2021/7/25

5624:光  

 「光カートリッジ」という言葉は今までに何度か聞いたことがあった。しかし、我が家のオーディオシステムは、ヴィンテージ機器が主要なポジションを占めていて、どちらかというと最新技術に背を向けているところがある。正直それほどの関心は持っていなかった。

 「光カートリッジ」は、「アナログとデジタルの良いとこ取り」とか「第3のフォーマット」と言われている。

 この新たなアナログの世界に、お知り合いのオーディオマニアであるHさんのリスニングルームで触れたGRFさんは、椅子から転げ落ちんばかりに驚愕されたようである。

 その後、電磁誘導の曖昧さから解放された光カートリッジの世界に、一気に飛びこまれていったのである。

 2本のSME シリーズXには二つの光カートリッジが装着されていた。一つはGrand Master(税込1,320,000円)であり、もう一つはDS003(税込247,500円)であった。

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 光カートリッジには専用のフォノイコライザーが必要である。光カートリッジのメーカーであるDS Audioから何種類か発売されているが、GRFさんが選択されたのはEMM LabsのDS-EQ1である。

 当初はMC用フォノイコライザーに光カートリッジ用入力を付ける計画であったが、エド・マイトナーは「光カートリッジの音を聴いたら二度とMM/MCカートリッジには戻れない。だからもうEMM LabsのフォノイコライザーにはMM/MCの入力は付けないことにした。」と計画を変更して光カートリッジ専用のフォノイコライザーの開発に切り替えて誕生した製品である。

 GRFさんの広いリスニングルームでのOFF会の後半は、「光カートリッジタイム」となった。まずは、GRF邸においてはアナログで必ず最初にかかる越路吹雪のリサイタル盤を聴いた。

 「光カートリッジの音を聴いたら二度とMM/MCカートリッジには戻れない・・・」その言葉の真実味がひしひしと感じられる音の質感に少々度肝を抜かれた。

 「奥行き深い空間表現と、低音の明確さ、音の鮮度感・・・今までのアナログの常識を覆す音だな・・・」と、耳をダンボにして聴き入った。

 その後、森進一などのリサイタル盤を数枚聴いた。いずれも50〜60年前のリサイタルを収録したものであるが、その臨場感と鮮度感は、古さを全く感じないものであった。

 チューバホーンさんは「聴く者がその時代にタイムスリップするのではなく、リサイタルそのものが現代にタイムスリップするかのようだ・・・」という趣旨の感想を漏らされたそうである。

 確かに従来のアナログが「猿の惑星」であれば、光カートリッジの描き出す世界は「新・猿の惑星」なのかもしれない。

 クラシックのレコードも色々と聴かせていただいたが、最も印象的であったのは、シベリウスの交響曲第4番であった。

 カラヤン指揮のベルリンフィルの演奏である。もっとも脂の乗っていた時代のカラヤンは、重厚な響きが特徴のベルリン・フィルから、透明感あふれるシベリウス・サウンドを巧みに引き出している。

 その切れとグリップの良さが実に心地よく、光カートリッジが拾い上げる精細な音情報がその名演を細大漏らさず表現している感があった。

 「光カートリッジの音を聴いたら二度とMM/MCカートリッジには戻れない。」・・・GRFさんは完全にその世界に入っていかれたようである。

 今後もその新たな扉を開けて、「光の世界」に飛び込まれていくオーディオマニアが増えていくであろう。 

 「光カートリッジ」は、GRFさんにとって、アナログオーディオの世界を新たに照らす「光」そのものであったようである。



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