2021/6/12

5581:帯  

 「私、このバンド好きなんです・・・ちょっとひねくれていて、暗めですけど・・・いかにもイギリス的でしょう・・・」「ゆみちゃん」はそう言うと軽く微笑んだ。

 「エコー・アンド・ザ・バニーメン」というバンド名はどこかで聞いたことがあるような気がしたが、そのバンドの詳細については、私は全く知識がなかった。

 「エコー・アンド・ザ・バニーメンはイギリスのポストパンクバンドなんです。サイケデリックな雰囲気と耽美的な音で独特な世界感があります。1980年代には結構人気があったんですよ・・・」彼女は簡単に説明してくれた。

 SONY CF-1700からは聞き覚えのある曲が流れてきた。「この曲聴いたことがあるような気がする・・・随分と昔だけど・・・」と私が呟くと、彼女は「これは『The Killing Moon』ですね・・・彼らのヒット曲です・・・確か1984年の発売の彼らの4枚目のアルバムに入っていたはずです・・・」と説明してくれた。

 「そうそう・・・そのレコード、実は私持っているんですよ・・・日本盤ですけど・・・ちょっと待ってください・・・ジャケットがすごく良いです・・・」彼女はそう言って、自分のiPhone11を操作した。彼女は自分が持っているレコードのジャケットを全てスマホで撮っているようである。

 「ありました・・・これです・・・」と彼女は、iPhone11の画面を見せてくれた。その画面には、「The Killing Moon」の世界観と共通する幻想的なジャケット写真があった。

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 「きちんと帯とっているんだね・・・」とその写真を見て呟いた。国内盤のレコードジャケットには帯が付いている。彼女はその帯をそのまま綺麗に保存していた。

 その写真を見ながら私は「1984年か・・・35年も前のことか・・・時代はバブル経済の入り口あたりか・・・私は23歳・・・社会人になりたての頃・・・職場の先輩が昼休みに証券会社にいつも行っていたのが記憶に残っているな・・・株価も土地もぐんぐんと上がっていっていた頃だったからな・・・」と思った。

 「少し疲れてますか・・・?」「ゆみちゃん」は不意に尋ねてきた。我に返って「もしかしてオーラ・・・濁ってる・・・?」と訊き返した。



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