1960年前半(微妙)生まれの男の、映画について、音楽について、旅について、本について、そして人生とやらについてのブルース。自作の詩のおまけ付き。書いているのは、「おさむ」というやつです。
since 6.16.2005
To travel is to live. -H.C.Andersen
2007/5/11
あなたのふくれっ面が浮かんだなら
おさむ
少し長い信号を渡るところで
すれ違ったカップルの女の子が
左を向いて顔を上げる
その先に
ちょっと困った顔の20代後半くらいの男の顔がある
頬を膨らませたその女の子のふくれっ面の横顔が
あなたがよく浮かべたふくれっ面とそっくりだった
目に焼きついた表情
心にさび付いた輝き
初夏へと向う季節の夜
心地よい一筋の風がその横顔を撫で
僕の右肩をトンと叩く
一体何怒っているんだよ
面倒だなとその時は思っていたことも
すっかりと忘れ
そのふくれっ面が僕の心のどこかを
叩き始める
特定の人にしか見せないふくれっ面だから
ふくれっ面が特別なのだと
今ならわかる
すれ違った女の子のふくれっ面の残像を感じながら
四度瞬きをする
後ろを振り返る
その女の子は両手を精一杯
男の右腕にからめている
子どもの頃から大事にしている
古くなったテディベアを両手で抱えるかのように
口笛を吹いても何も変わらないことを知っているのに
僕は小さく口笛を吹き始める
無意識に
あなたが好きだった曲を吹いているのも
気付かないまま

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