2004年1月の写真。
web 上に流れている通説の一つに、野方物件は大谷口物件よりも大きい、というものがある。野方物件は直径18メートルで、大谷口物件は直径15メートルだという。しかし、同じ時期に同じ荒玉水道町村組合の土木構造物として建造された両物件のサイズが異なるというのも、なんとも解せない話ではないか。同じ大きさにしておけば設計の手間がはぶけて楽だろうにと思うのは素人考えか。そこでまた、伊東孝氏の『日本の近代化遺産』(岩波新書 2000年)から引用する。両者のサイズについて、伊東氏はこう記している。
配水塔は、鉄筋コンクリート造りで、内径45尺(13.6メートル)、地盤面からの高さは、野方が102尺(30.9メートル)、大谷口が105尺(31.8メートル)、満水面の高さは200尺(60.6メートル)、水深70尺(21.2メートル)と両者同一である。有効容量約10万立方尺で、人口60万人に対して平均給水量約2時間分の貯水ができた。(引用の際に横書きに改めるにあたって、漢数字をアラビア数字に改めさせていただいた箇所があります。)
地盤面からの高さが異なるのは、大谷口物件が土を盛った上に建造されているからであろう。そうすると、内径、高さ、有効容量はいずれも同一ということであるから、外径が3メートルも異なるというのはなんだかヘンだ。あるいは、1930年代はじめの竣工時には両者同一のサイズであったが、1977年に野方物件は塗装をほどこされ、その後厚塗りに厚塗りを重ねた結果、外径が増したのだ、ということなのかもしれない。