2014/7/20

みんな貧乏が みんな貧乏が悪いんや  MOVIE

本日の映画は

mixiのコメントに
「2014年上半期映画ベスト1」として
オススメいただき何の前情報も入れず借りてきた

「メトロマニラ 世界で最も危険な街」

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と云う映画です。

舞台がフィリピン、マニラ
DVDパッケージの画像
「世界で最も危険な街」と云う副題
から推察するに
地元ギャングと警察官の攻防を描いた
「ザ・レイド」のフィリピン版
と云ったところでしょうか?

と、あらかたの予想をつけたところで
DVDを再生してみると

目の前に拡がるのはのどかな田園風景…?

それも北陸地方にはなじみ深い棚田です。

ん?
棚田。フィリピン。
このコンボ、以前テレビの旅番組で見たことがあるような…?

ということで、記憶を辿る前にgoogle検索したところ
世界遺産にもなっている
「コルディリェーラ(バナウェ)の棚田群」が
舞台になっていることが判りました。

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耕作面積が狭く機械を入れることができない棚田は生産量が低いのです。

そんな観光名所でありながら収穫が乏しいため
冬を越せないという現実に直面し
オスカー(ジェイク・マキャパガル)一家は
農業に見切りをつけ大都市マニラに居を移します。

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1センタボ=約0.023円。全収穫=10センタボ(*)。これで一冬越せと?

まあ、石川県輪島市の白米千枚田も
小泉純一郎・進次郎親子がいくら褒め称えようとも
普通に生産していては採算が見込めず
年間2万円でマイ田んぼを1枚持つことができる
オーナー制度を取ることでなんとか維持しているとのこと。

「コルディリェーラの棚田群」が世界遺産と云えども
棚田耕作で生活できなければ夜逃げするしかありません。

実際に1995年に世界遺産に指定されたものの
後継者不足で放棄され畑などに転作されるなど
棚田が減少したため、
2001年には危機遺産として登録したそうです。

本作の冒頭シーンは、フィリピンにおける
農村から都市への人口流出問題を踏まえているわけです。
(俄仕込みの知識ですので詳しいことは判りませんが)

ところが、オスカー一家は
マニラに到着早々全財産をだまし取られ
仕事も住むところもないまま、スラムに身を寄せることになります。

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何の伝手もなくいきなり大都会に出てきたオスカー一家。

長渕剛なら
「死にたいくらいに憧れた東京のバカヤローが
知らん顔して黙ったまま突っ立ってる」
と、がなり立てているところです。

しかし、オスカーは根っからの真面目人間ですので
粛々と仕事探しに精を出します。

ところが、マニラも空前の就職難。
大卒でさえ10人に3人しか就職できないようなご時世です。

まずは妻マイ(アルシア・ヴェガ)が
場末のバーでホステスとして働き始めます。

マイのお腹の中にが3人目の子供がいるため
職など択んでいられないのです。

オスカーの方も元兵士と云う経歴が功を奏して
危険度が高すぎるため成り手の少ない
現金輸送警備員の職に就くことができ
面接の際、それとなく的確な助言を与えてくれた上司
オング(ジョン・アルシラ)とコンビを組むことになります。

オングはオスカーに
仕事のやり方や身なりの整え方、生き延びる方法から
仕事仲間との酒の飲み方などを伝授するだけでなく

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最初に「死ぬなら最後まで戦え」と云う教訓をオスカーに叩き込むオング。

プライベートでも昼食を奢ったり、夕食に招待したり
はたまた不倫相手との密会場所に使っているアパートを
オスカー一家に提供してくれたりと
何かと面倒を見てくれるのですが、
ここマニラにおいては当然下心があってのこと。

仕事に慣れた頃、オスカーはオングから
警備会社を巻き込んだある犯罪計画に
加担するようほぼ強制的に誘われます。

あいたたたたたた。

この映画では再三にわたって
「マニラには親切な顔をして近づいてくる人はいても
本当に親切な人はいやしない!」
と、警告してくるのです。

世知辛いわ〜。
心荒むわ〜。

オングがしてきた親切の数々は
全てオスカーを自身の犯罪計画に巻き込むための布石でした。

自らを「刑事崩れ」と名乗るオングも
かつては正義感に燃える人物だったかもしれません。

目の前で同僚の警備員惨殺した強盗が
何故か手を付けず残していった鍵がかかっている輸送ケースを
まるまる一箱手に入れた時から性根が
変わってしまったのかもしれません。

みんな貧乏が みんな貧乏が悪いんや。

しかし、警備会社が保管しているケースの鍵さえあれば
誰にも知られることなく多額の現金が手に入るのです。

指を咥えて見ている選択はマニラにはありません。

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マニラでは猫も生き延びるのになりふり構ってはいられません。

金が人の心を変える以前に格差社会が人の心を変えるのです。

ところが、オングが立てたケースキー強奪計画は
初期の段階で頓挫し、オング自身が命を落としてしまいます。

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ところで、2回に渡って登場するこの強盗は何がしたかったの?

自社の警備員の死も警備員が犯しかけた犯罪も
事務的に淡々と処理する警備会社の就業規則で
相方であるオングの所持品を遺族に届けることになるオスカー。

しかし、悲しみにくれるはずのオングの妻から
出てきた言葉は夫が隠し持っているはずの輸送ケースの
行方だけでした。

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所詮は夫の命より金。同じ夫の身としては聞くに堪えない未亡人の言葉。

そのオングの妻の姿を見てオスカーはある決心をします。

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決意を固めるオスカー。オングの杜撰な計画を完璧に仕上げます。

ここまでくれば後はどのような結末に向かうのか
だいたい予想が付きます。

予想はついても
どこにでもいる幼い子供を抱えた若夫婦の話だけに
見終わった後の絶望感は半端ないです。

この映画も他の東南アジア映画同様
救いようのなさが半端ありません。

しかしながら
「地球の歩き方 フィリピン」では知りようのない
世界遺産の裏に隠された農家の実態を知るだけでも
この映画がはたしている役割は大きいです。

それ以上に
これだけ出来の良い映画に
これだけ出来の悪い副題とDVDパッケージと惹句を
用意した配給会社に対しての絶望感ときたら……。

この副題とパッケージが与えた損害は
計り知れないものがあります。

私もmixiで紹介されなかったら
DVDをまず手に取りませんし、
取ったところでそのまま棚に返していたはず。

確かに「地球の歩き方」サイトに記載されている
マニラは
「貧困、渾沌、危険。マニラに対して、これらのダーティなイメージを持つ人も多いかもしれない。確かに、国中から人が押し寄せたことで起きた貧困と退廃、経済発展によって増え続ける車の日常的な大渋滞や排気ガスによる汚染などを見れば、マニラの抱える苦悩が垣間見えるが、同時に、穏やかで堅実な生活を送る人々の暮らす町でもある。」
となっています。

だからと云って本作が汚名返上に頑張っているところに
配給会社からこんな一撃を喰らわされるとは…。

フィリピンにとっても
映画の作り手にとっても
配給会社にとっても
映画を愛する観客にとっても
ダイヤモンド社(「地球の歩き方」出版元)にとっても
この副題とパッケージはデメリットしかありません。

このように邦題とイメージビジュアルで
指の間からぽろぽろと零れ落ちている
秀作映画がどれほどあるのかと考えると怖くなります。



(*)
劇中、オスカーの上の娘が「天国」と勘違いする
ホテル「ザ・ペニンシュラ マニラ」の
宿泊料金は8,000フィリピンペソ。
1フィリピンペソは100センタボに当たります。




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