2015/3/26

「テロには屈しない」がもたらしたもの  MOVIE

本日の映画は

「テロ,ライブ」

クリックすると元のサイズで表示します

と云う韓国映画です。

監督のキム・ビョンウ監督(当時33歳)にとって
本作がデビュー作となるため
多少の粗さは見えるもののもの凄い才能を感じさせます。

主演は、「哀しき獣」「チェイサー」「ベルリン・ファイル」
と云った作品で日本でも知られているハ・ジョンウ。

劇中の壁時計やデジタル時計を見る限り
ジョニー・デップ主演「ニック・オブ・タイム」同様
映画の中の時間と実際の時間がほぼ同じく流れているようです。

物語は
午前9時30分少し前に始まり
同じ日の午前11時過ぎに終わります。





テレビラジオ局SNCの
ユン・ヨンファ(ハ・ジョンウ)が
パーソナリティと勤めるラジオ番組
「ユン・ヨンファのデイリー・トピック」内で
富裕層への税制優遇措置に対する
リスナーの意見を募集したところ
ソウル在住の建設作業員で
パク・ノギュと名乗る男性リスナーから電話がかかってきます。

ところが、そのリスナーが訴えるのは
昨今の電気代の高さに対する文句ばかり。

番組の主旨を無視したノギュの話をそこそこに切り上げ
次のリスナーの電話に対応するヨンファ。

ところが、どういうわけか
ノギュの電話は繋がったまま切れることなく
話に割り込んでくるや

クリックすると元のサイズで表示します
ラジオ番組だから気合の入っていない格好にグラサンと云う感じの悪い主人公。

いきなり爆破予告をします。
それもソウル市内の漢江にかかる麻浦大橋を
爆破すると云うのです。

麻浦大橋は長さ1,400m、幅25m(6車線)もあり
「自殺の名所」としても有名で
ラジオ局の窓から見下ろせるところにあります。

しかし、ただのいたずら電話と判断し
却って相手を煽るような発言をしてしまうヨンファ。

と、その直後スタジオ内にまで響く地響きが起こり
慌てて窓の外を見たヨンファの眼に映ったのは
崩れ落ちる麻浦大橋でした。

騒然となるスタジオ内を後にしたヨンファは
報道局長のチャ・デウン(イ・ギョンヨン)に電話を入れ
ラジオのスタジオにテレビカメラを入れること
そしてこのスクープを自分に独占放送させる約束を
とりつけます。

不祥事(詳しいことは最後まで判りません)で
テレビニュースのメインキャスターの座を追われ
妻にも去られたユンファはこの事件を
返り咲きのための千載一遇のチャンスと考えたのです。

速攻でテレビ用の身支度を整えたヨンファは
今度はノギュとの交渉にかかります。

クリックすると元のサイズで表示します
有事の際も即対応するのが「できる男」の証です。

ノギュと名乗るテロリストの要求は
まずは、SNCの独占報道に対する報酬として
21億7924万5千ウォン(約2億4千万円)の金を
指定の口座に振り込むことでした。

他局も動き出してきたため要求を飲まざるおえないSNC。

送金を確認したノギュは、
約30年前の麻浦大橋補修工事中
過労が元で事故死した現場労働者3名と遺族に対し
大統領自らが謝罪することを要求します。
 
クリックすると元のサイズで表示します
完成したテレビ用の衣裳はこちらになります。ラジオ凄く舐められています。

顔色が変わるヨンファと報道局長。

21億7924万千ウォンは支払えても
できないことがあるのです。

よりによって大統領の謝罪とは。

事態を重く見た報道局長は、
アナウンサーをヨンファから別の女性キャスターに変更しますが、
そのことでノギュの怒りを買い、
女性キャスターが使用していたマイクが爆破します。

スタジオに戻ったヨンファ。
ところが、ヨンファが耳に嵌めたワイヤレスマイクにも
爆弾が埋め込まれていたため迂闊に動くことができす
スタジオに拘束されることになってしまいます。

カメラの前から離れることができなくなったヨンファは
ノギュとの交渉を続けることになります。

とりあえず、大統領がこのスタジオに訪れさえすれば
これ以上の爆破は起こらず、
ノギュ自身大人しく捕まると云っているのです。

全ては大統領の出方ひとつにかかっています。

やがて、スタジオの外には対テロセンターチーム長である
パク・チョンミン(チョン・ヘジン)が現れ
視聴率のことしか頭にない報道局長を退けると
ヨンファに直接指示を出します。

しかし、彼女も全く当てにならず
彼女が現在手配していると云っている割には
大統領は登場する気配すら見せません。

しかも、ようやく現れた大統領代理の
チュ・ジンチョル警察庁長(キム・ホンパ )は
謝罪するどころかノギュの正体を暴露したうえで
挑発するだけ挑発して結果爆死。

クリックすると元のサイズで表示します
あまりの傍若無人ぶりにヨンファも「誰?このアホ連れてきたの?」と云う表情。

爆破によって寸断された麻浦大橋の上には
取材に当たっていたヨンファの元妻で
報道局記者のイ・ジス(キム・ソジン)も
残されているためヨンファは気が気ではありません。

大統領が沈黙を保っている間にも
命の危機に瀕している人が
幼い子供や女性も含め16名もいるのです。

やがて、最初の麻浦大橋の爆破によって
死傷者が1人も出ていなかった事に気が付いたヨンファは、
ノギュに無差別殺人の意志はなく
大統領さえすぐにでも謝罪すればこれ以上死傷者が出ることはなく
被害が最小限に抑えられると確信します。

ただし、現時点でそのことに気が付いているのはヨンファだけ。

報道局長の頭の中は視聴率のこと
対テロセンターチームはテロリストを射殺すること
政府に至ってはどのようにこの事件をうやむやにするか
それしか考えていません。

ヨンファ以外の関係者の頭には
麻浦大橋の人々の命のことなどこれっぽっちもないのです。

そればかりかテロ事件に対する政府(大統領)の対応の拙さを
国民の眼から逸らすため
他局にヨンファが起こした不正事件(左遷の理由とは別)を
暴露する報道局長と政府。

何故、報道局長と政府がヨンファの不正を知っているかと云うと
彼らも一枚咬んでいるからのですが、
この機に罪を全部ヨンファ一人になすりつけるつもりです。

そのような状況下ヨンファの度重なる説得で
ようやくノギュが麻浦大橋にとり残された
子供と女性の救出を許可しますが、時すでに遅し。
橋は人々を載せたまま脆くも崩れ落ちてしまいます。

それでも頑として謝罪はしない方針の大統領。
それどころかスタジオに姿さえ見せません。

完全に時間稼ぎです。

さらに、ヨンファの推理からノギュの居場所を
隣接するJRタワーと特定した対テロセンターチームが
タワーの一室に踏み込んだ途端、タワーが爆破。
そのまま隣のSNC本社ビルに衝突し

クリックすると元のサイズで表示します
違います。ヨンファが残っています。番組スタッフ、鬼です。

落ちてきた蛍光灯に側頭部を強打され気を失ったヨンファが
目覚めた時にはスタジオは空っぽになっていました。

スタッフ全員彼を見捨てて避難してしまったのです。
いくらなんでも薄情すぎるぞ、番組スタッフ。

その一方ですっかり政府の策略に嵌った他局ニュースでは
不正事件の犯人としてヨンファを断罪しまくっています。

保身のためにヨンファが関わった収賄の情報をリークするSNC、
事件解決のためにヨンファを使い捨てにする対テロセンター、
視聴率巻き返しのため政府の意向に沿って
ヨンファの不正を大々的に報道する他局のアンカー、
ヨンファを目眩ましに使いスキャンダル逃れを図る政府。

同じ利用するにしてもヨンファと真剣に向かい合ってくる
テロリストであるノギュの方がまだましです。

漢江に落ちたイ・ジスの生死も判らず
何もかもが敵に回った事を悟ったヨンファは
自分の手でこの事件の落とし前をつけることを決意し
テレビカメラの電源を入れるとカメラの前に座ります。

そして、大いなる犠牲を払った末
犯人射殺の報告を受けた韓国大統領の一言がこれ。

クリックすると元のサイズで表示します
打つ手なく人質を見殺しにすることが「テロに屈しない」ということです。




…あ、違いました。
なんか云っている内容が酷似していたので
故意に間違えました。

正しいのはこちら↓です。


クリックすると元のサイズで表示します
大統領たる者、犠牲者の映像を前にしてもこんなことが云えちゃうのです。


たった97分のうちに
麻浦大橋に残された16名(+1名)が全員水死し
ソウル内の高層ビルが2棟が倒壊し
そのうえ、ヨンファも「テロリスト」として射殺するよう
(最初の命令は「逮捕」でしたが、いつの間にか
「テロリスト」して「射殺」に変更されました)
命令を下す大統領率いる韓国政府。

当に死人に口なし。
臭いものには蓋をしろ。

ご存知のように「テロリスト」と判定した時点で
容疑者を問答無用で射殺して良いのが、
今や世界の常識なのです。(*1)

アメリカを始め、テロリストに関しては
「ミランダ警告?え?なにそれ?」
ということですので、
最悪韓国政府にとって都合の悪い人物は
全員「テロリスト」として始末しちゃいなYO!
なのです。

射殺してしまっては、犯人の動機だけでなく
他にもいるかもしれないテロ仲間の存在や
まだあるかもしれない爆弾設置場所も
判らないというのに
YOU射殺しちゃなYO!
と、この映画の韓国政府並びに警察は仰っているのです。

怖いですねえ、恐ろしいですねえ。

それはもちろん警察がパク・ノギュの顔も経歴も
掴んでいるからなのですが、
彼が30年前に亡くなっていることまでは掴んでいなかった
(んな、アホな!!)
というのがいつもの韓国警察(*2)です。

電話の声が変声機を使っていないため
声の張りから少なくとも「若い男」と判るのですが、
そういうことにまで気が回らないようです。

韓国国民もこんな国、こんな政府、こんな警察、
こんな報道機関うんざりですよね。

と、これがこの映画公開時2013年でしたら
他山の石として大きな顔をして云えたのですが、
2015年初頭、我が身に体験した日本人にとっては
「テロリスト事件あるある」となってしまいました。

テロの恐怖にさらされた時
人命より国の威信が大事なのは
国民も同じです。

国民も報道機関も国を挙げて
世界に対しそう宣言してしまいました。
「テロには屈しません。」と。

何だなんだか判らないうちに
テロリストに拉致された人質2人が処刑され
それでなんとなく事件が解決したような気になり
日本の政府で一番偉い人が
「テロには屈しません!」
と、云うから
「屈しないってこういうことを云うのか。」
と、そういうものだとなんとなく受け入れてしまい
のんべんたらりんと生きている私には
この映画で描かれている報道を見ているであろう
(視聴率は確か78%でした)
韓国の一般視聴者に語る言葉もありません。

実際に日本でも
議員や警察官の不祥事も後を絶ちませんしね。
他人のことは良く見えるけれども
自分のことは案外見えていないものです。

まあ、この後この事件も政府の思惑通りに捏造され
「ヨンファ」の責任として報道され
結局、闇に伏されることでしょう。

ほんと、映画も現実もやりきれませんね。
だからせめてエンターテイメントとしての映画と云う形で
抵抗するのでしょう。
 

(*1)
今にして思えば「あさま山荘事件」とはじめ
「オウム真理教事件」と云ったテロ事件で
いずれも容疑者を生かしたまま
逮捕し裁判にこぎつけた日本警察は凄い!……のかも。

(*2)
警察や公権力をかなり批判的に扱うのは韓国映画の特徴です。

2



コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ