2013/3/18

私は結局失敗した。しかし、この子だけは成功させなければならぬ  MOVIE

本日の映画は

「ブラック・ブレッド」

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です。

私は親になったことがありませんが
世の中の親と云うのは
自分の子供には自分より幸せになってもらいたい
と思っているものですし
子供には望みどおりの人生を歩んでほしい
と思うものだと思います。

この映画の主人公アンドレウは
将来医師を目指している成績の優秀な少年です。

父親も母親も息子を愛し
息子の夢を応援しています。

息子の将来のため父親はある行動をとり
母親はそれを黙認します。

しかし、それで息子が幸せになったかと云うと
必ずしもそうではなかったようです。

時代が悪かったせいもあるのでしょう。

そういう話です。


スペイン内戦終了後のカタルーニャ地方の山あいの村に住む
少年アンドレウ(フランセスク・クルメ)は森を散策中
崖から落下した馬車を見つけます。

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主人公のアンドレウ。こんなスネオ顔ですが、大変に勉強ができます。

馬車に乗っていたのは
父親の友人であるディオニスとその息子クレットの2人で
アンドレウが駆けつけたときには
クレットのほうはまだかろうじて息があり

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動物愛護お構いなしのシーン。どうやって撮ったのか判りません。

「ピトロリウア…」と云う謎の言葉を呟いていました。

急いで村に戻り、クレットの母親であるパウレタに
事故の様子を知らせたアンドレウでしたが、
その甲斐なくクレットも亡くなってしまいます。

翌日、父親のファリオル(ロジェール・カサマジョール)とともに
警察の事情聴取を受けることになったアンドレウ。

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市民の義務を果たしたつもりが父親から苦言を云われるアンドレウ。

その夜、何かを怖れたファリオルは
アンドレウを自分の実家に預け
そのまま姿を晦まします。

ディオニスとクレットの死により
自身の生活も一変してしまい
何が起こっているのか判らないアンドレウでしたが、
そこは優等生、
両親の云うことを文句も云わず大人しく聞きいれ
母親のフロレンシアを故郷に残し
祖母の家で暮らし始めます。

同じく祖母に引き取られた
左手を手榴弾で失くした少女ヌリア(マリナ・コマス)や
2人の従兄弟たちとの新しい学校生活。

しかし、担任の教師は
授業中、「勝者と敗者」の話ばかりを長々としては
こっそり教室内で飲酒をするやら
ヌリアに性的な悪戯をしているやらで(ヌリアも了承済み)
ろくな大人ではありませんし、
ヌリアはヌリアで自分と同じような境遇のアンドレウを
汚い大人の世界の引きずり込もうといろいろ仕掛けてきます。

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苛酷な環境の中、人より先に大人にならざるを得なかったヌリア。
頭を空っぽにしている時だけが子供に戻れる。


日に日にアンドレウの表情が暗くなっていくのも無理ありません。

両親から引き剥がされた今、
アンドレウにとって唯一の救いは
修道院に隠遁中の青年とのささやかな交流のみです。

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この映画における一服の清涼剤。

やがて、ディオニスを殺した罪で
ファリオルが警察に逮捕されます。

夫を救うため、街の実力者の元へ足を運ぶフロレンシア。
そんななか、アンドレウに養子の話が持ち上がります。


タイトルの「ブラック・ブレッド」は
「黒パン」と云う意味。

黒パンは労働者階級が口にできるパンで
白パンを食べれるのが支配者階級の証となっています。

親は自分の子供には
黒いパンではなく白いパンを食べれるような
人生を歩んでほしいと思うのでしょうが、
それが
本当に子供の幸せとは限らない。

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警察の待合室で白パンを手にとって叱られるアンドレウ。

そういう話です。

出奔前ファリオルがアンドレウに

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その義務を奪ったのが他ならぬ両親と云う皮肉。

と語りますが、
息子のために本当に護らなくてはならない
「子供の時間」は
こんなふうに父と息子がともにいられる時間だったのに。

現にアンドレウが幸せそうに笑っているのは
夢である医者になるための勉強している時でも
白いパンを口いっぱい頬張り
甘いホットチョコレートで流し込んでいる時でもなく

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たとえ親が自分の子供だけには贅沢三昧な人生を送ってほしいと思っても。

父親を肩を並べて父親の大事にしている小鳥に餌を
やっている時だったのに。

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父親と父親が飼っている鳥を世話している時の幸せそうなアンドレア。

でも、親も完璧に「人の親」をやれるかというと、
それはやはり難しいことで間違いを犯すこともあるのです。

子供の前ではつい格好のいい理想ばかり喋っているものの
その理想に自分が全然伴っていないと云うこともあります。

父親の正体が理想と大幅に違っていたことに
アンドレアはこの上なく落胆しますが、
親ってそういうもんですよ。

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アンドレウから笑顔がなくなってしまったじゃないですか。
アンドレアの両親の決断を愚かとは思いませんが、
それでも子供の手を離す前に
もう少し何かできなかったのでしょうか?

この映画の最後で
クレットの母親パウレタの口から
ディオニスの事件にまつわる全ての事実が明るみになり

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もしクレットとアンドレウが逆の立場だったらこの母親は同じことが云えるのだろうか?

自分で覚悟を決めて養子になったアンドレウのもと

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自分で選択した、そう思っていた人生さえ実は親が仕組んだものでした。

を訪ねた母親が頑なな息子の態度に直面し
耐え切れずファリオルの真意を話すのですが、
そのタイミングで

それ云っちゃあかんやろ。

って思うんですよね。

それ云っちゃうと、それまで
父親が被っていたディオニスとクレットの死の責任も
父親が犯罪者として処刑されたのも
全部アンドレウがひっかむることになっちゃうじゃないですか。

それを踏まえて
母親は父親を許すよう諭しますが、
それで万事解決できるのでしょうか、お母さん!?

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こんなふうに背中に語るのではなくちゃんと息子の目を見て話して欲しかったです。

アンドレウにとっては
この上流階級の生活は
父親が望んだように夢に繋がる第一歩ではなく
むしろ顔つきがすっかり変わるほど不幸なことで
幸せはつつましくとも親子3人で暮らす
それだけのことだったのかもしれないのに。

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級友に母親のことを訊かれてこう答えるアンドレウ。
無償の愛が必ずしも子供を幸せにするとは限らない。


なんでこんなことになってしまったのか…。

みんな貧乏が悪いんか?

長い目で見れば
いつの日かアンドレウも両親に感謝する日が来るかもしれません。
自分のため身を犠牲してくれた父親
送り出してくれた母親に
ありがとうと心底思う日が来るかもしれません。

それでも、
最後のこの面会の拙さでアンドレウは父親とともに
母親と少年の日々までも
完全に失くしてしまったように思えるのです。
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