◆JANJAN「揮発油税暫定税率廃止で地方財政は立ち行かなくなるのか」より。
ttp://www.news.janjan.jp/government/0804/0804020076/1.php
同様に各地にも無駄な事業が存在するはずである。暫定税率撤廃は、地方の財政規律を見直し、その贅肉をそぎ落とす好機と捉えるべきである。その際、与党や首長の「社会福祉、医療や教育費を削らざるを得ない」「住民が求めている道路の緊急補修も出来ない」として、地方住民の不満を誘発する奸智を許してはならない。無駄を削らせることが死活的に重要であろう。そのためにも、野党は国の無駄遣いの摘発に引き続き、外部・第三者による地方の無駄な支出の摘出に全力を傾注すべきである。
ここでの
「はずである」という仮定は、暫定税率廃止派が必ず同じところで使用するワンパターンな論法であるが、誰も証明した人はいない。(
報道されている範囲の「無駄」を合計しても2.9兆円の10%にも満たない。廃止派は残り90%以上が「無駄」であることを示す必要がある。ちなみに、小さめに見積もれば2%程度だった。これを取り上げて廃止論を言うのは、「重箱の隅をつつく」議論の典型だろう。)
また、「社会福祉、医療や教育費を削らざるを得ない」「住民が求めている道路の緊急補修も出来ない」というのは奸智ではない。
制度と現実の状況の組み合わせによってそうなっているのである。そうでなければ(不人気なのは分かりきっている福祉の削減のようなことを)複数の首長が揃って言うわけがないだろう。
自治体の単独事業でやっている公共事業なんて、今時、あまりないだろう。もしあるとしたら、それはその自治体にとって不可欠な事業として行なわれているはずだ(★注1)。つまり、補助事業がほとんどだから道路財源がなくなったとしても公共事業を減らすことはできないのだ。
(★注1)敢えてここは「はずだ」と言ったが、自治体は、自前の持分が少なくすむ補助事業や交付税措置のある事業を好んでやってきた。課税自主権が不十分だしボーダーを管理できない政府だからそうせざるを得ない。それにも拘らず単独事業をやるということは、相応の必要性に基づくものが多いと見るべきである。実際、90年代の公共事業の乱発は、まさに補助金と交付税措置と地方債の特例によって推進されてきたものだったことを想起すればよい。
その上、自治体が行なっている事務の大部分は法定受託事務だったり、昔の機関委任事務だったものが自治事務になったものなどは、法律による縛りを厳しくすることで実質的に機関委任事務を継続している。だから、
それ以外の事業で選択の余地は少ない。
そんななか、
自治体が独自の政策として中央政府とは別枠で上乗せしたサービスを行なってきた分野がある。それこそ福祉である。中央政府が全国一律で実施するように決めている福祉の水準が低いので、自治体が独自の政策として上乗せしている分がそれなりにある(というより、あった)。だから、急に歳入が減ってしまうなら、一般的な傾向としては、
自治体独自の判断で削ることができるのは、このような自治体独自の部分にならざるをえないのである。
既に一つか二つ前のエントリーで述べたが、日本の自治体には
「歳出の自治」などないに等しいのだ。だから、
「今回の道路財源は無駄を削るチャンスだ」なんていう類の観念論は、少なくとも自治体には当てはまらないだろう。
(行政の運営は、優れたリーダーがいなければ成り立たないようなものであってはならない。凡庸な普通のリーダーが何とかやりくりできるような制度設計が必要なのだ。なぜならば、行政の役割は「誰かがやらなければいけないこと」だからであり、持続性や専門性が要求されるために行政以外の主体が行なうのは適切でないものが多くあるからである。また、特別なリーダーなしでは行政の運営が成り立たないようならば、行政ひいては社会が全体として良い方向に向かうことはないだろう。それは、その社会が全般的な衰退局面にあることを意味するからだ。)
だから、例えば、「きっこの日記」の4月2日の記事「天下り天国を後押しする政府」で次のように述べているのは端的に
無理解の産物でしかない。(なお、
道路財源がらみの「きっこの日記」の記述は論理的にも破綻が多く、はっきり言って滅茶苦茶である。具体的には3/31と4/2の記事。)
今まで714億円あった道路予算が573億円に減ったら、知恵を使って、その中で何とかヤリクリすんのが知事の仕事じゃないのかよ?知事の「知」って字は、知恵の「知」じゃないのかよ?1人暮らしのおじいちゃんやおばあちゃんたちが、7万円だった年金を5万円に減らされても何とかヤリクリして生活してんのに、それとおんなじこともできないほど無能なら、知事なんか辞めちゃえば?
家計や企業のように
自由に金を使えないようになっているのが自治体財政なのである。なぜなら、
自治体に金がないから生活保護の支給を止めると知事や市長が言い出したらどうする?って話になるからだ。そんなことがないように、「絶対にやらなければいけないこと」が大量に決められている。というか、
自治体のやっていることなんて、ほとんどが決められたことだけである。(だから、中央政府の言いなりにならざるを得ず、どこの自治体も90年代の間に財政難になったのだ。自律的な判断が許されているなら、けっして一律に悪化することはなかっただろう。)
つまり、きっこさんが使っている年金の譬えを、自治体に当てはめれば、
7万円だった年金のうち6万円は既に使い道を決められて動かせないのに5万円に減らされるような状態なのである。(ちなみに、決算上の赤字が出ている自治体の数は割合としてはそれほど多くないが、一部では既に出ている。私が住んでいる所もその一つだ。この譬えでは、そういう風にアレンジしてみた。)
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