2021/7/23

5622:獺祭  

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 D-150モアは「幻の巨鳥」と呼ばれていた。1996年のFMファンの誌面に載ったその写真を見ると、小柄であった長岡鉄男氏とほぼ同じ背丈がある。

 初めてその巨鳥を目にしたのは、学生時代から「方舟」に頻繁に出入りしていたSさんのリスニングルームであった。その音の印象は、「幻の巨鳥」と呼ばれるにふさわしく、威厳に満ちたものであった。

 しかし、その巨大な鳥は飛び去った。といってもその所在をSさんのリスニングルーム背後のストックコーナーに移しただけではあるが・・・

 巨大な怪鳥が飛び去った跡にできた大きな空間には、新たな怪鳥が飛来してきていた。その怪鳥の名前はYG Acoustics ANAT Referenceである。Professionalが製品名の後に付く3段重ね構成の仕様である。こちらもD-150モアと同様に高身長である。

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 このANATは、最近のYG Acousticsのユニットとネットワークにバージョンアップされているので、その性能は現行製品であるSonjaと同等なレベルである。

 送り出しはDCS VIVALDIのフルラインナップとESOTERICのP-0。プリアンプはG Ride Audioの特注品。パワーアンプは泣く子も黙るであろうClasse AudioのOMEGA MONOである。

 素晴らしくある意味恐ろしくもあるウルトラハイエンドのオーディオ装置の音をいただく前に、Sさんのリスニングルームでの流儀である「前菜」をいただくことに・・・

 「CP抜群!」を目指すサブシステムから2曲を聴かせていただいた。サブシステムの要となるスピーカーはKEFのQ100であった。

 実に鳴りっぷりの良いスピーカーである。バランスもとても良い。そして「CP抜群!」である。Sさんの師であった長岡鉄男氏はオーディオ機器を評価するうえでCPということをとても重視されていた。

 「前菜」をさっと平らげて、メインデッシュの登場である。私が持参したCDからまずは1曲聴かせていただいた。RENAUD CAPUCONのヴァイオリンによるKORNGOLDのヴァイオリン協奏曲から第1楽章である。

 「あら〜格が違う・・・!」という当たり前と言えば当たり前の心情がふつふつと沸き上がった。「確かにCP抜群は嬉しいが、やはり限界がある・・・ウルトラハイエンドシステムの音はやはりウルトラハイレベルであった。

 といっても触れると指先が切れて血が出る系の音では全くない。その外観からすると超精密サイボーグ的な音が繰り出されるのかと思っていたのであるが、実に自然で滑らかな質感である。

 覆いかぶさってくるような威圧感のない音は耳に心地よく、それでいてオーディオ的な快感度も高い。音の佇まいに品位がある。その見た目とはかなり裏腹と思える音の質感に少なからず驚いた。

 その後さまざまなCDを聴かせていただいた。そのなかでも一番このシステムとの相性が良いと思われたのが、Jane Monheitの若かりし頃の曲であった。

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 20代の頃、彼女はこのジャケット写真のように実に魅惑的な容姿と声をしていた。彼女の現在の写真を見ると、二回り以上太ってしまい、輝いていた頃の面影はなくなってしまった。

 もちろん、YG ACOUSTICSのANATがその音で描いて見せるJane Monheitは、スレンダーでスタイルが良く、若々しくセクシーである。

 Sさんは「D-150モアがキンキンに冷えた生ビールだとしたら、ANATは高級な純米酒って感じでしょうか・・・」と話されていたが、「確かにそうだ・・・この音の質感は『獺祭』の味わいにも似ている・・・」と思った。



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