私たちは何人かで軟禁されていた。怖いおばさんがいて自由に行動できない。
25メートルプールの半分くらいの大きさの砂場には地雷が仕掛けてあって、その上を全員で往復しなければならない。そこでの移動が早くできれば外に出られる可能性も出てくる(何故か?)。一人がぱっと走っていったらあっという間に地雷を踏んだ。全身が赤く光って飛び上がり、バツーッンと大きい音がした。みんなは怖くなってゆっくーり歩いた。でもまた一人地雷にやられた。みんな怖くて震えていた。こんな毎日。
ある日、別の一人が静かに土を掘り始めた。栗のようなもの、というかまんま栗なのだがそれが地雷で、すごい数埋まっている。みんなもまねをして静かに土を掘っては地雷を掘り起こし、ゆっくりと栗のような地雷を掘り出す。この地雷は静かに扱えば爆発しないみたいだ。
地雷を撤去した場所を足場にしながら、徐々に進んで行く。
暫くすると時間が来ておばさんに別の部屋へ連れて行かれてしまう。そうなると脱出は不可能である。しかも明日になると、また地雷は埋めなおしてあって、一から始めなければならない。でも、掘り起こせることに気付いただけでも前進だ。
何日かたったある日、誰かが発見した。「地雷を踏んでも死なない。」
そういえば地雷を踏んで爆発した人は、暫くすると痛がりながらも作業に加わっている。赤く光って宙に飛び上がるので、見た目は物凄い悲惨で、恐ろしいのだが、実はそこまで酷い物ではないらしい。私たちは騙されてたんだ!
そこで皆動きも少し大胆になり、早足で奥のほうまで行って掘り起こし作業をするものも出てきた。砂地全体でなく、一本道のように撤去して行けば、時間短縮になるということも発見した。
掘り出された栗のような地雷の数が結構たまってきて、さらにあることに気付いた。
この砂地は色分けしてあって、3メートルずつくらいに、赤い線、緑の線、黄色い線、青い線、が引いてあるのだが、赤い線の手前側の栗地雷には赤い色が、緑の部分の場所に埋まっていたそれには緑色が、という風にそれぞれ色がついている。そして緑の地雷地帯の撤去作業をしていたチームが、「実は、二度ほど地雷を踏んだが爆発しなかったんです。」と言った。死なないことは事前に分かっていたので、勇気ある人何人かが緑の地雷を試したところ、やはり爆発しなかった。誰かが言う。「これはフェイクなのでは?」
そうだ、きっとそうだ。つまり、緑の部分は安全地帯なんだ。しかも、キチンと色別に埋まっていたということは、毎日埋めなおしていても、緑のところには緑の地雷しか置かないわけで、しかも緑の地雷は爆発しないということは、埋めなおされようが緑の地帯は安全ということだ。
「埋めなおす人が怪我しないように、そういった何らかの分かりやすい方法を取っていてもおかしくない。」と、誰かが裏づけするように言った。
しかしこの事をおばさんに気付かれると、地雷をメチャクチャに埋めだすかもしれないので、「気付いていない振りをしよう」ということになった。その後、他の安全地帯や、九割がた不発弾と見ていい地帯などが発見され、気をつけなければならないのは一番手前の赤い線の内側、ここは必ず爆発する、あと一番奥、青い線の向こう側は、半分くらいが爆発する、ということが分かった。
「もう時間だ。」と誰かが言った。おばさんが来る前に私たちが気づいたという証拠を消さなくては。少しだけ掘り起こしたようにして、後は埋める。いつものように怖がっている振りをする。
私はおばさんを手っ取り早くやるために、爆発する赤い地雷を3個、秘かに隠し持って出られないだろうかと考えた。どっかに3個同時に仕掛けてやる。死なないとはいえ暫く動きを封じられるから、その隙に逃げられるかもしれない。そして持っていた帽子の内側に地雷を隠した。
おばさんが入ってくる。ニヤニヤしている。「今日もダメだったのかい?とろくさいねぇ。へんな真似はしなかっただろうねぇ。ほら、痛いことをされたくなかったら黙ってこっちに移動するんだよ。」
おばさんの前を一人づつゆっくり移動させられる。調べられるんだ。いつも適当にやってるのに今日に限って念入りみたいだ。地雷を捨てたいけど余計見つかりそうだし、もうすぐ私の番だ。ドキドキするけどいざというときは一人でもやってやる。
「その帽子どうしたの?」
「どうもしません。いつも持っています。」
「ふ〜ん。中になんか隠してないかい?」
「別に。何も。」
「本当かい?」
「はぁ。」
何気なく答える振りをしていた。手が震えそうなのを必死で隠す。なんなら見ます?ぐらいの勢いで帽子を少し前に突き出す。でもホントに見たら?どうすればいいだろう?どこを殴れば行けるか?
じわじわとした緊張感の中、おばさんは「ふんっ。」と鼻息をひとつ漏らし、私を通した。
その後私たちの地雷の研究も進み、計画もばれていず、いつかは脱走できそうな気がする。

0