本間正明・政府税調会長のスキャンダルに対して、本人が進退を決めるべきだとする意見が主に自民党の議員たちから出ているようだ。
私が見るところでは、
本間正明という人間は、到底、税制という政府の根幹をなす問題を決めるにあたって大きな責任を持つ役職に値しない。
第一に、税制というのは、その国の「国民」にとっては強制的な負担であるがゆえに、相応に、世の中に意見を伺うことや負担を求める際の説明責任というものが求められる。
しかし、この男は、そうした公の場での議論を必要とする税制を密室で決めようとした(税調を非公開にしようとした)。ごく少人数で決めようというのである。自民党の税調には確かにそうしたものはあるようだが、それは所詮一政党の内部のものである。たとえ、自民税調が最終権限を握っているとしても。
しかし、
政府の税調は法律によって設置されている正式・公式の機関である。それを非公開で少人数で牛耳ろうとした。小泉政権下の経済財政諮問会議のように。
そのようなやり方は税制を議論する場に馴染まない。その点でまず、本間正明という人間は税制調査会の会長には相応しくない。
第二に、公務員宿舎に愛人と同居していたという今回の問題については、
宿舎の家賃が相場より安いということについて非難している人がいるが、それは問題ではない。というのは、公務員の宿舎は儲けを出して住まわせるものではなく、公務員が仕事をする上でのインフラとして用意されている公共の財産なのだから。その意味では一般の民間企業が賃貸しているマンションなどより家賃は安くて当たり前である。
愛人と同居というのは、道徳的にいかがわしいとはいえ、決定的な問題とまでは言えない。しかし、それでも生活がきちんとしていない
「だらしない人間」であると見られることは避けられず、
人一倍、納税者や有権者たちからの信頼を必要とする税制調査会会長という立場には相応しくないとは言える。
問題は、その安い家賃すら国費で支払われているのではないかという疑惑がある点(大阪大学が借りたことがこれと関係しているようだ)であり、また、もし、愛人と同居していたならば、公共の財産たる宿舎に対して適正な届出がされていなかったのではないか、という疑いがある点である。もしそうならば、
公共の財産の私物化であり、また、
「非合法の特権」の濫用である。
(以前の記事で、富裕層や特権階層はやりたい放題の世の中になってきている、と書いたのはこのことである。)
こうしたことをする人間は、広く国民からの信頼を得ることはできないし、公正・公平であることが求められる税制というものを決めるにあたって、重要な役割を担う税制調査会会長という役職に相応しいとは到底言えない。
以上のような理由から、
本間正明・大阪大学大学院経済学研究科教授は、政府税制調査会の会長という役職に相応しくなく、
即刻、辞任すべきだと思う。
では、
代わって誰が会長を務めるべきか?
私は
神野直彦氏(東京大学大学院経済学研究科教授)が適任ではないかと考える。主な理由は以下の通り。
第一に、
財政学や租税論の専門家であり、特に税制に関して提言する著書を出すなど、税のあり方に関して持続的に、精力的に取り組んできた方であること。
第二に、
政府税制調査会に比較的長期にわたり所属してきており、これまでの議論を熟知していること。
第三に、東京都税制調査会会長も兼ねており、
責任ある立場での会議運営なども心得ていると思われること。
第四に、若い頃、企業(日産自動車)に勤務していたことがあるなど、本間氏などのように常に大学にいて「理論」を学んだ
「象牙の塔」の教授とは異なること。
第五に、安倍内閣が推進する地方分権とも関連する地方税の専門家でもあり、税を考える上で外せない福祉関連分野についても共著があるなど、
広範な分野に配慮した税制改革に対する考えを持った人物であると思われること。
以上が主な理由である。
本間正明氏は会長辞任!神野直彦氏が会長就任!政府税調の進む道としては、これが現時点でなしうるベストな選択であると思う。(究極的な理想論を思い描くなら、別の選択肢はあるかもしれないが、現実的には会長は現在の委員の中から選ぶ方がリアリティがあると考える。)
【神野直彦氏の近著】
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脱「格差社会」への戦略
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希望の構想

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