いらっしゃいませ。
こちらはuchi-cafeの旧館です。。
新館のほうへどうぞ。。。

since 2005.5.25
photo&sho by Tep-pei
2005/7/2
「ここでいいよ。ありがとう。またね。」
ほんとに明日にでも会うような感じで言った。
「あ、そうだ。」
彼女は麻のバックに手を入れると何かを探した。
「これこれ。あげる。沖縄で拾ってきたんだ。今日のお礼。」
それは、桜色した貝だった。
「いいの?ありがとう。お返しなんかないかな…。」
「いいよ、お返しなんて。・・そんなに言うなら、ゴーヤーマン、それちょうだい」
「これ?こんなんでいいなら。」
「うん、それがいい。」
彼女はそれを受け取ると、一度空にかざし、大事そうにバックにしまった。
「それじゃ、行くね」
何度も何度も振り返りながら、笑顔で手を振って、人通りの増えた街に消えていった。
「行っちゃったか…・」
貝殻にはまだ彼女のぬくもりが残っていた。
そっと耳に当てると沖縄の風の音がした。
車内にかすかに漂う残り香と、助手席に残されたお菓子がちょっと切なかった。
「どうすんだよ、こんなに…」
つぶやきながら、彼女の姿を思い出していた。
「帰るか…」
車をだそうとして、彼女の連絡先を聞いていないのに気が付いた。
でもそれで良かった。
また何処かで会えるような確信とも言えるものがあった。
たとえ会えなくてもいいような気もした。
もらった貝殻をゴーヤーマンがもとあったところに結びつけると、車を走らせた。
貝殻は揺れながら夕暮れ間近の光に照らされ虹色に光っていた。
少しのどが渇いていたのに気づき、車を止め缶コーヒーを買った。
そして一気に飲み干し、缶をゴミ箱に投げると、カランと音をたてて吸い込まれていった。
さあ、明日も頑張るか
そして、空を見上げ、すがすがしい気持ちで深呼吸をした。
何かまたいいことがありそうな空だった。
『完』
2002,5
ending music『桜』♪斉藤和義
(ALBUM「FIRE DOG」より)
桜の木にもたれかかり 長い夢を見てる
丘の上に誰かがいる 僕に手を振ってる
ほんの少し勇気を出して 僕は丘へ向かう
冰のような人の波に 少し流されても
長い夢の中で 何かを探している
それが見つかる時 夢から覚めること
僕は知ってる
桜の木にもたれかかり 長い夢を見てる
少し寒い春の夕暮れ 空に月が昇る
長い夢の中で 誰かを探している
それがあなたならば 夢が続くこと
僕は知ってる
桜の木に花が咲いて 空はとても綺麗
繰り返される 他愛のない夢は続いて行く
・・・・あとがき・・・・
いかがでしたでしょうか?
2002年の月、会津若松で運転中、まるで降りてきたかのようにすらすらと文章が湧いてきました。不思議な感じです。それにちょっと手を加えたものです。
きっと、もう書けないでしょう。
続編は?と言われるけど、この雰囲気が壊れてしまうと思うので、これはもうこれで完結です。
日常とはちょっと違った不思議な出逢い。
ちょっと勇気を出せば変わっていくんだ。
そんなことを自分自身に言いたかったのかもしれません。
こころに吹く爽やかな風、そんなものを感じてもらえたらうれしいです。

ところで、この小説を映画化するとしたら
キャストはどうしますか?
主人公
女子高生
音楽
皆さんのイメージで。。。

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2005/7/1
この夏。。。
爽やかな風を吹かせる。。。。
少女とカメラマンの物語。。。。
『桜色ノ空』
いよいよ明日完結!!
ふと出逢った女子高生と写真を撮る中での心あらわれるひと時。彼女との時間のなかで、心に吹き込む爽やかな風。次第に彼女の魅力に引き込まれていく。。。
いったいどんな結末が?!
「uchi-cafe的ぎゃらり」にて再放送決定!
乞う、ご期待!!
しなくてもいいです。。。

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2005/6/30
「行こうか。」
どれくらい時間が経ったろう。彼女が切り出した。
「ん?そうだね。帰るか。」
「んーっ。」
と彼女はのびをして、
「はあ、楽しかったー。」
と立ち上がった。
「そう?良かった。声をかけたはいいけどどういうふうに過ごそうか、不安だったよ。」
「ほんとに初めてなんだー。ふふふ。」
「そうだよ。俺も楽しかった。ありがとう」
すんなりお礼の言葉が出た。こんなすがすがしい「ありがとう」は、いつ以来言ってないだろうか。
「いいえ。どういたしまして。もうかえんなくちゃ。送ってくれる?さっきの所まででいいから」
「かしこまった。じゃいこうか」
エンジンをかけ、車はゆっくりと走り出した。
車の中では「島唄」が流れていた。
「おじさん、沖縄好きなの?」
「うん。5〜6年前かな。いろいろうまくいかなくてね、見つめ直すために、というか、逃避かな。一人旅してきたんだ。それではまったんだ。」
「それでゴーヤーマンか。納得。私も行ったことある。家族で。ツアーだったから観光地しか行ってないけどね。」
車は初めの場所に戻ってきた。
心なしか、行くときより早く感じた。
(つづく・・・)
次回、いよいよ最終回です!
みじかっ。

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2005/6/28
「車とめて。」
石畳の脇の雑草の生えた土手に車を停めた。
車から降りて、伸びをしながら、僕は辺りを見回した。
「おぉ、いい感じだ。」
彼女も車を降り、スカートのすそのしわを直した。
「ここ。ここ。ここが好きなんだ〜。
風情があるでしょ?
昔から好きでさ、自転車でよく来たんだ。
親に怒られて家出したときとか、友達と喧嘩したときとかね。
あそこにベンチがあるでしょ?あそこに座ってさ、川に飛んでくる白鳥とか、鬼ごっこしている男の子たちとか、イチャイチャしているカップルとか一日中見てるんだ。
何時間も。
日も暮れてコウモリが飛び始める頃に、お母さんが迎えに来るんだ。
それまでは来ないの。
いつもここにいること分かってたし、ここにいることで私が元気になるの知ってたから。小さいときからそうらしいの。
変な子だよね。
最近はあまり来なくなったけどね。
つらいことがあると来るんだ。」
そんな大切な所に連れてきてくれたことがうれしかった。
初対面の僕を。
「そうなんだ。たしかにいいところだね。なんか落ち着く。」
「わかる?うれしい。あまりここの良さ分かってくれる人いないから。ね、座ろう。」
「うん」
「お菓子食べる?ポテチでいい?」
「いいよ。」
多少苦労してポテトチップスの袋を開け、ベンチに置いて、彼女はひとつほおばった。
ばりばり。
「美味しい。やっぱポテトはのり塩だね。」
それから彼女はポテトチップスを食べながら、しばらく話をしていた。
中学時代、初めて出来た彼氏とここに来たとき雨が降ってきてびしょびしょになったこと、
その彼との別れ話もここだったこと、
その時桜が満開だったこと、
自転車で駆け抜けるとかごの荷物が飛び散りそうになること、
雪の日に大きい雪だるまを作ろうとして、頭を上げられずに寝たままにしたこと、
いろいろな話をほんとうに楽しそうにしていた。
僕は「うんうん」「それで」と相打ちをしながら、彼女の表情につられるように、心からわらったり、悲しい顔になったりした。
一通り話し終わると、しばらく二人とも黙って川を見ていた。
日も傾き、少し日ざしも弱くなってきていた。
彼女の横顔は透き通るようで、若さと憂いを合わせたような美しさを川に反射した夕陽がゆらゆら映していた。
「カメラ」
と思ったが、すぐそれは止めた。
その空気を壊したくなかった。
それに神々しいほどの美しさが、撮ってはいけないもののような気にさせていた。
そのまま、だまって座っていた。
(つづく・・・)

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2005/6/26
「ただいま。」
がちゃっ、
とドアが開き、ビニール袋にいっぱい買った彼女がもどってきた。
ばたんっ。
「そんなに買ってきたの?」
「ポテチ、キャラメルコーン、ね、これ知ってる?コロン。それから…」
袋の中のお菓子をガサガサといじりながら、彼女は一つ一つ説明した。
「まだあんの?そんなに食えないよ。」
「いいじゃん、たくさんあった方が。リッチな気分でさ、あっ、飲み物忘れた。」
かかかかか、ぶおん。
鍵をまわしエンジンをかけながら、半分腰を持ち上げ、ジーンズの後ろポケットから財布を出した。
「いいよ。いくらだった?」
「ん?いい、いい。今日はモデル楽しかったし、これからおいしい物ごちそうしてもらうし。」
「え?なんだよそれ。聞いてないぞ。」
ギアをドライブに入れアクセルをふかすと、車は精一杯の音を立てながら走りだした。
「言ってないモン。大丈夫大丈夫。吉牛で勘弁しとくよ。」
「まったく、しゃあないなあ。ところで、何処に行けばいいんだ。」
「別に。当てのない旅。どう、これ?」
「『どう、これ?』ってさ、さっきいいところ知ってるっていったじゃん。」
「うそうそ、人を簡単に信じちゃだめだめ。あっ、そこ右ね。」
「え?」
キキイッ。車は音を立てて曲がった。
「あぶないな、急に。」
「あはは、楽しいね。」
「あははじゃないよ…」
と言いながら、久しぶりに楽しい気分になっていた。
思えば、ここ何年かこんな気分は味わっていなかった。
忙しい毎日に追われ、風や山の緑や雲の形やそんなものを感じる暇などなかった。
いや、感じようともしていなかったのかもしれない。
曲がったそこは石畳の道だった。
両はじにはもう緑の葉が茂っている桜の木がならんでいた。
右側には川が流れ、鴨が気持ちよさそうに悠々と泳いでいた。
(つづく・・・)

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投稿者: tep_peiマスター
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2005/6/24
「私この曲好き。」
「ほう。懐かしいな。」
「昔の彼女ととかと聞いていたんでしょう?」
図星だった。
当時僕は親元をはなれ、一人暮らしを充分に堪能していた。人並みにサークルにも入り、そこで彼女と知り合った。18年目にして初めて出来た彼女だった。四年間つきあいながらも、就職やなんやの事情でやむなく別れたのだった。
今頃彼女はどうしてるだろうか・・・。
「やまーっ!」
突然、彼女は窓を開け、顔を出して叫んだ。
「わっ、びっくりした。なんだよ突然」
「だって陰気くさい顔してんだモン。見てみなよ山きれいだよ。おじさんもやってみなよ。やまーっ」
「恥ずかしいよ。みんな見てるよ。」
「気持ちいいからやってみなって。やまー」
「だからっ」
「そんな恥ずかしいなんて思ってたら、何にも出来ないよ。人生は一回しかないんだからさ。したいようにしなきゃ。」
自分なんかより大人かもしれなかった。
窓を半分くらい開けてみると、確かに風が心地よく、叫びたくなった。少し感傷的になっていた気分を癒すには十分だった。
「ね、きれいでしょ。叫びたくなるでしょ。つらいときには叫ぶのが一番。泣いて寝るのが二番。」
「つらいことなんてあるの?」
「そりゃあるよー。思春期だモン。あ、コンビニだ。よって。」
「はいよ。」
ほんと、話がころころ変わる。ウインカーを出し、駐車場に前からとめた。
「私が何か買ってくるよ。おじさんは座って待ってて。」
「おじさんじゃ…」
と言いかけたときには、もうそこにはいなかった。
「はやいな」
店の中を動き回っている彼女を見ながら、今日の出来事をふりかえってみた。
思えば不思議な日だった。二時間ばかり前に逢ったばかりだというのに、もうこうしてなんの違和感もなくすごしている。
昨日までの自分では考えられないことだった。
(・・・つづく)

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投稿者: tep_peiマスター
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2005/6/22
「どうぞ。汚れてるけど。」
助手席のカギを開けながら言った。
「ほんと、汚いねー。掃除ぐらいしなよ。だから彼女できないんだよ。」
車内を見渡しながら、彼女は乗り込んできた。
「うるさいなー。『そんなことないですよ』ぐらい言うモンだ。それに彼女がいないなんて一言も…」
「これ何?かわいい。」
聞いちゃいない。
「えっ、それ?それはゴーヤーマン。かわいいでしょ。」
「あっ、知ってる。沖縄のドラマのやつでしょ?」
「そうそう。はまっててさ、毎朝泣いてた。」
「ははは。マジで?笑える。」
「うるさいな。」
「ははは、実は私も泣いてた。ご飯食べながら。」
僕は、あはは、と笑いながら、シートベルトを締め、エンジンをかけた。昼時のまったりとしたラジオが流れてきた。
「ラジオでいい?テープ古いのしかないんだ。」
「何でもいいよ。ねっ、それよりお腹すかない?」
そう言えば朝から何も食べていなかった。
「ちょっとね。コンビニでもよろうか。」
「そういえば…。」
まだ名前を聞いていないことに気が付いた。
「名前聞いていなかった。」
「ヤマモトモエ。山カンムリに明るいって書いて、『もえ』。もえ、でいいよ。」
「萌か。いい名前だね。」
「そう?初めて言われた。やっぱテープ聞こうよ」
がちゃがちゃとテープをさがしなら、
「ほんと古いのしかないね。ていうか、今時CDもMDもない、オートロックでもない、エアコンも効かない車に乗ってる人もめずらしいね。」
「うるさいなー、貧乏なんだからしょうがないだろ。」
「これは?なにはいってるの?」
「どれ?」
テープを持っている彼女の手元に目をやった。
「ん?今また太もも見たでしょ〜、このすけべおやじ。」
「みてねぇって。テープをみたの!また、って一回も見てないし・・・」
さっきのぱんつを思いだしながら言った。
「むきになってるのがあやしい。どうでもいいけどさ、ちゃんと前向いて走ってよ。これからの大事な命あずけてんだからさ。」
「うるさいな。お前が、なんやかんや言うからだろ。もう。」
「おこんないおこんない。大人げないなー。これにしよう。1994夏。」
「それは、ミスチルとかはいってるやつだな。懐かしいなまだ学生の頃だ」
「私まだ小学生だったよ。」
ショックだった。ミスチルのイノセントワールドが流れてきた。
(つづく・・・)

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投稿者: tep_peiマスター
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2005/6/21
「ねっ、いまパンツ見たでしょ。」
「い、いや。見てないよ。」
見ていた。
「うそー。まっ減るモンじゃないし、いっか。」
そう言って、また歩き始めた。
僕は夢中でシャッターを切った。
木の下。花壇の前。道ばた。路地裏。田んぼ。ビルの前。
何処で撮っても絵になった。
明るい笑顔、時折見せる大人っぽい表情。芯の強さとはかなさを合わせ持った彼女。
声を出すのも忘れ、ただただひたすらシャッターを押した。
気が付くと一時間が経っていた。
「ありがとう。いいのが撮れたと思うよ。ありがとう。」
「そう言ってもらうと、うれしいね。だけど、ちょっと心配。あんなのでよかった?」
「もちろん。」
「ねえ、いつもこうやって女子高生撮ってんの?」
「いや。今日が初めてだよ。いつもは女子高生どころか、物しか撮らない。」
「ふーん。そんな風にみえないけどなー。遊んでそうに見える。」
首をちょこっと傾けて、鑑定するかのように僕を見ながら言った。
「それは心外だ。」
「うそうそ。真面目そうだよ。じゃなきゃ、写真のモデルなんて引き受けるわけないじゃん。こう見えても人を見る眼は自信があるんだから。」
もてあそばれているような感覚を覚えながら、まんざら嫌な気もしなかった。
「おじさん、今から時間ある?」
「おじさんって。まだ二十代だ。」
「後半でしょ。おじさんだよ。暇ならさ、どこかドライブしない?」
「別に用事もないけど…。いいのか?知らない人についていって。」
「もう充分ついてきてるじゃん。行こうよ、いい天気だしさ。」
「ううん。いっか。一期一会だ。」
「イチゴイチエ?なんだかよくわかんないけど。じゃ決まりっ。私いいとこしってんだ。」
このまま別れてしまうのは、惜しい気がしていたので、彼女の誘いはワタリニフネだった。
(つづく・・・)

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投稿者: マスターtep-pei
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2005/6/18
「写真、撮らせてもらってもいいかな?」
僕が写真を撮るのに、他人に声をかけたのはそれが初めてだった。
幼い頃から引っ込み思案だった僕は、知らない人が来るとすぐ母親の後ろにかくれてしまうような子だった。
大人になってもそれはあまり改善せず、大勢の人の前に出るとうまくしゃべれなくなってしまい、手に汗をかき、どもってしまうことがよくあった。
知らない人に声をかけるなんて思いもよらないことだった。
ましてや女子高生になんて…。
しかし、彼女にはそうさせてしまう何かがあった。
「いいよ。」
スカートの裾を「ぱんっ、ぱんっ」とはたきながら、彼女は立ち上がった。
まるで、幼なじみか、親戚のお兄さんに声をかけられたように自然だった。
声をかけておきながら、僕は多少面食らった。
空は青く、いつもより暖かい気候が山々の木々を水彩色に染めていた。
「どこで撮るの?」
「そうだな…」
全く考えていなかった。
とっさに声をかけてしまっていたので、イメージも何もなかった。
ただ彼女をカメラに収めたかった。
「じゃ、とりあえず、そこの壁の前に立ってみて。」
スーパーの脇の油に汚れた壁の前に彼女を立たせて、ファインダーを覗いた。
「ね、どんなポーズを取ればいいの?あまり撮られたことないから、どんな顔していいかわかんないよ。」
照れ笑いしながらそう言った。
「普通でいいよ」
「普通が一番難しい」
そうかもしれなかった。
「普通」。
何が普通か。
そんなものないのかもしれなかった。
ただありのままを撮りたかった。
「じゃ、歩ってみてくれる?」
「こう?」
歩くと、春の風にスカートがひらりと舞った。
(つづく・・・)

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