2008/1/8
プルルル・・・。カチャ。
「おい、正月暇だろ?今すぐ北陸に開高丼を食べにいくぞ。」
いつもお世話になりっぱなしの先生からいつも急な電話が来ました。
「是非。喜んで!」
こうして正月の開高さんを偲ぶ男二人旅in北陸が始まったのです。
僕は独りになりたい傾向が強い人間ですが、幸せなことに多くの人達に助けられて生きています。
この先生も僕の事を常に心配してくれ、よきアドバイスを頂き人間的にも尊敬している
生物好きなある部位のお医者さんなのですが、ひとつ言えることは
「熱い男」です。
いや、僕みたいなおかしな熱さではなく、内に秘めたる情熱を持った人です。
僕が大の開高ファンであることを気に留めてくれていてお誘い頂くその篤い温情に正月から胸のすくような想いです。
会えばとめどなく話があふれ、北陸はもうすぐ手前でした。
すっかり雪景色。
勇壮な日本海のキリっと澄んだ空気を吸い込み、海の水平線が一望できる温泉に浸かり、たくさんの水揚げされた蟹に驚き、吸盤が五百円玉ぐらいある大タコに驚きつつ、
夕方ちかくに
ふるさとの宿「こばせ」
にたどりつきました。
北陸の海の印象はいつもさみしい過疎の進んだ村を連想させますが、
この宿も例外なく正月だというのに、玄関にはお客が来ている様相がほとんど見受けられません。
「○○御一行様」という看板にも一行も何も書いておりません。
普段であれば立ち寄ることも、気付くこともない「昭和」を強く残した宿でした。
少々不安になりながらも靴を脱ぎ、玄関奥に目がいった瞬間、灰色の景色が急に鮮やかに色付きました。
そこには、開高さんがここで書き遺した色紙が飾られていたのです。
「この家ではいい雲古の出るものを食べさせてくれます。
保証します。 開高健」
お墨付きというやつです。
おばさんに部屋まで案内され落ち着くと、その昭和が色濃く残るテレビや掛け軸、机を見、お客のいない静けさでその先生はちょっと失敗したかなという冴えない表情をしていました。
僕は間違いないだろうと思っていました。過去、世界の開高さんの後を追い、同じ経験をしてきましたが、実に忠実に事物を語っていたことに間違いがないからです。
「失礼します。」
方言なまりで静かに入ってきたおばさんにビールとバイ貝を注文し、小さな乾杯をして、冷たい日本海をバックに吞み始めました。
このバイ貝の口いっぱいに広がる自然の海の香りに先生もこれは間違いないという確信の表情を浮かべ静かにうなずき呑んでいました。
ほどなく、おばさんが大きなドンブリに山盛りになった開高丼を持って入ってきました。
その豪快。彩り。シンプル。
これまた一気に部屋が華やいだ。

勢子蟹の「うちこ」と「そとこ」と「ミソ」とご飯のみというそのシンプルで贅沢な丼の圧倒的存在感に酔いしれる。
ヤバい・・。絶対美味いだろ、これ・・。
いよいよ口にする。お墨付き。
一口かき込んだ。
・・・美味いっ!!
昇天するかと思うほどの絶妙さ。想像を遥かに越えた。
これこそが見た眼やらブランドでしか判断できない大衆に一石を投じるかのごとき本当の贅沢。
「食事は大地に近いほどうまい。」
との名文句を述べた氏を表すかごとき丼。
さすが食通開高健がお墨付きをつけた一品だ。
シンプルであるが故にここでなければ絶対にだせない味だということは容易に想像できた。
食べながら横でおばさんが生前の開高さんの話をしてくれる。
「あたしが先生の食べるカニを全部剥いてたんですよ。朝まで呑んでおられました。あたしもお酒をついでたんですが、途中でよくこっくりこっくり寝てしまってね。よくお吞みになられてよく食べられましたよ。えぇ、あの先生は男ですよ。今、そのお食べになっているドンブリで開高先生もお食べにならっしゃったんですよ。」
えぇ〜っ!!マジっすか?
感無量です・・。
開高さんに携わった人はみんなファンにさせてしまう魅力を持っていたのだ。
開高さんはこの宿がみんなに知れて味が堕落することを好まなかったらしいが、
あえて、今の状況から見て、今度は反対にこの味を守り存続する為に紹介したい。
ふるさとの宿 こばせ
是非。俺と開高さんのお墨付きです。(笑)

宿の高齢の白髪のご主人が返り際に色んな開高さんの話を聞かせてくれました。
いや〜、いい小旅行でした。
この宿の温かさが気に入りました。
そして先生、こんないい旅に誘って頂いてありがとうございました。
最後に一言。
拝啓 開高先生。
「確かに。」
「おい、正月暇だろ?今すぐ北陸に開高丼を食べにいくぞ。」
いつもお世話になりっぱなしの先生からいつも急な電話が来ました。
「是非。喜んで!」
こうして正月の開高さんを偲ぶ男二人旅in北陸が始まったのです。
僕は独りになりたい傾向が強い人間ですが、幸せなことに多くの人達に助けられて生きています。
この先生も僕の事を常に心配してくれ、よきアドバイスを頂き人間的にも尊敬している
生物好きなある部位のお医者さんなのですが、ひとつ言えることは
「熱い男」です。
いや、僕みたいなおかしな熱さではなく、内に秘めたる情熱を持った人です。
僕が大の開高ファンであることを気に留めてくれていてお誘い頂くその篤い温情に正月から胸のすくような想いです。
会えばとめどなく話があふれ、北陸はもうすぐ手前でした。
すっかり雪景色。
勇壮な日本海のキリっと澄んだ空気を吸い込み、海の水平線が一望できる温泉に浸かり、たくさんの水揚げされた蟹に驚き、吸盤が五百円玉ぐらいある大タコに驚きつつ、
夕方ちかくに
ふるさとの宿「こばせ」
にたどりつきました。
北陸の海の印象はいつもさみしい過疎の進んだ村を連想させますが、
この宿も例外なく正月だというのに、玄関にはお客が来ている様相がほとんど見受けられません。
「○○御一行様」という看板にも一行も何も書いておりません。
普段であれば立ち寄ることも、気付くこともない「昭和」を強く残した宿でした。
少々不安になりながらも靴を脱ぎ、玄関奥に目がいった瞬間、灰色の景色が急に鮮やかに色付きました。
そこには、開高さんがここで書き遺した色紙が飾られていたのです。
「この家ではいい雲古の出るものを食べさせてくれます。
保証します。 開高健」
お墨付きというやつです。
おばさんに部屋まで案内され落ち着くと、その昭和が色濃く残るテレビや掛け軸、机を見、お客のいない静けさでその先生はちょっと失敗したかなという冴えない表情をしていました。
僕は間違いないだろうと思っていました。過去、世界の開高さんの後を追い、同じ経験をしてきましたが、実に忠実に事物を語っていたことに間違いがないからです。
「失礼します。」
方言なまりで静かに入ってきたおばさんにビールとバイ貝を注文し、小さな乾杯をして、冷たい日本海をバックに吞み始めました。
このバイ貝の口いっぱいに広がる自然の海の香りに先生もこれは間違いないという確信の表情を浮かべ静かにうなずき呑んでいました。
ほどなく、おばさんが大きなドンブリに山盛りになった開高丼を持って入ってきました。
その豪快。彩り。シンプル。
これまた一気に部屋が華やいだ。

勢子蟹の「うちこ」と「そとこ」と「ミソ」とご飯のみというそのシンプルで贅沢な丼の圧倒的存在感に酔いしれる。
ヤバい・・。絶対美味いだろ、これ・・。
いよいよ口にする。お墨付き。
一口かき込んだ。
・・・美味いっ!!
昇天するかと思うほどの絶妙さ。想像を遥かに越えた。
これこそが見た眼やらブランドでしか判断できない大衆に一石を投じるかのごとき本当の贅沢。
「食事は大地に近いほどうまい。」
との名文句を述べた氏を表すかごとき丼。
さすが食通開高健がお墨付きをつけた一品だ。
シンプルであるが故にここでなければ絶対にだせない味だということは容易に想像できた。
食べながら横でおばさんが生前の開高さんの話をしてくれる。
「あたしが先生の食べるカニを全部剥いてたんですよ。朝まで呑んでおられました。あたしもお酒をついでたんですが、途中でよくこっくりこっくり寝てしまってね。よくお吞みになられてよく食べられましたよ。えぇ、あの先生は男ですよ。今、そのお食べになっているドンブリで開高先生もお食べにならっしゃったんですよ。」
えぇ〜っ!!マジっすか?
感無量です・・。
開高さんに携わった人はみんなファンにさせてしまう魅力を持っていたのだ。
開高さんはこの宿がみんなに知れて味が堕落することを好まなかったらしいが、
あえて、今の状況から見て、今度は反対にこの味を守り存続する為に紹介したい。
ふるさとの宿 こばせ
是非。俺と開高さんのお墨付きです。(笑)

宿の高齢の白髪のご主人が返り際に色んな開高さんの話を聞かせてくれました。
いや〜、いい小旅行でした。
この宿の温かさが気に入りました。
そして先生、こんないい旅に誘って頂いてありがとうございました。
最後に一言。
拝啓 開高先生。
「確かに。」
投稿者:TERU