2021/11/30

5752:南ベンチ  

 6両編成のトレインは岩蔵街道を走っていった。体は「ややおも」といった印象であった。「今日はあまり無理をしない方がいいかも・・・」と思いながら、クランクを回した。

 圏央道の青梅インターの下をクランク状に潜っていき、復路で休憩するファミリーマート海田岩蔵街道店を左手にやり過ごした。

 そして「青梅錬成道場」と書かれた大きな看板が脇に立っている交差点まで軽く上っていき、そこから先は笹仁田峠の下りがしばし続いた。

 下り切ったところで、「岩蔵温泉郷」を抜ける脇道に向けて右折した。小さな温泉宿が幾つかある「岩蔵温泉郷」を抜けていくと県道にぶつかる。その交差点を右折した。さらに次の交差点を左折して、「東京バーディークラブ」の裏手にあたる脇道を走った。

 この脇道には「日陰林通り」という名称がついている。その名の通り日陰になる場所もある。そこでは空気がさらに冷え冷えとしていた。

 「成木1丁目」の交差点を右折して、休憩ポイントであるファミリーマート飯能上畑店に向かった。その手前には「蓮華庵」という名称の寺院があり、白壁が連なっていた。

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 ファミリーマート飯能上畑店に到着した。ここには店の脇にサイクルラックが設置してある。そこにロードバイクをかけた。

 店の南側には幾つかのベンチが並んでいる。冬にはこのベンチがありがたい。今日は陽光が降り注いでいるので、そのありがたみはさらに増すはずである。

 補給食として選択したのは、「全粒粉サンド サラダチキンとたまご」。全粒粉入りパンを使っていて、優し気な味わいである。サラダチキンのスライス、チーズ、ゆで卵、紫キャベツなどが挟んであり。スパイシーな味わいのソースがかかっていた。

 南側に面したベンチに座りながらの雑談タイムは冬ライドの楽しみでもある。皆、縁側で日向ぼっこをする猫の心地よさを感じながら、しばしの時間を過ごした。

 しかし、いつまでもぬくぬくとしているわけにもいかない。コンビニ休憩を切り上げて先へ進んだ。

 まずは山王峠を越えていった。そして山伏峠に向かう場合には左折する交差点を右折して県道70号を走っていった。

 しばし走ったところで「ここを左折です・・・すぐを右折して・・・」とメンバーから指示が出た。その指示通りにトレインは走った。

 「国道299号の旧道に出るまでには、上りが少しある・・・」との説明を事前に受けていた。ややあって道は上り始めた。結構な斜度の坂である。「あれ・・・こんな急な坂を上るの・・・」と思いながら急に重くなったクランクを回した。

2021/11/29

5751:冬仕様  

 昨日の土曜日から季節が急に進んだ。一気に「冬」に突入したようである。それは日曜日も続いた。天気予報の最低気温の予想は5度であった。

 「真冬」ではないが、しっかりと「冬」の気候である。朝の6時に起きだして、サイクルウェアをどうするかしばし思案した。

 昼には気温は15度ほどまで上がるようである。しかし、朝の走り出しはかなり寒いはず。ということでサイクルウェアは冬用の厚手の生地のものを選択した。グローブも冬用のものにした。

 「これなら、多少の寒さなら大丈夫・・・」と一安心。朝食を摂りながら「はやく起きた朝は・・・」を最初から最後まで観た。

 7時になったので、LOOK 785 HUEZ RSに跨って、自宅を後にした。空気は冷たく「やっぱりね・・・」と思いながら走った。

 多摩湖サイクリングロードを西から東に向かった。東に佇む太陽の角度は冬角度である。2週間前に走った時よりもさらに低くなっていた。 

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 陽光の照射角度が低いと、視界にダイレクトに光が入ってくるので、眩しい。視界が光で覆われてしまうので、気をつけながらゆっくりと走った。

 集合場所であるバイクルプラザに着いた。今日の参加者は6名であった。そのロードバイクの内訳は、ORBEA、COLNAGO、LOOKがそれぞれ2台づつであった。

 今日の目的地について、話し合った。幾つかの候補のなかから選択されたのは「顔振峠」である。私がかってに「激坂四天王」と呼んでいる、激坂系のコースの一つである。ちなみに「激坂四天王」は、顔振峠、和田峠、根の権現、そして風張林道の四つである。

 普段「顔振峠」に向かうには国道299号経由で走るが、今日はいつもと違って、原市場経由で向かうことになった。

 6台のロードバイクは隊列を形成して走り始めた。空は真っ青で雲一つなかった。空気は冷たかった。走り始めて多摩湖サイクリングロードを抜け、旧青梅街道に入ってもなかなか体は暖まらなかった。

 旧青梅街道を西へ西へと走っていて、岩蔵街道との交差点を右折した。岩蔵街道に入ると周囲が開けてくる。走っていく向こう側には澄んだ青空がすっきりと広がっていた。

2021/11/28

5750:エアサス  

 30分ほどディーラーの建物の中で待っていた。その間、スマホの画面を眺めていた。オーディオ機器の中古サイトなどを見ていたが、代わり映えしない感じであった。

 30分ほど経過すると、先ほど対応してくれたサービス担当のスタッフがやってきて、確認できた状況を報告してくれた。

 「リアのサスペンションはエアサスなんですが、エアを送るポンプが故障してエアをサスペンションに送れなくなっています。すぐにお預かりして修理した方がいいのですが、生憎代車が今全て出払っていて、12月6日にならないと代車がご用意できないんです・・・」とのことであった。

 「12月6日ですか・・・まだ随分と先ですね・・・」と落胆とした。「それまでは、この酷いリアサスのまま乗り続けることになるのか・・・」と思いながらも「しょうがないですね・・・では、12月6日に車を持ってきます・・・」と回答した。

 念のために「車が動かなくなるということはないですよね・・・?」と質問した。「それはないです・・・乗り味が随分と悪いというだけです・・・」との返答であった。

 「12月6日か・・・まだ10日以上先だな・・・それまでこの酷い乗り味の車に乗って過ごすのか・・・なるべく車には乗らないようにしたいけど・・・仕事で車は使うからな・・・我慢するしかないか・・・」と諦めた。ディーラーの建物を出て、車に戻った。

 リアだけが下がり切ったBMW 523i Touring・・・とてもバランスが悪く思われた。運転席に乗り込んで、自宅までの短い道のりを走った。

 ゆっくりとしたスピードで走った。路面にうねりがあると気分が悪くなるような酷い乗り味である。「くそっ・・・うんざりするな・・・」と心の中で悪態をつきながら、自宅に辿り着いた。

 妻と子供に「車が壊れた・・・」と告げた。「もう、買い替えないといけないかも・・・」と話すと「じゃあ、今度はもっと安い車にしたら・・・」と妻が反応した。

 「そうだね・・・来年の9月に買い替えようと思っていたけど・・・少し予定を早めようかな・・・次はBMWはやめよう・・・前のメルセデスも10万キロを超えたあたりでエンジンがいかれてしまったし・・・今度はアウディかフォルクスワーゲンにしようかな・・・」そんなことを独り言のように呟いた。

 妄想が頭の中に渦巻いた。「アウディならA6 AvantかA4 Avant・・・フォルクスワーゲンアならアルテオン シューティングブレークといったところか・・・一番値段が安いのはアルテオン シューティングブレークか・・・今度試乗してみるか・・・」

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 とりあえず12月6日までは、酷い乗り味を我慢しながら車に乗ることになる。エアのないエアサスは、本当に酷い具合である。「次はエアサスではない車にしよう・・・」そう心に決めた。

2021/11/27

5749:リアサス  

 コインパーキングを出てすぐに車の挙動がおかしいことに気づいた。「あれっ・・・なんだ・・・どうした・・・?」という感じで頭の中は「?」で一杯になった。

 リアのサスペンションの具合が明らかにおかしかった。リアが路面の凹凸に応じて跳ねるのである。路面がうねっていると車がびょんびょんと跳ねる。

 「リアのサスペンションがいかれたか・・・先程までは問題なかったのに・・・」リアのサスペンションに何らかのトラブルが生じていることは明らかであった。

 「どうしよう・・・とにかくこのまま走っていって、ディーラ−に駆け込むしかないか・・・JAFを呼ぶほどではない・・・」と思い、リアが跳ねる非常に気持ちが悪い乗り味を我慢しながら、車を走らせた。

 BMW 523i Touringは、走行モードを3パターンから選択できる。いつもは「コンフォート」にしてある。

 試しに「エコ」に換えてみた。エンジンパワーは抑えられ、ダンパーの設定も多少変わるはずである。リアのサスペンションに関しては変化はなかった。

 さらに「スポーツ」に走行モードを変えても、エンジンの回転数が上がるだけで、リアサスペンションの不具合には影響はなかった。

 改めて車の姿勢を確かめてみると、リアが下がっているように感じられた。どうやらリアだけシャコタン状態になっているようであった。

 「さすがに走行距離が10万kmを超えてくると、こういったトラブルも出てくるよな・・・」と少し落胆しながら、ディーラーに向かった。

 ようやくという感じでディーラーに着いた。ディーラーの駐車場に到着すると、若い男性営業マンが出てきて車の駐車を誘導してくれた。

 要件を伝えた。するとサービス担当のスタッフが出てきて、車を確認してくれた。「リアのサスペンションの具合が急におかしくなって、車が跳ねるんです・・・」と伝えると、「リアが下がり切ってますね・・・チェックしてみます・・・」ということになり、私はディーラーの建物の中で待つことになった。

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 案内されたテーブル席に座って、運ばれてきたアイスコーヒーを飲みながらしばし待った。すぐ斜め前には展示されている4シリーズクーペの後ろ姿があった。

 色は白で、クーペらしい流麗な後ろ姿である。「いまだにこういったスポーティーなクーペモデルに対する需要はあるのであろうか・・・?SUV全盛の時代だけれど・・・」と思いながら、その後姿をぼんやりと眺めていた。

2021/11/26

5748:3楽章  

 ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲した数多くのピアノ協奏曲のなかにおいてもひときわ輝き、古典派ピアノ協奏曲の最高峰に位置する一つとされる。

 第1楽章は、型どおりの古典派の協奏ソナタ形式である。オーケストラが提示した主題をピアノが繰り返す明快な形式美が気持ちをすっきりとさせてくれる。展開部では、提示部の主題ではなく新しく導入された主題が使われる。

 ピアノ協奏曲第23番は、SONY CF-2580から静かに流れた。店内には私のほかに客が一人いた。60代後半と思しき男性が二人掛けのテーブル席に静かに座っていた。

 どうやら現役世代ではないようである。なのでもはや時間に追われることはない。時間はゆっくりと淡白に流れ去っていく。「潤沢にある時間をどうやって過ごせばいいのか・・・」その解答の一つが、この「Mimizuku」であったようである。

 第2楽章は、モーツァルトに珍しい嬰ヘ短調がとられている。シチリアーノのリズムに基づいた、静かでメランコリックな旋律が情感たっぷりに歌われる。物思いに沈んだように静かで短い楽章である。

 いつもカンター席で見かける「ゆみちゃん」の姿はなかった。新宿区のIT企業に勤めている彼女は、緊急事態宣言が解除された後も原則テレワークである。

 テレワークの時には午前中は自宅で、午後からは気分を変えるためにこの店のカウンター席に場所を移して仕事をすることが多かった。

 今日は週に1回程度と言っていた出勤日であったのであろうか、あるいはWEB会議の予定が入っていたのかもしれない。

 第3楽章は、ピアノの軽快なソロで始まる。風向きはさっと変わる。南風になったのである。ロンド主題が4回現れる間に、魅力的な副主題がいくつも用いられているのが、この楽章の魅力である。

 最近は暗くなるのが早い。時刻は4時半を過ぎた。窓の外の明るさが急速に失われていくに従って、店内の白熱灯のオレンジ色が濃くなっていく。白熱灯は穏やかな色合いで、それを目にする人の心を落ち着いたものに変えていってくれる。

 ブレンドコーヒーは既に飲み終えた。モーツァルトのピアノ協奏曲第23番も終わった。やがてカセットテープはその動きを止めた。ややあって下に押し込まれていたCF-2580のPLAYボタンがカチッと音をさせて元に戻った。

 会計を済ませて店の外に出た。陽が落ちると気温がぐっと下がる。冷やかな空気のなか、コインパーキングまで歩いていき、車に乗り込んだ。

 BMW 523i Touringは納車から5年が経過し、走行距離も10万kmを超えた。そんな長い付き合いとなった「相棒」のエンジンをかけて、コインパーキングから車を出した。異変を感じたのは、コインパーキングを出てからすぐであった。

2021/11/25

5747:CF-2580  

 週に1,2回ほどの頻度で足を運ぶ喫茶店がある。中野坂上にひっそりと佇む喫茶店「Mimizuku」である。

 とても古い5階建てのビルの1階にその店はある。同じビルの4階に「オーディオショップ・グレン」があり、「オーディオショップ・グレン」に立ち寄った際にふらっと入ったのが、この喫茶店に通うようになったきっかけである。

 もともとは夫婦で営まれていたようであるが、私が通うようになった頃にはすでにご主人は亡くなっていて、奥さんが一人で切り盛りしていた。

 カウンター席が4席、4人掛けのテーブル席が二つ、そして2人掛けのテーブル席が一つのみという小さなお店である。

 いつもカウンター席に座るが、女主人は寡黙であり、季節の挨拶をするぐらいで長く会話するということはない。珈琲を飲んで30分ほどで店を出ることが多い。

 時代に取り残された感のある小さな喫茶店であるが、ここのカウンター席に座って珈琲を飲んでいると不思議と心が落ち着く。

 時代の先端を行くお洒落な喫茶店とは全く違い、「取り残された」あるいは「誰からも顧みられることがない」といった斜陽感が、人生の最終楽章を迎えつつある私には、妙に心地いいものがあるのであろうか・・・

 一般的な喫茶店のようにBGMは流されていない。カウンターにはSONY製の古いラジカセが置かれていて、その脇にはミュージックテープが入ったのボックスが置かれている。カウンター席に座った客がそのなかから選んで、ラジカセに入れて再生すると、約20分間音楽が静かに流れる。テープの片面が終わると、音楽も止む。

 ラジカセもミュージックテープも亡くなったご主人の遺品のようである。ラジカセは3台あるようで、いずれもSONY製で1970年代の製品である。時折入れ替わる。今日は、「CF-2580」が置かれていた。

 「CF-2580」は1974年に発売された。ステレオラジカセとしては初期のモデルで、この時代のSONYらしくバランスの取れたシンプルデザインである。

 この「CF-2580」の特徴としては、「4スピーカ MATRIX SOUND ONE POINT STEREO」という機能がついていることがあげられる。STEREO/MONO切り替えスイッチをSTEREO側に切り替えると普通のステレオで聴くより音が広がり、サラウンド効果が増すという機能である。

 1970年代、ラジカセは電気製品の花形であった。1974年というと私は小学5年生、地元の上新電機の2階で買えるはずもない、こういったラジカセを飽きることなく眺めていた。煌びやかラジカセは見ているだけで、小さな男の子にひと時の夢を見させてくれたのである。

 コーヒーを飲みながら、ミュージックテープが入ったボックスを手元に引き寄せて、その中身を確認した。

 亡くなったご主人のミュージックテープのコレクションは数百本あるようで、ボックスの中は毎回違う。ジャンルは様々、クラシック、ジャズ、ロック、ポピュラーから歌謡曲まである。

 そういえば、昭和の時代、駅前にあった小さなレコード屋さんにはレコード棚とは別の場所にミュージックテープの棚があった記憶がある。

 ボックスのなかから1本のミュージックテープを取り出した。モーツァルトのピアノ協奏曲第23番と第19番が収録されているものであった。ピアノはマウリツィオ・ポリーニで共演はカール・ベーム指揮ウィーン・フィルである。

 そのA面を「CF-2580」にセットした。A面にはピアノ協奏曲第23番が入っている。ピアノ協奏曲第23番は、第24番とともに、1786年に3回開かれたモーツァルトの予約音楽会のために作曲された。モーツァルトのピアノ協奏曲には名曲が多いが、個人的にはこの23番が一番好きである。

 「CF-2580」の四角いPLAYボタンを下に押し込んだ。かちっという硬質感のある音がしてから、カセットテープがするすると回転し始める音が静かに響いた。

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2021/11/24

5746:予想CG  

 BMW 4シリーズの極端な縦長キドニーグリルは、やはり物議を醸した。声を上げる人の多くは批判的である。

 この縦長キドニーグリルは、3シリーズベースのクーペモデルを展開する4シリーズだから、敢えて冒険をして採用されたものであり、販売数の多い基幹モデルには採用されない可能性が高いであろう。

 その4シリーズの縦長キドニーグリル、私もインターネットで最初にその写真を見かけた時には「こうくるか・・・どうなんだろう・・・」と、やはり当初は拒否反応の方が大きかったが、先日ディーラーの展示車を見た時には、「これはこれで良いかも・・・実車は意外とかっこいいな・・・」と意見を改めた。

 どちらかいうと保守的なイメージの強いBMWであるが、時にアグレッシブなフルモデルチェンジを行う。

 過去にはクリス・バングルがデザイン責任者になっての初めての作品となった第4世代の7シリーズも物議を醸したモデルであった。

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 今改めて見てみると、それほどアバンギャルドには見えないが、その当時は「美は乱調にあり・・・」といったその造形に結構驚いた。

 そのアバンギャルドさは物議を醸し、やはり批判的な意見の方が多かった。私も当初は「これはないんじゃない・・・」と思ったが、時間の経過とともに「この灰汁っぽさが、病みつきになるかも・・・」と意見を改め、支持派に回った。

 さて、かつて物議を醸したこともあるBMWの旗艦である7シリーズの次なるモデルの予想CGがインターネットに載っていた。

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 この予想CGを見る限り、4シリーズで採用された縦長のキドニーグリルは採用されないようであるが、ヘッドライトの形状が大きく変化している。

 7シリーズは、1977年から発売されている。現行型は第6世代であり、予想CGが伝える次期型は第7世代となる。

 第7世代の7シリーズの注目ポイントは、上下二段スプリットヘッドライトである。上部LEDストライプはデイタイムランニングライトとインジケーターの組み合わせとして機能し、下部はメインヘッドライトユニットとなる。

 あくまで予想CGであるので、実際のデザインがどうなるのかは、まだ未確定ではあるが、これに近いデザインで発売されたなら、やはり物議を醸すであろう。

 私の第一印象は「う〜ん・・・かっこいいとは思えないけど・・・」といったものであった。これもまた、過去の例のように時間の経過とともに受け入れる心境になるのであろうか・・・

2021/11/23

5745:考える葦  

 「Reed」は「リード」と読む。綴りは「Reed」であって、「Read」(読む)ではない。「Reed」を辞書でひいてみると「葦」とあった。別に「楽器のリード(舌)」ともあった。

 「葦」という言葉を見て、反射的に「人間は考える葦である・・・」というパスカルの「パンセ」の中の言葉を思い出した。

 「Reed」はリトアニアのメーカーである。リトアニアは第2次世界大戦後ソビエト連邦に組み込まれ、ソビエト連邦崩壊後の1990年に独立を獲得した国である。

 リトアニアという国も「Reed」というメーカーについても、私は全く知識がなかった。しかし、そのメーカー作る精緻を極めたレコードプレーヤーとトーンアームは、その存在感が半端なかった。
 
 Hさんのリスニングルームに鎮座するレコードプレーヤーは「Muse 3C」。ベルトドライブとフリクションドライブを簡単に変えることができる画期的な構造を持ち、ダブルアーム仕様である。

 2本のアームはどちらも「5T」。「ターレスの原理」に基づいた構造を持ち、アームの位置と動きをレーザー光とその専用の受光部によって制御、駆動するという革新的な特徴を持つ高精度アームである。

 片方の「5T」にはDSオーディオのグランドマスターが、もう片方のアームにはEMTのXSD15LZが装着されていた。

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 ReedのレコードプレーヤはPSDの大山さんが製作したH鋼と美しい表面仕上げの木材とががっしりと組み合わされた専用のラックにセットされていた。このラックの2段目と3段目には、EMM LabsとMola Molaのフォノイコライザーアンプが設置されている。

 「もうなんだか眺めているだけでいい・・・」と思ってしまう。下世話な話になるが、このアナログセットだけで1,000万円をはるかにに超える価格である。

 「German Physiks ミニ例会」の後半はアナログタイムとなった。まずかかったのが、デュプレのチェロによるドボルザークのチェロ協奏曲であった。

 グランドマスターで聴き、さらにXSD15LZでも聴いた。どちらも4WDでなおかつサスペンションの設定を「SPORTS」モードに設定したAudiのように、ガシッと路面を捉える力を持ち、エンジンのパワーも余裕綽綽という印象であった。

 透明感ではグランドマスター、情感に訴える力ではXSD15LZが勝っているという感じで、二つのカートリッジがある意味合いが深く感じられた。

 その後も魅力的なレコード演奏が続いた。その中に同じくデュプレのチェロによるベートーベンのチェロソナタのレコードがあった。ピアノ伴奏はバレンボイムである。

 叙情性が豊かで流麗な美しさ溢れる音楽が壮麗と言えるほどに響いた。その俊敏さ、力強さ、そして繊細さは目を見張らせるものがあった。

 アナログタイムの白眉は間違いなくこの1枚であった。その後デュプレを襲う病魔の予言とも思えてしまう悲劇的なピアノとチェロの響きは、真に胸を打つ。

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 私も思わず頭の中で「来年BMWの5シリーズを買い替えるつもりだったけど、それをあきらめたらReedのレコードプレーヤーとアームが買えるな・・・」そんな妄想で頭のなかを一杯にしながら、「German Physiks ミニ例会」の終わりを迎えた。

2021/11/22

5744:システム400  

 コロナ禍が始まるまでは毎年1回開催されていた「German Physiks 友の会」は、昨年と今年は中止となった。

 ワクチンの効果か、日本では新型コロナの感染者数が最近大きく減少した。東京都でも1日の新規感染者数が20名ほどまでに減ってきた。

 そこで大人数を集める「友の会」ではなく、参加者をぐっと減らし「German Physiks ミニ例会」が10月、11月、12月の3回に分けて行われることになった。

 第1回の「ミニ例会」はすでに先月執り行われた。そして今日第2回の「ミニ例会」が行われた。その「ミニ例会」に参加させてもらった。参加者は全員で6名であった。

 場所は、広さが50畳ほどはあろうかと推測される広く豪華なHさんのリスニングルームである。その広さ、構造、内装、どれをとっても非日常というべきか、現実的な枠を一切取り払った豪華さに溢れている。

 リスニングルームの製作は2年ほど前とのこと、GRFさんの部屋を参考にして、PSDの大山さんが施工管理をしたもので、その徹底したこだわりに真のマニア魂を感じた。

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 そして、この広く豪華なリスニングルームの空間を埋めるようにジャーマンフィジックスのDDDユニットやPSDのサブウーファーが、複雑に陣形を組んでいた。

 特に目を引くのが、前方のスピーカーシステムである。PSDのサブウーファーの上にDDDユニットが三つ連なっているのである。トルバドール80とトロバドール40が合体したそれは「120」と命名されていた。

 この「120」・・・単に80+40ではないことは、後ほど聴いた音で証明された。後方にはさらに巨大なPSDのサブウーファーの上に「80」がそれぞれ乗っている。

 つまりDDDユニットの数は全部で10個ということになる。「120+120+80+80=400・・・『システム400』ということになるのであろうか・・・」頭の中に数字が飛び交った。

 「システム400」を駆動するのは是枝重治氏が設計製造した数多くの真空管アンプである。デジタルの送り出しはメトロノームのセパレート。そしてアナログはReedというリトアニアのメーカーの高精度なレコードプレーヤー。ダブルアーム使用でアームもReed製。

 リトアニアという国のことも、Reedというメーカのことも、残念ながら私は全く知らない。しかし、その製品が持つただならぬ存在感は視線を惹きつけるのに十二分であった。

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 部屋の豪華さと、その部屋に居並ぶオーディオ機器の精悍なオーラに圧倒されながら椅子に座った。第2回「German Physiks ミニ例会」は、ショスタコーヴィチの交響曲第15番で始まった。

 音に集中しようと目を閉じた。少し経過したところでGRFさんがおもむろに立ち上がって一旦CDの演奏を止めて、リタ・シュトライヒのソプラノによるモーツァルトの「すみれ」に曲を変えた。

 そして「システム400」のただなかに入っていき、その音に耳を傾けながらDDDユニットの位置を微調整した。とんとんと手で軽く叩いた。動いたのは1,2ミリ程度であろうか・・・

 音の焦点が定まった。すっと何かが静かになった。音を遮るものが消え去ったかのように音にストレスが全くかからなくなった。

 再度、ショスタコーヴィチの交響曲第15番がかかった。先ほどとは別の世界が広がった。「システム400」の後方はイタリア製の美しい石材が壁一面に複雑に組み合わされている。その石材に複雑に反響した音のいでたちは、有機的で自然である。時に繊細で時に雄大・・・こんこんと湧き出る泉のように絶え間なく動き変化する。

 交響曲第15番はショスタコーヴィチが最後に書き上げた交響曲である。ロッシーニの「ウィリアム・テル」や自身の過去の交響曲からの引用が多用されるこの交響曲は、ショスタコービッチの人生の結晶そのものであるかのように、時に輝き、時に陰鬱にねじれ、そして軽妙にステップを踏む。

 ピントがぴったりと合って、時の自然な流れと完全に融合したかのような音楽は6名のそれぞれ2つの耳を魅了した。全楽章を通して交響曲第15番を聴いた。40分を越える時間、この交響曲が描き出す風景を全員が堪能した。

 その後も数枚のCDがメトロノームのトップローディング式のトランスポートにセットされた。「システム400」は音の裏側に潜む情念のようなものもすっと提示する。その質と量は豊富で潤沢である。

 私はフロントがまだ「80」であった頃の音を聴いてはいないが、「120になって格段にCDの音が良くなった・・・」とその経過を知っている方々は話されていた。「120」は単なる足し算の「解」ではなかったようである。

 「German Physiks ミニ例会」の前半は終了した。後半はアナログである。Hさんのリスニングルームのアナログは、リトアニアのReedである。それにスポットライトを当てるのは自身が発光する光カートリッジである。

2021/11/21

5743:提言  

 小暮さんがまずNAGRA CDCにセットしたCDは、Lisa Batiashviliのヴァオリンによるショスタコーヴィッチのヴァイオリン協奏曲第1番であった。

 才色兼備のヴァイオリニスト、Lisa Batiashviliはグルジアの首都トビリシ生まれである。彼女は、1991年のグルジア動乱により家族とともにドイツに亡命している。

 俊敏闊達なヴァイオリンソロ、オーケストラの豊かな響き、そして録音の素晴らしさが三位一体となって表現されている名演であった。

 Lisa Batiashviliの表現能力はとても高い。協演しているサロネン指揮のバイエルン放送交響楽団も素晴らしい。

 Balanced Audio TechnologyのVK-300Xは、プリメインアンプであるが、その表現能力にはしっかりとしたものを感じた。

 真空管とトランジスターのハイブリッド構造である。それゆえか、温度感は比較的高めであり、ハイエンドオーディオ機器にありがちな高精度ではあるが冷淡な表現では決してなかった。

 「少し濃い目の味付けですね・・・ショスタコーヴィッチの怨念というか暗い精神局面が濃厚に感じられます・・・ソビエト連邦の特に厳しいスターリン時代を生き抜いてきた彼の屈折した精神の暗部がより色濃く感じられる気がしました・・・」と感想を述べた。

 小暮さんは「結構好きかも・・・悪くないよね・・・今日の昼は簡単にカップ焼きそばで済ませたんだ。『マルちゃん 富士宮やきそば』という商品だったけど、その味わいをついつい思い出したよ・・・結構おいしいよ・・・今度試してみて・・・」となんだか話題がすり替わった。

 続いてかかったのは、ベートーベンのピアノ協奏曲第5番であった。ピアノはクラウディオ・アラウである。このCDは、1989年のレコード・アカデミー賞を受賞している。

 この演奏の時にはアラウは80歳を超えている。しかし、技術的な衰えが気になる訳ではなく、むしろ年輪を重ねた末に生まれた静かで動じない心境を感じさせてくれる演奏である。

 堂々としていて風格を感じる。落ち着いたテンポと確実なタッチがじっくりと音楽に浸らせてくれる。協演のコリン.デイヴィス指揮シュターツカペレ・ドレスデン管弦楽団のポイントを見事に押さえた演奏も素晴らしい。

 「1989年というと、私が結婚した年です。バブル経済の頂点となった年ですが、そんな浮かれ切った日本とは違い、実に落ち着いた名演ですね・・・1989年というと32年も前です・・・結婚して32年・・・我が家の夫婦仲も実に落ち着いたものです・・・32年も経つとね・・・」と私も話題をちゃっかりとすり替えていた。

 「Balanced Audio TechnologyのVK-300X・・・良いアンプですね・・・人気がなくて高く売れないのなら、ショップの常設機器にしたらどうですか・・・セパレートでなくても充分にオーディオは楽しめるというメッセージにもなりますよ・・・このどこかしらバランスの悪いデザインも愛嬌があって良いですから・・・」と私は小暮さんに提案した。

 Balanced Audio TechnologyのVK-300Xが「オーディオショップ・グレン」の常設機器になれば、いつでも懐かしい気分に浸れるという「下心」があっての提言であった。

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