事業仕分け効果1兆6千億円 削減目標の半額 作業終了
2009年11月27日22時41分
来年度予算要求の無駄を洗い出す行政刷新会議の「事業仕分け」は27日、9日間の全日程を終えた。朝日新聞の集計では、447事業のうち、必要性が乏しい事業などに「廃止」や「予算削減」を求めた結果、概算要求から約7400億円が削減可能とされた。公益法人や独立行政法人の基金のうち約8400億円を国庫へ返納するよう求めており、「仕分け効果」は総額で約1兆6千億円になった。
行政刷新会議は30日にも第4回会合を開き、結果を議長の鳩山由紀夫首相らに報告する。鳩山首相は、報告内容をできる限り尊重する方針だが、科学者から反発が出ている「次世代スーパーコンピューター」といった科学技術関連事業などで、仕分け結果を修正する可能性がある。
仕分けでは、「歴史的な使命を終えた」と判定された農林水産省の農道整備事業(168億円)など、50超の事業、約1300億円分が「廃止」とされた。約1600億円分の約20事業で来年度予算の「計上見送り」を判断。具体的な削減幅を示して「予算削減」を求めた70超の事業の削減可能額を合計すると、約4500億円に達した。
また、従来の財務省による予算査定で見過ごされてきた「天下り団体」の基金の無駄もあぶり出した。補助金を受けている公益法人や独立行政法人に、似通った目的の基金が乱立している実態などが明らかになり、約20基金について国への返納を求めた。
ただ、削減目標の「3兆円」には届かなかった。1回使えば無くなってしまう基金の返納分を合わせても、目標額の半額程度だ。来年度予算の概算要求は過去最大の95兆円。鳩山政権は刷新会議の方針を受けて、年末の政府案決定に向けて予算編成作業を本格化させる。予算編成では、仕分け対象外の類似事業にも仕分け結果を反映させる方針だが、マニフェスト(政権公約)実現のための財源確保は厳しい作業になる。
仕分け作業は一般に公開されたほか、インターネットでも同時中継され、情報公開を通じて「政権交代」を印象付けた。鳩山首相は27日夜、首相官邸で記者団に対し、「国民のみなさんに予算が見える形になった。やっぱり無駄はあるなということだ。やってよかった」と語った。仙谷由人行政刷新相は、来春にも再び事業仕分けを実施する意向だ。(福間大介)
asahi.comより。
【「まずは無駄遣いをなくしてほしい」という俗論の弊害等】
「無駄遣いをなくせ」の大合唱でどれだけ財源が確保できるのか?お手並み拝見させてもらった。
09年度の税収は37〜38兆円の見込み。10年度の概算要求は95兆円。「無駄」を削っても1兆円や2兆円規模だし、パフォーマンスとしての事業仕分けの結論は最終的な結論ではなく、仕分けで廃止や見直しとなったものも復活の可能性は十分あるわけで、
1.6兆円という削減額は圧縮されることはあっても増えることはない。
年度は違うし、歳入は税のみでなく、歳出は概算要求より減るとしても、両者を単純に比較すると57兆円の差がある中で2兆円にも満たない削減額というのが結果なのである。
「無駄遣いをなくして財源を確保する」という論がいかに現実離れした空論であるか、そろそろ目を覚ましてもらいたいものだ。
「無駄遣いをなくせ」派の人はこう言うかもしれない。
「無駄遣いをなくした後ならば、必要な増税は受け入れるのだ」と。それに対してはこのように訊ねよう。
具体的にどの無駄をどのようになくしたら増税に踏み切るのか?具体的に回答せよ、と。
それができないで「無駄遣いをなくした後の増税ならよい」などという戯言を言う人は、自分が問題を先送りすることで
財政赤字を増やし、財政の再分配機能をも同時に低下させるという愚を犯していることに、そろそろ気付いてもらいたいものである。
【「事業仕分け」と新自由主義の親和性について】
そして、「事業仕分け」の作業は、一見すると「情報公開がなされた民主的なもの」に見えるかもしれないが、評価の方法自体に特定のバイアスがかかっている。すなわち、複雑な問題や中長期的に影響が及ぶもの、反射的な効果が大きいもの、などの評価には向かない。そして、「向いていないもの」は、あの仕分けの場で必要性を主張することが難しいため否定的に評価されるバイアスがかかることになる。
そして、こうした評価における、視野の短期性、効果の即効性および直接性への傾向は、明らかに新自由主義と親和的である。すなわち
「事業仕分け」による事業の評価方法自体が新自由主義的なバイアスを有しているのである。
もちろん、「事業仕分け」によって最終的に予算に盛り込まれるかどうかが決まるわけではないため、こうした作業を一切すべきでないとは言わないが、
質問と回答をまずは文書で行うなど、「劇場的」ではなく、より「客観性」を確保しやすい方法を用いるべきである。
【民主党に言っておきたいこと】
最後になるが、民主党に対しては
「無駄をなくせというなら、無駄とは何か明確に定義してから言え」と言いいたいし(そうすればいつ反転して増税に踏み切るべきかも見えてくるだろう)、また、
無駄をなくすだけで足りるわけがないのだから「どのような増税が必要でどのようなタイミングで行うべきかを示せ」と言いたいところである。
というのは、
民主党はこの点に口を閉ざしており、人々に議論をさせないようにしているからである。そして、来年の参院選後に好き勝手なことをやりだす可能性がある。これでよいのか?

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