このような映画が日本で撮影され
外国の映画祭への出品もはたし
全国公開され受け入れられることを
「だから日本映画ダメなんだ」と
苦々しく思う方もなかにはおられるとは思いますが、
私はとても喜ばしいことだと思います。

長い(映画ではとても短い)冬が終わり
春の訪れとともに葡萄の枝の先から
今年最初の樹液がひとしずくこぼれ落ちます。
これを「ぶどうのなみだ」と云うのだそうです。

次の年アオにとって渾身のワインが出来上がります。
これまで頑として兄が作ったワインを飲もうとしなかったロクが
このワインを始めて飲み、こう告げます。

「ひどい味だ。」

そんな弟の酷評にアオは呆れて

「お前にワインの味なんか判らないだろう。」

と云いますが、
ロクは

「凄い勝手な味がする。それにとても固い。
…だけど…このワインはバカみたいな情熱と
抜けるような空の味がする。
……僕は…このワインが好きだ。」

と微笑むのです。

同じことがこの映画にも云えます。

この映画を見た人のなかにも
そういう感想を持つ人もいらっしゃるのではないでしょうか?

こういう映画を作る人たちがいて
それを受け入れる土壌がある
それは決して悪いことではないと思います。

少なくともこの映画に関わった方々にとっては
大切で幸せな作品となっていることでしょう。
 
 



















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とにかく食事が美味そうなこと!






(*)
フジテレビ系日曜午後7時30分放送の子供向けアニメのうち
1975年の「フランダースの犬」
1976年の「母をたずねて三千里」
1977年の「あらいぐまラスカル」
がカルピスこども劇場にあたります。


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