2019/5/24

4821:試聴室  

 車でその店には向かった。八王子市の外れにあるヴィンテージ・オーディオショップは駅から遠いので、ほとんどの来客者は車で来るはずである。

 2階建ての店舗の脇には3台ほど車が止められるスペースがある。そこに車を停めて、店に入った。1階には様々な古いオーディオ機器が所狭しと並べられている。

 店内に入るとそういった年老いたオーディオ機器から発せられる独特の匂いが感じられた。2階は試聴室になっている。

 「用意してありますので、2階へどうぞ・・・」年の頃60台後半と思しき店主は笑顔で出迎えてくれて、2階の試聴室へ案内してくれた。

 実はこの店の2階の試聴室に入るのは2度目である。最初に訪れたのは5年前のことであった。その時はタンノイのコーナーカンタベリーを試聴した。

 そのコーナーカンタベリーには12インチのモニターシルバーが搭載されていた。英国オリジナルキャビネットで値段はペアで168万円であった。

 その当時はタンノイ チャトワースを使用していた。同じく12インチであったがモニターゴールドが搭載されたスピーカーであった。

 「これは出物・・・抑えておくべきか・・・・」ととっさに判断して連絡を取った。そしてこの2階の試聴室で聴かせてもらった。

 しかし、ほぼ同時期に現在我が家のリスニングルームに鎮座しているGRFが見つかった。15インチのモニターシルバーが搭載されていてキャビネットは英国オリジナル。値段はコーナーカンタベリーの倍であった。

 結局、文化財的な価値すら見いだせるGRFを選択した。しかし、我が家の8畳ほどの空間しかない狭いリスニングルームには、12インチのモニターシルバーが搭載されたコーナーカンタベリーの方が丁度良かったのかもしれない、と思うことは今でもある。

 その時以来の2階の試聴室である。試聴室の広さは15畳ほどであろうか。形はほぼ正方形である。黒い革の3人掛けソファーが置かれ部屋の両コーナーにはモニターレッドが搭載されているコーナーランカスターがセットされていた。

 リスニングポイントから見て右手に置かれているオーディオラックには、今日の試聴の目的である2台のマランツ モデル8Bの姿があった。さらにマランツ モデル7の姿もあり、レコードプレーヤはトーレンスTD124が置かれていた。その横にはCDプレーヤーがあった。フィリップス製の古めのCDプレーヤーのようであった。

 リスニングポイントの背後の壁には他のスピーカーも2セット置いてあった。それらは向かい合わせになって次なる出番を待ているかのようであった。

 店主が淹れてくれた珈琲を飲みながら、しばしの雑談タイムを過ごした。2台のモデル8Bは、価格が随分と違う。1台は35万円で妥当な価格であるが、もう1台は45万円であった。モデル8Bで45万円という値付けはかなり高い。

 その経緯なども店主は説明してくれた。「こちらはコンディションが素晴らしく、フルレストアも腕の良い方に頼んであります。そのフルレストア費用だけでも差額分くらいにはなるんです・・・」とのことであった。

 マランツ モデル7は2系統の出力端子がありその両方からRCAケーブルが伸びて2台のモデル8Bに接続されていた。

 コーナーランカスターに繋がっているスピーカーコードは、35万円値付けのモデル8Bに繋がっていた。

 まずはこちらのモデル8B経由で聴いてみることになった。「CDですこし聴いてアナログに変えてみましょう・・・クラシックでしたよね・・・」と店主は言って、CDをケースから取り出した。

 フィリップスのCDプレーヤーの型番を確認するとLHH700であった。この時代のフィリップスのCDプレーヤーは独特の質感のグレーの色合いである。古いオーディオ機器に中にあってもしっくりと目に馴染む。

 かかったのは諏訪内晶子のヴァイオリン小品集であった。チャイコフスキーの「懐かしい土地の思い出」が流れはじめた。この曲は3つの小品から構成されている。「瞑想曲」、「スケルツォ」そして「メロディ」・・・3曲を通して聴いた。

 フィリップス、マランツ、タンノイの連合体は、穏やかで滑らかな質感の音を聴かせてくれた。それは平日の昼間にじっくりと耳を傾けるにはうってつけかと思えるほどにまどろみ感に満ちていて、時間の流れをひと時ではあっても緩やかにしてくれた。

 続いてアナログでも聴いた。トーレンスTD124にはSME製のシルバーに鈍く光るアームが取り付けられていて、その先端にはSPUが装着されていた。



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