2021/4/3

5511:アサス城  

 今日も暖かい一日であった。国立市にある顧問先を訪問した帰りに、少し寄り道をした。国立市にある名曲喫茶「無言歌」に立ち寄ったのである。

 この店を教えてくれたのは国立市にお住まいのグールドさんである。「名曲喫茶って今でも経営が成り立つのであろうか・・・」と思いながら初めて立ち寄ったのは、今年の2月であった。

 その時よりも季節は移ろい、随分と暖かくなった。上着すらいらないと感じられるほどである。桜も満開を過ぎて「葉桜」になりつつある。

 依然「コロナ禍」は続いている。最近は再び感染者数が増えている。変異株なども出てきて、ワクチンの接種率が飛躍的に増えていかない限り、収束は難しそうな状況である。

 そんな世間の騒々しさとは無縁の世界の中に「無言歌」はあった。「名曲喫茶に行くなら、平日の昼下がりが良い・・・」と勝手に思いながら、前回座った席と同じ席に座った。

 ここは食事としてカレーを出す。そのカレーの味は一つの売りのようであるが、昼食はすでに済ませているので、コーヒーのみを頼んだ。

 私にとって「無言歌」の魅力の一つは、YAMAHA CA-V1である。 YAMAHA CA-V1は1976年に発売されたプリメインアンプである。

 決して高級機ではない。その当時の定価は33,000円であったので、どちらかというとエントリークラスとしての位置づけであった。

 CA-V1の発売時、私は中学1年生であった。地元の「上新電機」の店舗でCA-V1を見かけて、その美しく魅惑的なデザインに心を奪われた。

 この当時の流行りであった出力レベルメーターが備わっていて、さらにラックに設置する際に手で掴むハンドルも両サイドの備わっていた。

 そのデザインはYAMAHAらしく実によくまとまっていた。さらに色が精悍なブラックで、その色合いとデザインが絡み合って、多感な頃の私の心を掴んだのである。

 そんな「初恋の人」ともいえるCA-V1が45年の時の流れを経て、私の目の前に現れた。先日「無言歌」の店内でCA-V1を見かけた時には一瞬息をのんだ。

 「無言歌」のオーディオ機器は、拘っているのか拘っていないのかよくわからないけれども、私のような年代の者には、実に魅惑的に映る。

 レコードプレーヤは、プリメインアンプと同じくYAMAHAのYP-400である。こちらもその時代のYAMAHAデザインの粋を感じさせてくれるが、高級機という位置づけではない。

 そして、スピーカーはPIONEERである。型番はCS-E700。サランネットに覆われていてユニットの様子はわからないが、3ウェイスピーカーである。

 密閉型のエンクロージャーを持ち天然木を活かしたウォールナットのオイル仕上げである。その色合いと姿かたちは穏やかで、店内のナチュラルな雰囲気にマッチしている。

 オーディオの音は得に耳を傾けるほどに素晴らしものではないが、1970年代に発売されたこれらの古い機器が醸し出す雰囲気が、心を癒してくれる。

 「本日のコーヒー」であるグァテマラを飲みながらしばしの時を過ごした。かかっていたレコードはチェンバロであった。
 
 ラモーの「クラブサン曲集 第1番」であった。演奏者はスコット・ロス。レーベルはフランスSTILである。

 録音されたのは1975年。フランスモンペリエ近郊のアサス城(スコット・ロスが実際に住んでいた城)での録音である。

 その精彩な音の流れに耳を傾けながら、濃厚な味わいのコーヒーを味わった。そしてYAHAMA CA-V1のオレンジ色に輝くパワーメータが小刻みに動くのを目にしていると、春の空気が実際のものよりもより濃厚なものに変わっていくような気がした。

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