2015/2/26

新・時間旅行物語   MOVIE

正式名称は日本放送協会。
英称はJapan Broadcasting Corporation
なのに発音の歯切れが良く、
文字が四角く書きやすいと云う理由から
略称「NHK」と呼ばれる我が国の公共放送は
ご存知のように受信契約に基づく受信料を
広く国民の皆様から徴収することによって運営しています。

そのNHKが
昨今の民放テレビ局による映画製作に触発されてか、
ここ数年、年に1〜2本の割合で
人気番組の映画化に手を出しているのは周知のとおりです。

主だったものでは
2009年の「ハゲタカ」
2010年の「セカンドバージン」
2010年の「その街のこども 劇場版」
2011年の「サラリーマンNEO 劇場版(笑)」
2012年の「3D大作映画『劇場版テンペスト』」
2012年の「外事警察 その男に騙されるな」
等がそれにあたります。

厳選した人気番組の映画化とは云え
観客はテレビで無料感覚で見ていた
ドラマやバラエティを
今度は料金を支払って見に行くことになるのですから
作り手の方もさぞかし自信を持って
お届けしていることと思います。

特にNHKが自社作品を映画化する場合、
他の民放製作映画とは異なり
短絡的に考えると
「わしらの受信料で製作した映画を劇場で公開して
さらにチケット代まで搾取しよう」
としているように思えてくるのですから
よほど自信がなければ映画など作らないはず。

そのNHKが2013年に全国120スクリーンで
公開したのが、本日の映画

「劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日」

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です。

劇場版ではない通常の「タイムスクープハンター」は、
手持ちカメラを使った
ドキュメンタリー・ドラマ風歴史教養番組として
2009年から放送が開始されました。

番組は当初水曜日の深夜に放送され
以降、放送曜日を月曜、木曜、火曜と転々とし
土曜深夜枠に落ち着き人気も安定したところで
2014年9月に最終回(全80回)を迎え全シリーズ終了。

と、云っても30分一話完結の教養番組ですので
視聴時間もそれほど取らず
何シーズン何話目から見ても楽しめますし
いつでも終了でき、いつでも復活できるような
視聴者に優しい作りとなっています。

故に普段より少し長めのストーリーを作って
映画化することも充分考えられる番組と云えましょう。

しかし、
「なんでよりによってこれを映画化するかな?NHKさん。」
と云うのが、地元シネコンのロビーで
最初にこの映画のフライヤーを見つけた時の
正直な私の気持ちでした。
(その時点でテレビ番組の方は1,2回しか見ていません)

日テレやテレビ東京が一時期
深夜枠の30分ドラマを次々劇場映画化していったのとは
訳が違います。

しかも今回の映画化に当たって
NHKが無謀な賭けに出ているとしか思えないのが
キャストとロケ地。

従来のキャスト(要潤、杏)に加えゲストが
夏帆、竹山隆範、宇津井健、上島竜兵、時任三郎、小島聖、
嶋田久作と云った手堅いと云えば云えなくもないけど
今一つ華がない俳優陣。

ロケ地は
安土城に見立てた彦根城(とその周辺建造物、山野)
とこれまたお金がかかっていないように見えます。

普通、テレビ番組の映画化と云うと
「豪華キャスト」
または
「豪華ロケ地(要は海外ロケ)」
などと云う手を使い
格段にスケールアップを図ることで
映画としての箔をつけるものですが
どうよ、これ?

「受信料以外のお金を払ってまでして映画館に見に行こう!」
なんて豪気な気持ちになれるでしょうか?

しかし、この一見テレビ局製作映画にしては地味な
「キャスト」と「ロケ地」投入も
この作品のコンセプトからすると相当な「挑戦」だったのです。





「私の名前は沢嶋雄一(要潤)。タイムスクープ社から派遣されたジャーナリストである。あらゆる時代にタイムワープしながら名もなき人々を記録していくタイムスクープハンターである。」

という主人公のナレーションで始まる
NHK「タイムスクープハンター」は
監督・脚本を務める中尾浩之氏のこだわりから
全編に当たり

・史料にもとづく正確な時代考証を重視する
・時代劇用のかつらは使わず実際に剃髪する
・スタジオセット撮影を行わない
・照明機材を使わない(夜間シーンは暗視カメラ使用)
・台詞は当時の言葉を使い現代語訳したテロップを流す
・お歯黒や白塗り化粧などの習俗についてはできる限り再現する
・細かい台本は役者に渡さない
・リハーサルはしない

と云った独特な演出方法が取られています。

こだわりがある分、歴史バラエティ番組にしては
特別派手な事件も起こらず、
誰もが知っているような歴史上の人物も出てこず
さらには再現ドラマに使われる俳優が見たこともない俳優ばかりと
絵的に非常に地味な番組となりました。

NHKにしてみれば
時代考証を学ぶために観る番組ですので
「画面が汚」
くても
神戸市長も納得できるよう撮っているのでしょう。

その画面作りは今回の映画化に際しても変わることはありません。

本作で主人公沢嶋雄一が取材するのは

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本能寺の変は1582年6月21日(天正10年6月2日)の出来事。

本能寺の変直後、禁裏(京都御所)で難民救済活動を行う
織田家家臣、矢島権之助(時任三郎)という侍です。

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彼が織田家再興のため立ち上がると云う映画ではありません。

沢嶋が勤めるタイムスクープ社は
タイムワープ技術を駆使することで
あらゆる時代にジャーナリストを派遣し
その時代の人々の営みを映像で記録アーカイブする
計画を推し進めている機関であり、
主な部署としては
「歴史上の大事件や有名人物の調査」を担当する「第一調査部」
「名もなき人々の営みの調査」を担当する「第二調査部」
の2つに分かれています。

沢嶋は第二調査部に所属しているため
歴史上名前が残っていない矢島権之助と交渉の末、
いつものように地味な密着取材に勤しんでいたのです。

ところが、そんな矢島権之助の元に
本能寺の変で足に深い傷を負った
勝田勘兵衛(吉家章人)なる織田家家臣が現れ、
本能寺に滞在していた商人島井宗叱(上島竜兵)を
自分の代わりに博多まで送り届けくれるよう頼み込みます。

しぶしぶ頼みを聞くことになった矢島権之助の取材を
続けるため博多まで同行することになる沢嶋。

ところが、島井宗叱が咄嗟の機転で
明智光秀の軍勢に攻め込まれた本能寺から
天下三肩衝と呼ばれた茶器「楢柴肩衝」を持ち出したため、
道中、3人はタイムリープを悪用し
歴史上の名品を盗んでは売りさばく
犯罪者「オルタナスナッチャー」に襲われ、
沢嶋のミスから「楢柴」を川に流し紛失してしまいます。

しかし、歴史の上では「楢柴」はその後無事に博多に到着し
紆余曲折の末、江戸時代に消失したことになっており
この時点で「楢柴」がなければ、以降の歴史が
大きく変わってしまいます。

そこで沢嶋はいったん未来に戻り
社命で別の時代(1985年)に出現した
「楢柴」と思われる茶器を手に入れることにします。

果たして沢嶋は代わりの「楢柴」を入手し
歴史を正しく導くことができるのでしょうか?
そして、襲ってきた「オルタナスナッチャー」の正体は?


というのが今回の映画の内容となっています。

元々テレビ番組の方も数えるほどしか見えていないので
そんな薄っぺらい視聴者の私が
どうこう云える立場ではないのですが、



…この映画、興行的にはどうだったのでしょうか?

というのも
中尾浩之監督がテレビ版で通してきた
この作品特有のこだわりが
映画化と云う大きなプロジェクトの波に呑みこまれ
どうも座礁したように見えるのです。

元々のテレビでの「タイムスクープハンター」では
これまで民放他の歴史情報番組
(「世紀のワイドショー!ザ・今夜はヒストリー」とか?)
とは異なり、ドキュメンタリー性を強く打ち出すため
主演の要潤と彼をサポートする古橋ミナミ役の杏以外は
全く無名の役者を起用していたのですが、
今回の映画化に当たって
それなりに知名度のある俳優・女優を起用しております。

それに加えて、沢嶋が
「博多の三傑」と呼ばれた戦国時代の茶人島井宗室と
行動を共にすることになったため
第二調査部が調査すべき名もなき人々の生活から離れ
「楢柴」の移送を成功することが、
今回の最重要任務となってしまいました。

その結果、予告編でもあるように今回の沢嶋の調査目的が

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しかも真相部分は完全にフィクション。

かのようになってしまい
そのため映画の後半はこれまで番組が目指してきた
史料に基づいてきたモキュメンタリーではなく
視聴者にとって顔なじみの俳優がそれぞれの役を演じる
ただのフィクションとなっているのです。

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安土城炎上の現場に最初から最後までかかわってしまう沢嶋。

確かに、深夜の30分に流しておくテレビ版とは違い
映画としてのメリット
(ここではキャスト、取り扱う題材、著名な歴史上の人物)
が欲しいのは判ります。

仮に中尾浩之監督のこだわりを突き通した
「タイムスクープハンター」の102分版を撮影し
劇場で上映したところで
番組ファンはともかく新規や一般の観客の動員は見込めません。

だからと云ってこの番組を楽しみに見ていた視聴者は
スクリーンで
竹山隆範や上島竜兵を見たかったわけじゃない
と思うのですが、そこのところどうでしょう?
(ちなみに本作は宇津井健さんの最後の映画出演作)

そんなアンビバレンツな「劇場版 タイムスクープハンター」。

どうしても
「どうしてこの番組を劇場映画化なんかにしちゃったの?」
と云う考えから逃れなくなってしまうのです。
 
同じNHKの深夜30分バラエティ番組の映画化で
サラリーマンNEO 劇場版(笑)」が
ありますが、
あれはまだ鑑賞前も鑑賞後も心配することが少ない映画でした。

それに比べ
本作は見る前は
「これ、劇場映画にしちゃって大丈夫?観客入るの?
番組のファンとは云えわざわざお金払ってまでこの映画見る?」
と、心配となり
見た後は後で
「これ、劇場映画にしちゃっったけど大丈夫?
DVD借りる人いるの?
番組のファンとは云えわざわざお金払ってまでこの映画見る?」
と同じ心配をしてしまう私って何?!

ぶっちゃけると、鑑賞前も後も
「この映画採算見込めるの?!」
と云いたいわけです。

これが民放製作なら
「スポンサーさんも良くOK出したなあ。」
で済むのですが、
うっかりすると
受信料だからできることがたくさんあります。
という言葉が頭を擡げてくるのです。
これはダメでしょう、籾井会長。

一応建前として、特典映像の中で
「タイムスクープ社の活動を皆様に知っていただくため
映画と呼ばれるジャンルで広報活動を進めることにしました」
と沢嶋さんが仰っています。

ですので、
これからこの映画を見る方は
「NHK総合の番宣」として
または
DVD
「タイムスクープハンター」
2枚組5040円(税込) 
「タイムスクープハンターシーズン2」
3枚組 7560円(税込)
「タイムスクープハンターシーズン3」
4枚組 10,080円(税込)
「タイムスクープハンターシーズン4」
3枚組 7,560円(税込)
の宣伝として
割り切って見るのがいちばん良いのかしら?

ですよね、籾井会長。


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