世界で一番料理がまずい国として知られているイギリス。ここで、本当にそんなにまずいのかを検証してみたいと思う。ちなみに私は、もしかしたら世界でただ一人のイギリス料理愛好家である。イギリスで食べた料理はどれもおいしく、未だに夢に見るほど。(といっても主にパブ飯。ソーセージ&マッシュや悪名高いフィッシュ&チップスである。)

(手前がフィッシュ&チップス)
いくつかの項目に分けて考えてみた。
素材1、野菜
きゅうりや葱など大きくてビックリした。大きいと、味は大味なのかと思いきや、メチャクチャフレッシュ&ジューシーでおいしい!レタスは、バケットにちょこっと挟まっているだけのものでも、存在感のある自然な甘みがあり、歯ごたえは張りがあって、しゃっきり、水分がじゅっと出るほど。

きゅうりも同じく、少量でも甘さとみずみずしさが際立っておいしい。スーパーで買ってほぼ毎日食べた。そのほか、豆やトマト、何でも美味しい。日本の野菜は、ほんのりした渋みや苦味も含めて味わうものだと思うが、イギリスの野菜は、大地からそのまますくすく真っ直ぐ育った味がする。恐らく水のせいかと思う。軟水と硬水の違いではないか。兎に角、イギリス在住の人々の証言もあり、イギリスの野菜は美味しい。と、私は結論付けたい。
2、肉
肉食文化のイギリスでは、日本より肉の扱いが慣れているのも当然だろう。私が特に気にいたのはベーコンとソーセージ!ベーコンは、日本のスーパーではほとんど燻製しかお目にかからないが、燻製でないのもある。その、かなりしょっぱい塩漬け肉は、肉本来の野生的な味がし、とても美味しい。ソーセージは殆どが生で売っているので、火を通すのに時間がかかるとのことだが、森のソーセージ専門店で食べるようなお味。肉汁したたり、ナイフで切って食べる快感。以上、こんな肉とあんな野菜が近所のスーパーで手に入るなんて羨ましい!帰国後、セインズベリーやテスコ(イギリスの代表的チェーンスーパー)が、日本に進出するという夢をよく見る。あーやっと日本でもあの食材が食べられる!と、電車を乗り継いでそのスーパーへ行き、肉や野菜を嬉々として選ぶ私。お会計する頃に目が覚め、あーなんだ、夢か。と、がっかりするのであった。イギリスの肉は美味しい!
3、果物
特に葡萄とベリー類が美味しい。甘酸っぱくて元気のある味。コテッとした物を食べた後のお口直しに最高!
という訳で、基本的に素材は活きがよく、素朴で、美味しい。
外食
1、多国籍モノ
昔はあまりお勧めできなかったらしいが、今イギリス、ロンドンは東京に並ぶ様々な国の様々な料理が食べられる街。インド料理その他、本格的なスパイスと料理法で、美味しくて面白くて楽しいお店がいっぱい。(日本料理はビックリした。
"You know Tofu?"と聞かれ、豆腐と言って油揚げが出てきた。焼きビーフンにカレーかけたりとか。おもしろかったけど。)
2、イギリスモノ
といえば、
イングリッシュブレックファーストとパブ飯。
フィッシュ&チップス(揚げた魚とフライドポテト)、
ソーセージ&マッシュ(ソーセージとマッシュポテト)は、必ずと言っていいほど置いてある。ギネスとの相性も抜群!

それと
アイリッシュシチューポット(日本の牛筋煮込みみたい)、
コッテージパイ・シェパーズパイ(クリーミーなマッシュポテトと肉なんかから出来てるパイ)など、どれもおいしい。昼時や夕方など、パブからポテトを茹でたにおいがしてくると、食欲をそそられふらふらパブに入ってしまう。帰国後も、二日酔いの朝など、マッシュポテトが食べたくなる、私の中では既にソウルフードになっている。

滞在中よく行ったチェーン店のパブ、オニール。是非日本へ進出して欲しい。
だけどここで問題が出てくる。この、どこに行っても同じメニュー、ということ。美味しいのだが、素朴だけが売りの飽きの来る味。フランスへ行ってみると、同じポテトでも、繊細で、工夫された、美味しい!と舌鼓を打つ物が出てくるのに、ちょっと海を隔てただけの距離なのに、なぜポテトをマッシュか揚げるかしかしないのか?何でもかんでもチップス(フライドポテト)どばっとつけりゃいいってもんじゃないだろう。イギリス人は変化を好まないらしく、ずーっと同じ物を食べたい人が多いらしい。
魚の問題
そして日本人として一番気になるのが魚の扱い方である。生で魚を食べるなんて信じられない、と、イギリス人は言うであろう。それもそのはず。イギリスで魚を売っているところに近づくと、凄いくさい。同じ島国なのに、どうしてそんなに魚を雑に扱うの?市場で魚売ってるとこなんか、魚の半腐乱死体の山積みである。イギリスでは臭いことをフィッシャーという。足が臭いとか、アイツなんか匂うな(怪しい)というのも、臭い全般をフィッシャーというそうだ。あれが魚の姿だと思えば、私だって生で食べるなんて想像できない。そして魚といえばフィッシュ&チップス。衣を着けてフライにしているが、魚の持つ繊細な風味が台無しである。なぜ工夫しない?海に囲まれ魚が豊富に取れるはずなのに、何故?昔から?
ここで面白いイラストを見つけたので紹介したい。これは、銅版画家ギュスターブ・ドレが、1872年に出版したロンドンの街並みイラスト集に収められていたものである。
100年以上前のロンドンの魚市場!

凄い量の魚!今より冷凍技術等発達していないだろう時代に、今でさえあんなに臭いのに、路地にこんなに魚を並べたらどうなるか…。想像しただけでも恐ろしい…!それともそれとも、もしかして、この時代は魚を新鮮な状態で売っていたのか?魚に対する技術と工夫がこの100年で退化したのか?この魚全部フィッシュ&チップスにしちゃうわけじゃないよね!?
結論
イギリスには呆れちゃうこともいっぱいあるけど、(お互い様かもしんないけど)そんな色んな思いも含めて、単純素朴なイギリス料理は、私にはやっぱりおいしい物でした。

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