2013/9/5

「やられたら倍返しやな。」「いいえ、10倍返しです!」  MOVIE

いつからでしょう。
TOHOシネマにおいて劇場ロビー設置の
応募用紙による試写会が行われるようになったのは。

地元テレビ局のメール会員になる必要もなく
郵便局に往復葉書を買いに行く必要もなく
ただ備付の応募用紙に必要事項を書き込むだけで
数日後には招待状が手許に届くという画期的なシステム。

しかも招待されるのは「2名様まで」。

そのほうが劇場側のコスト削減になうとは云え
当選者から見ればなかなかの太っ腹な試写会です。

もちろん、誰にでも当たるというわけではありません。
いつでも当たるというわけではありません。
昨年一年は何度涙を呑んだことか判りません。

ところが、今年に入ってから
どういうわけか
「藁の楯」(2枚)
「風立ちぬ」
が続けて当選しました。

ありがとうございます、TOHOシネマズ様。

そして、本日の映画もそのような経過を経て
試写会で見ることになった

「許されざる者」

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です。

公開前と云うことで
今回はいつもとは趣向を変えて
作文形式で簡単にストーリーを紹介したいと思います。

と、云いましてもこの映画はリメイク。

それも映画ファンを自称する者ならば見逃しているわけがない
第65回アカデミー賞 作品賞受賞
クリント・イーストウッド監督作品
同名映画「許されざる者」をほぼ手を加えることなく
舞台だけを明治13年の蝦夷地にもってきただけの
リメイク作品です。

ですのでわざわざ紹介せずとも内容は
皆さんの方がよくご存知のはず。

…あ、私ですか?

私は確か公開時(えっ?21年前?…えっ?)に
オリジナルを見ているはずなのですが
例の如くスポーンと記憶から抜け落ちており
実に新鮮な気持ちで見ることができました。

そんな私と同じような「明日の記憶」な方へ
簡単にストーリーを…。
  
 
 .

ぼくのおとうさん

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ぼくのおとうさん(釜田十兵衛:渡辺謙)

ぼくのおとうさんはここ、えぞちでひゃくしょうをしています。
おかあさんは3年前に死んで今はいません。
おとうさんとぼくと妹と三人でくらしています。
おとうさんは、毎日家のとなりにあるちいさな畑をたがやしています。
毎日毎日あせ水たらしてはたらいていますが、作物がまともに育つことがありません。
だから、ぼくと妹はいつもおなかをすかせています。
それでもおとうさんは畑しごとしかできないのでぼくの家はとてもびんぼうです。

ぼくの住んでいる家はとても古くてとてもきたないです。
冬になるとすきまからふぶきが家の中まで入ってきます。
着物も1枚しかないのでさむくて死にそうになります。
毎年のせきせつで家がつぶれないのもふしぎです。
つぶれたらぼくも妹もおとうさんもこごえる前に死ぬんじゃないかなと思います。
でも、びんぼうだからしかたありません。

おとうさんは人と顔をあわせるのがにがてです。
とくに知らない人に顔を見せることをひどくきらいます。
だから、ぼくの家では近所づきあいがほとんどありません。
というか、近所にはほかに家がありません。
近所に住んでいる人がぜんぜんいないのでぼくも妹もともだちがいません。
しかたないので妹は毎日のように家でかっているにわとりとあそんでいます。
ぼくの方は、おとうさんの畑しごとをてつだっています。
それしかすることはないからです。
おもしろいことはほとんどありません。

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ぼくの小さくもゆいいつの世界がこれです。

それでもおとうさんはぼくをわらせたいのか、ときどき馬のふんのそうじちゅうにまだやわらかいふんにけつまづいて顔をふんでよごしながら「たはは」とわらってみせます。
でも、ぼくはちっともおもしろくありません。
わらえません。

ある日、いつものようにおとうさんと畑しごとをしていると、馬に乗ったしらがのおじいさんがやってきました。

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しらがのおじいさん(馬場金吾:柄本明)

おじいさんはおとうさんのことを知っているようでいきなり「ひとぎりじゅうべえ!」と声をかけてきました。
ところが、おとうさんはさいしょしらんぷりをしました。
それから「ひとちがいだ。」と言いました。
ぼくは顔にこそ出しませんでしたが、びっくりしました。
おとうさんの名前は「じゅうべえ」です。
なんでおとうさんがうそをつくのかわかりませんでした。
「ひとぎり」とよばれたのがいやだったみたいです。
ぼくや妹に聞かれたくなかったみたいです。
「ひとぎり」ってなんだろう?
でも、おじいさんがあんまりしつこく「ひとぎりじゅうべえ」「ひとぎりじゅうべえ」と言うのでおとうさんはとうとう自分がじゅうべえだとみとめました。

そのおじいさんはおとうさんのむかしからのしりあいでした。
とおくからおとうさんを探しにきたそうです。
おとうさんは畑しごとをやめておじいさんと立ち話をはじめました。
おとうさんはぼくたちに話を聞かれたくないみたいでした。
でも、ぼくは気になったのでこっそり二人の話を聞いてしまいました。

おじいさんの話では、どこかとおくの町で女の人が男の人二人に顔を何度も切られたそうです。
それで女の人のなかまの人たちがいっぱいお金を出して、そのお金で女の人の顔を切った男の人をころしてほしいといっているそうです。
おじいさんはおとうさんにそのとっても悪い男の人たちをいっしょにころしてお金をもらおうとさそってきました。
おとうさんはそのはなしを一度はことわりました。
ぼくはほっとしました。
おとうさんがそんなこわいことをするわけがないからです。
ことわられたおじいさんはざんねんそうにたびだって行きました。
おとうさんはおじいさんを見送ると、ぼくと畑しごとにもどりました。
ぼくがいものつるを引きぬくと、食べるところがありませんでした。
それを見ておとうさんはとてもがっかりしていました。

次の日、おかあさんのおはかにお花をそなえてからおとうさんはおじいさんといっしょにとおくの町に行くと言い出しました。

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花は咲くのに作物は育たない…。

ぼくと妹はびっくりです。
でも、おとうさんがおじいさんをてつだうのはお金がないとこの冬がこせないからだとわかりしかたないなあと思いました。
ぼくたちはおとうさんがもどってくるまでおるすばんをしなくてはなりません。
こどもだけでのこされるのはとてもしんぱいです。
でも、おとうさんは、半月で帰るとやくそくしてくれました。
ぼくは半月はいくらなんでも長いなあと思いましたが、何も言いませんでした。
男と男のやくそくだからおとうさんはかならず帰ってきます。
ぼくはおとうさんを信じました。

おとうさんによるとそのあいだの食べ物はあるそうです。
もし足りなくなったら妹のだいじな友だちであるにわとりをつぶすようぼくに言いました。
ぼくは妹のことを考えるとうまくこたえることができませんでした。
それから、何かあったらおじいちゃんのいるアイヌ村に行くように言われましたが、たぶん行かないと思います。
ぼくの死んだおかあさんはアイヌ人です。
おかあさんのおとうさんはアイヌの村に住んでいます。
でも、ぼくも妹もアイヌ語が話せないのでおじいちゃんに会いに行くことはありません。
おとうさんはぼくにも妹にもアイヌ語をおしえてくれません。
アイヌだとわかると、ひどくいじめられるからだと思います。
さいごに、おとうさんはおかあさんのおはかに毎日お花をそなえるように言いました。
おかあさんが生きていればおとうさんが出かけることはなかったのかな?

おとうさんはおじいさんを追いかけるため馬にのっていきました。
馬はいつも畑をたがやしているだけなのでおとうさんが背中にのろうとするといやがりました。
馬の背中から落ちたおとうさんは、てれくさそうにぼくと妹を見てまた「たはは」とわらいました。
ぼくはやっぱりわらえませんでした。

わらえないぼくと妹をおいておとうさんはたびだってしまいました。
これからはぼくと妹だけです。
夜になると寒さはいっそうひどくなりぼくと妹だけではとてもしんぱいです。
とうししてしまうかもしれません。
おとうさんはしんぱいじゃないのかな?

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氷点下のあばら家に幼子2人残していく父性愛を描いた映画です。

3日たちました。
おとうさんはかえってきません。
毎日こごえるほどさむいです。
寝る時このまましんじゃうんじゃないかなと毎ばん思います。
ぼくも妹も生きています。

5日たちました。
やっぱりおとうさんはかえってきません。
半月ってあと何日なんだろう?

あれから何日たったのかわかりません。
ある朝、ぼくと妹が起きて外に出ると、あたらしいおとうさんとおかあさんがお金をもってやってきました。

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あたらしいおとうさん(沢田五郎:柳楽優弥)とおかあさん(なつめ:忽那汐里)とお金

お金はおとうさんがおじいさんといっしょにわるい人たちをおおぜいころしてかせいだものだそうです。
おとうさんはどこにいってしまったのかわかりません。
あたらしいおとうさんもおかあさんも知らないそうです。

ぼくははじめてやくそくはやぶるためにあるものだということを知りました。
ふるいほうのおとうさんはおかあさんとのやくそくをやぶり、ぼくとのやくそくをやぶりました。

あたらしいおかあさんはこの地でいっしょにくらしていこうと言いました。
あたらしいおかあさんはわかくてきれいでやさしそうです。
あたらしいおとうさんはよくわかりません。
あたらしいおとうさんもそのうちぼくらをのこしてどこかににげてしまうかもしれません。」


と云った感じのストーリーです。

「サワコの朝」での渡辺謙さん曰く
撮影現場は「氷点下15度」しかなく
「馬にしがみついて暖を取る」ほどの寒さだったそうです。

そんななか子供を2人だけ置き去りにして
湯たんぽ代わりの馬まで連れて行き
半月も帰らないどころか、
たまたま知り合った人のいい若い男女(←つきあってない)に
子供の面倒を任せて姿を消した主人公の行いは
いくらお尋ね者の身とは云えどうかと思いますが、
基本的には素晴らしい映画でした(棒読み)。

オリジナルはこんな極寒の地の出来事ではないでしょうが、
非常に上手く舞台を日本に移していると思います。

予告編では
「愛する者を守るため」をやたらプッシュしていますが、
最初の賞金首の2人はともかく
後の方の大虐殺はもう子供のためとかじゃないですからね。
ただの「やられたらやりかえし」ているだけですからね。

それでも確実に2013年度の日本アカデミー賞は
この作品でぎっちりと埋まることでしょう。
「半沢直樹」がここまで視聴率あげているくらいですもの。
賞金首だけでは収まらず「悪い奴」全員が主人公の怒りだけで
成敗されるこのストーリーは
脈々と続くテレビ時代劇の流れを組み
まさしく日本人向けストーリーと云えましょう。

因みに
助演男優賞は柄本明、助演女優賞は小池栄子推しです、私。

ところで、顔をズタズタにされたなつめの仇を討つため
お梶(小池栄子)ら先輩女郎5人が用意した賞金は
オリジナル版と同じ1000円(オリジナルは1000ドル)
だったように記憶しているのですが、
調べてみたところ明治30年代で
1円の価値は今でいうところの3800円に当たるのだとか。

だとすると、1000円は今の貨幣価値に直すと
だいたい380万円ということに…。

片やオリジナル版「許されざる者」の時代は1880年代。
この頃の1ドルは今の1246円ぐらいだそうです。
ということは1000ドル≒1246000円。

映画を見ているときに感じていたより遥かに高額な賞金なんですね。

これだけあれば、復讐以前に今の苦界から抜けだせるのでは…。

アメリカの西部劇には詳しくないので
「1000ドルなら相場かも…」
と、思わないでもありませんが、
あの極貧の地で380万も貯めておきながら
それでもなお新しい着物一枚買えず
身を売り続ける彼女たちの境遇と生活が
いったいどうなっているなのか
気になって仕方ありません。
 
後は馬がどれもサラブレッドのように気品があり美しく
それが蝦夷地の開拓民や地元民のみすぼらしさと
怖ろしいまでに対照的でそのへんもちょっと気になりました。

ところで、
この映画のキャッチコピーは
「人は、どこまで許されるのか。」
ですよね?

かつて覚え切れないほどの志士を斬り追っ手を斬っておきながら
「刀を捨てました。
亡くなった妻の遺志を継いで子供たちを育てながら
非常に慎ましい生活を送ってます
罪を背負って生きています。
だから許してね。」
なんて云われても大石一蔵(佐藤浩市)のように
「許せるかぁ!!!」となるのではないでしょうか?

それでも大石さんなんて一度は十兵衛の
「俺は侍じゃない。ただの百姓だ。」
「妻との約束でもう人は殺さない。」
とか云う言葉を真に受けて目印だけつけて解放したのに
(國村準にした仕打ちとそう遜色がない程度)
この仕打ち!!

舌の根が乾かないうちにターゲット惨殺。
以後、ずっと被害拡散。

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「(そりゃ、ねぇべや)じゅうべぇぇぇぇ!!!」と佐藤浩市もなるわな。

今だったらネット炎上ですよ。

まあ、これはこういう映画ですから、
見ている人は
法と治安を厳格に取り締まっているはずの大石に反感を覚え
お金と友人の仇討ちに暴走する釜田十兵衛に
加担して見てしまいますが、
実際にこんなふうに
特に罪を償うこともなく普通の家庭を持って暮らしている犯罪者が
身近にいたら
「人は、どこまで許されるのか。」
なんて悠長なこと云っていられないのではないでしょうか。

いちおう、この映画では誰もが正義を胸に生きているのです。

十兵衛にしても
大石にしても
お梶にしても
「曲げられないもの」がありそれを決して「曲げない」。
お互い曲げない以上は相手を力ずくで曲げるしかない。

某漫画にこんな言葉があります。

「アンタも そうだろう
曲がらねェのも曲げられねェのも
もうお互い百も承知のはずだ
だったら相手へし折ってでも進むしかねーだろ。」

この映画は彼らの「曲げられない」信念が
生み出した悲劇ではないでしょうか。





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