鳥インフルエンザの話題がマスメディアを騒がせている。少し前のことだが、イランの友達(イラン人)から電話が来たときにも「そっちは鳥インフルエンザどう?流行ってない?」などと聞かれたこともあって、少しこの話題は気になり始めている今日この頃である。
(イランや中央アジア、もっと広くは中東では鶏など鳥を食べることが多いので、日本よりも余計気になるのだろう。)
この病気のことを私はそれほど詳しくは知らない。しかし、歴史的な知識を絡めて現在のニュースを見てみると、
ちょっと怖くなる。
14世紀ヨーロッパでのペスト(黒死病)の流行は有名だが、これは特に
13世紀における経済的交流の全ユーラシア規模での拡大がその前提条件としてあったと私は考えている。13世紀は全ユーラシア的に経済的・人的な交流が非常に活発化した時代であった。そして、そこで確立した交通のルートのおかげで、人類は大きな繁栄を謳歌した。
しかし、それを可能にした交通の拡大、人的・物的な交流があったからこそ、こうした大きな痛手を負うことにもなったのだと思っている。というのは、例のペストは「ヨーロッパ」だけを襲ったのではなく、中央アジア、中国、エジプト、シリアなど全ユーラシア規模で被害を与えていたからである。
つまり、経済的な交流が活発化するということは、当然にモノの往来も激しくなるということであり、細菌などの移動も活発化する。経済のグローバル化が叫ばれる現在は、まさにこうした状況に近いものがある。現在の「グローバル化」という言葉は、主に冷戦崩壊後に言われたことであるが、実際には
19世紀の後半には、ほぼ経済の「グローバル化」は完了していた。冷戦時代にはこのグローバルな秩序に東西陣営という政治的枠がはめられていたために、相互の流通が困難な諸地域が生まれることで、経済秩序が(相対的に)固定的だったのに対して、
現在の「グローバル化」というのは、再度、そのようにもともとグローバルだった秩序が流動化し始めたということに過ぎない。
13世紀に流通が活発化していた時期も、政治的な枠が各地域の経済をある程度ではあるが固定的に結びつける役割を果たしていたと考えられる。すなわち、モンゴル帝国である。
その秩序が崩壊し、経済活動が一つの頂点を越えた感がある時期(14世紀)にペストの流行があったということと、現代(近未来)の状況というのは似ていなくもないのではないか、と感じている。
なお、一つのピークを過ぎるということは、生活水準の向上が全般的に停滞することを意味するとすれば、衛生水準も下がりがちになるのは道理であろう。
現在、SARS、BSE、鳥インフルエンザなどといった問題がしばしば採り上げられるが、それらの一つがすぐに人類に大打撃を与えるかどうかはともかくとしても、
今後数十年くらいのスパンで考えれば、これから現れるもののどれかが「ブレイクする」可能性は否定できないように思われる。(ただ、鳥インフルエンザは他のものと比較してかなり危険度が高いように見える。)
そうした観点から、関心を持っておくべき問題ではないかと思い始めている。

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