2008/12/11
連続ブログ小説リターンズ『桜色ノ空』第二話。 ことのは。
「ねっ、いまパンツ見たでしょ。」
「い、いや。見てないよ。」
見ていた。
「うそー。まっ減るモンじゃないし、いっか。」
そう言って、また歩き始めた。
僕は夢中でシャッターを切った。
木の下。
花壇の前。
道ばた。
路地裏。
田んぼ。
ビルの前。
何処で撮っても絵になった。
明るい笑顔、時折見せる大人っぽい表情。芯の強さとはかなさを合わせ持った彼女。
声を出すのも忘れ、ただただひたすらシャッターを押した。
気が付くと一時間が経っていた。
「ありがとう。いいのが撮れたと思うよ。ありがとう。」
「そう言ってもらうと、うれしいね。だけど、ちょっと心配。あんなのでよかった?」
「もちろん。」
「ねえ、いつもこうやって女子高生撮ってんの?」
「いや。今日が初めてだよ。いつもは女子高生どころか、物しか撮らない。」
「ふーん。そんな風にみえないけどなー。遊んでそうに見える。」
首をちょこっと傾けて、鑑定するかのように僕を見ながら言った。
「それは心外だ。」
「うそうそ。真面目そうだよ。じゃなきゃ、写真のモデルなんて引き受けるわけないじゃん。こう見えても人を見る眼は自信があるんだから。」
もてあそばれているような感覚を覚えながら、まんざら嫌な気もしなかった。
「おじさん、今から時間ある?」
「おじさんって。まだ二十代だ。」
「後半でしょ。おじさんだよ。暇ならさ、どこかドライブしない?」
「別に用事もないけど…。いいのか?知らない人についていって。」
「もう充分ついてきてるじゃん。行こうよ、いい天気だしさ。」
「ううん。いっか。一期一会だ。」
「イチゴイチエ?なんだかよくわかんないけど。じゃ決まりっ。私いいとこしってんだ。」
このまま別れてしまうのは、惜しい気がしていたので、彼女の誘いはワタリニフネだった。
(つづく・・・)

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