2021/6/30

5599:バイク交換  

 補給食を物色するためにダイニングキッチンに向かい、冷蔵庫の扉を開けた。目についたのは「QBB チーズデザート 瀬戸内レモン」。黄色のパッケージである。

 その丸い箱から2個を取り出して、胃袋に納めた。ボトルにミネラルウォーターを補充して、一息入れた。

 休憩を終えて再びロードバイクに跨った。「後半もよろしくお願いします・・・」と挨拶をして、「BIG LOOP」の後半を走り出した。

 しばし下っていった。下り切ると「ジャングルサーキット」と呼ばれるエリアに向かう。「ジャングルサーキット」は、ほぼ全てが未舗装路である。

 未舗装路の転がり抵抗は、MTB<グラベルバイク<ロードバイクの順なので、「一旦止まってバイクを交換しましょう・・・」ということになった。

 「MENU」を指で押して、フレームを取り替えることのできる画面に進んだ。MTBを選ぼうと思っていたが、その画面の一番上には「NEW ARRIVED」と赤い文字が表示されているフレームがあった。

 「新しいフレームが届いている・・・TREKのEmondaか・・・」Emondaは軽量性を追求したTREKのフレームである。
 
 デザインからパーツ選択に至るまで、各グレードにおいて最軽量ロードバイクを目指して設計されたヒルクライムマシーンである。

クリックすると元のサイズで表示します

 「ジャングルサーキット」には不向きなフレームであるが、なんとなくこれを選択した。そして砂煙を上げながら「ジャングルサーキット」を走った。

 悪路である。もしもリアルでこんな道をロードバイクで走ったらガタガタと振動して大変であるが、そこはヴァーチャルである。ロードバイクが振動することはない。

 ようやく「ジャングルサーキット」を抜けた。「また、バイクを交換しますか・・・」ということになって、再度止まった。

 そこで、今度は「TTバイク」に乗り換えた。ここか先はずっとフラットであり、ゴールに向かってペースが上がっていくはずであった。

 WATOPIAの島々を繋いでいる橋の幾つかを渡っていくと、今日のコースのゴールが近づいてきた。残り距離が10kmを切ってくるとペースがぐっと上がり、負荷も200ワット以上になってくる。

 MEET UPに参加していると画面の右上に残り距離も表示される。その数値が下がっていくのを確認しながら、高速巡行をこなした。

 残り1kmを切って、ラストスパートに備えた。コース終了の少し手前にアーチがある。そのアーチに向けて、最後の力を振り絞った。

 アーチを潜り抜けると脚を緩め、惰性で今日のコースの終了を示す半透明に青く光るラインを越えた。

 「BIG LOOP」における二つの頑張りどころはしっかりと頑張った。それ以外は軽めに流したが、疲労度は結構高めであった。

2021/6/29

5598Epic KOM:  

 スタートして海沿いの道をしばし走った。やがて道はファンタジックな海底トンネルに入っていった。

 ガラス越しに海の様子を眺めることができる海底トンネルは現実にはあり得ないが、幻想的な世界を覗くことができる。時折イルカの群れが走るロードバイクと遊ぶかのように泳いでいる姿を見ることができた。

 海底トンネルを抜けてしばし走っていくと、今日の頑張りどころである「Epic KOM」にさしかかった。

 「Epic KOM」の計測区間は9.5kmであり、走っている時間は約30分。計測開始ラインを越えるとスマホの画面にはタイムが表示される。そのタイムを確認しながら走っていった。

 計測開始から少しづつ負荷を上げていき200ワット前後で巡航態勢に入った。途中、ヨーロッパの中世の面影を残す古い集落を抜けていく。

 ペースは少しづつ上がってきた。トンネルに入ると負荷も上がり、240ワット前後で推移するようになる。

 トンネルを抜けると山頂が近いことを思わせる景色に変わる。ここからゴールへ向けて緊張感が高まっていく。

 負荷はさらに高くなってくる。「まとめる」機能が働いているので、集団は大きくばらけることはなく、「Epic KOM」の終盤を走った。

 残り距離が少なくなってくると、現在のペースで走り切った場合の予想タイムも画面に表示され始める。その予想タイムから現在のタイムを差し引いて「残りあと3分か・・・」とゴールまでの残り時間を暗算しながら、高い負荷に耐え続けた。

 その残り時間が1分を切ってくるとスパート合戦となってくる。300ワット超えるパワーゾーンに移行して、ゴールを示すアーチが視界に入ると、さらにヒートアップした。

 2着でアーチの下を潜り抜けた。「頑張りどころ」を一生懸命に頑張った。その代償として激しい疲労感が全身を覆った。

 乱れに乱れた呼吸を整えるために脚を緩めた。私のアバターはしばし惰性で走ってから止まった。「カチャ・・・」と音をさせて左足のクリートをペダルから外して、地面に足を着けた。

 今日はここで休憩を入れることになっていた。最後のスパート合戦に参戦すると、体に刻まれる疲労度は高い。

 「ふ〜疲れた・・・」という感じで、ロードバイクから降りて、休息タイムに入った。ダイニングに向かって、補給食を摂ることにした。

2021/6/28

5597:降水確率  

 前日の土曜日に、日曜日の天気予報を確認すると、降水確率は70%とのことであった。その天気予報を受けて、日曜日のチームでのロングライドは「リアル」から「ヴァーチャル」に変更された。

 選択されたコースは、「BIG LOOP」。BIG LOOPはその名前のとおりWATOPIAの中を大きく1周するルートである。走行距離は42.5kmで、獲得標高は662mである。

クリックすると元のサイズで表示します

 ヒルクライムは、前半の「Epic KOM」のみである。この「Epic KOM」が今日一番の頑張りどころである。

 後半はほぼ平坦となる。ゴールが近づいてくるに従ってペースが上がっていくであろう。そしてコースが終了する直前のアーチを目指してスプリント合戦になだれ込んで、終了になる予定である。

 「ということは、今日の頑張りどころは2ヶ所ということか・・・それ以外は軽めの負荷で流そうかな・・・」

 そんなことを思っていた。そして日曜日の朝となった。空には雲があるが、その色合いは明るい。すぐには雨が降りそうな感じではなかった。

 スマホで天気予報を確認すると、午前中は曇りで午後から傘マークが表示されていた。「あれ、天気予報が良くなっている・・・もしかして短めのコースならリアルでも大丈夫だったかな・・・」と思った。

 ヴァーチャルライドの場合のスタート時間は8時半であるので、朝はゆっくりとできる。8時前には準備ができたので、Zwiftで軽めのアップをすることにした。

 30分ほどアップをしていると、Zwiftの画面に「MEET UPに参加」の表示が出たので、それをクリックした。

 すると私のアバターは今日のコースのスタート地点にワープした。スタートまでの間はそこで白く光る固定式ローラー台に繋がれる。

 スタート時間の10分前になったので、ZOOMにも接続した。メンバーに挨拶をしてしばし雑談していると、スタート時間が迫ってきた。

 しかし、一人のメンバーがトラブルでZwiftに入れないでいたので、急遽スタート時間が10分間延長された。

 私のスマホに表示されているスタートまでの時間に10分が加わった。スタート時間延長の措置が上手く届かずに二人のメンバーのアバターは走り始めてしまった。

 二人は一旦、MEET UPから退出してもう一度入り直す必要があった。すると今度は入り直す必要のあるメンバーの一人がZwiftにスムースに入れないようで、再度5分間スタート時間が延長された。

 「3度目の正直」という感じで2回延長された後のスタートはトラブルはなかった。朝のうちの気温は20度前後で快適ではあったが、クーラーの電源はONにしておいた。アップをしていたので、クーラーがついた状態でちょうど良い感じであった。

2021/6/27

5596:傘  

 「待望の新型GOLFが入庫しました。展示車はR-LINEのキングスレッドとSTYLEのドルフィングレーの2台。試乗車は1.5LターボのマイルドハイブリッドSTYLEのブラックをご用意しています。是非新しいGOLFをご体感下さい。試乗、査定をされた方にフォルクスワーゲンオリジナルアンブレラをプレゼントさせて頂きます。」

 フォルクスワーゲン小平から「新型GOLF試乗会開催!」とのタイトルでメールが来ていたのは昨日のことであった。

 「新型GOLFか・・・試乗車は1.5LのSTYLE・・・乗ってみたいな・・・GOLFに乗り換える可能性は低いけれど・・・査定すると傘ももらえるしな・・・」

 と、完全に「もの」に釣られる形で、今日の午後フォルクスワーゲン小平に試乗予約の電話をしたうえで、我が家から車で15分程度の場所にあるディーラーに出向いていった。

 POLOを事務所の営業車として7年間使っていたので、フォルクスワーゲン小平には過去に何度も訪問したことがある。その少し懐かしい感じがするディーラーの駐車場に車を停めた。

クリックすると元のサイズで表示します

 ディーラーの建物の中には入庫したばかりという2台のNEW GOLFが展示されていた。赤はR-LINE、グレーはSTYLEというグレードである。

 NEW GOLFはインターネットで何度も見ているが、実車を目にするのは初めてである。全体のシルエットは見紛うことのないGOLFの特徴を備えているが、フロントフェイスは先代のGOLF 7よりも少し難解になったといえるであろう。

 私は個人的には好きな造形であるが、先代のGOLF 7の方が好きだというフォルクスワーゲンオーナーは多いような気がする。

 試乗車は1.5L4気筒エンジンを搭載している。実は少し前にゴルフの下位グレードが搭載する1.0L3気筒エンジンと同じエンジンを搭載するAudi A3に試乗した。

 同じグループに属する兄弟車であるゴルフとA3との比較、さらに1.5L4気筒エンジンと1.OL3気筒エンジンとの比較ができることとなる。

 試乗車の色は黒であった。そのドライバーズシートに乗り込んだ。インテリアの質感はニューモデルらしく、デジタル化が一気に新たなレベルまでに進められていた。

 物理的なスイッチやダイヤルがほとんど廃止されて、ダッシュボードやセンターコンソールまわりがとてもすっきりとしたデザインになっている。

 ATセレクタレバーもなくなりとても小さなスイッチになっている。「こんなもので良いのかな・・・」と思ってしまうが、慣れの問題であろう。

 小平市や東久留米市の市街地コースを30分ほど走った。その印象は「やはりエンジンは1.0Lよりも1.5Lの方が良いかも・・・」というものであった。

 1.OL3気筒エンジンは必要最小限の充足度を与えてはくれる。これが1.5L4気筒エンジンになると、やはり余裕を感じさせてくれる。この体感的な余裕・・・それがドライバーの気持ちに与える影響は思いのほか大きいように感じられた。

 エンジン横置きプラットフォーム「MQB」が、GOLF 8にも採用されている。多少の改良が加えられているとはいえ、キャリーオーバーであることに変わりがない。

 「やはり開発予算はEV車に集中して、内燃機関モデルにはほどほどにという流れであろうか・・・」とは思ったが、静粛性、乗り味の上質さ、そして運転支援システムやコックピットのデジタル化の推進などにはやはり先代よりも確実に進化していると思わせる要素が多かった。

 「Cセグメントは実力のあるモデルが多いが、GOLFがこのセグメントにおけるリーダーであることは間違いない・・・ずば抜けている要素は特にはないが、様々な要素の平均点が一番高いのは依然GOLFなのかもしれない・・・」そんな感想を持ちながら、試乗を終えた。帰り際にはフォルクスワーゲン特製の傘をもらうことも当然忘れなかった。 

2021/6/26

5595:微笑  

 「オーディオショップ・グレン」に一時的に滞留しているEnsembleのスピーカー、プリアンプそしてパワーアンプにより構成されたオーディオシステムの音を1時間ほど聴かせてもらった。

 送り出しは、常設機器であるNAGRA CDCである。メカごと前にせり出してくるCDCにセットされて、Ensemble PA-1から穏やかに放たれた曲はショパンのノクターン(夜想曲)であった。アルトゥール・ルービンシュタインのピアノ演奏である。

 ショパンのノクターンは全部で21曲ある。ショパンはノクターンを20歳から晩年に至るまでほぼ均等に作曲している。

 最も有名なのが第2番であるが、私は好きなのは第1番である。第1番と第2番そして第20番の3曲を聴かせてもらった。ノクターンの語源はラテン語で夜をさす「NOX」のようである。

 実に理にかなった選曲のような気がした。マーラーの交響曲を最初に聴くべきシステムではない。もちろんブルックナーも・・・

 このシステムで聴くノクターンは、じわじわと心の襞に染み込んでくる。印象的な映画「戦場のピアニスト」でもテーマ曲として使われていたノクターンの第20番を聴いている時には、映画の幾つかのシーンが脳内スクリーンに映し出された。

 次にかかったのはシューベルトであった。シューベルトは「歌曲王」と称されるように歌曲が有名であるが、ヴァイオリンのための曲にも隠れた名曲が多い。

 その一つである「ヴァイオリンとピアノのための幻想曲 ハ長調 D938」がかかった。ヴァイオリンはイザベル・ファウスト、ピアノ伴奏はアレクサンドル・メルニコフ。

 欧米各国で目覚しい活躍ぶりを見せ、現代において最も注目されるヴァイオリニストの一人であるイザベル・ファウストの演奏は、きりりと冴えた持ち味を活かしながらも流麗にして華麗なものである。

 我が家ではヨハンナ・マルツィの演奏によるレコードで聴くことが圧倒的に多い曲である。1955年の11月に録音されたレコードであるので当然モノラルであるが、何度聴いても聴き飽きることのない名演である。

 Ensemble PA-1はどちらかというとクラシック向きのスピーカーかもしれない。ヨーロッパ的な、端正で陰影感のある音色である。

 そして「少しへ編成の大きなものも聴いてみますか・・・」と最後に選択されたのが、ドヴォルザークのチェロ協奏曲であった。

 チェロはジャクリーヌ・デュ・プレ。ダニエル・バレンボイムの指揮によるシカゴ交響楽団との協演である。1970年11月の録音である。

 デュ・プレの演奏は、壮大なスケール感と伸びやかな歌いまわしが聴くものを否応なく惹きつける。

 そのジャケットには、この数年後に訪れる悲運を予期していなかったはずの彼女の屈託ない微笑が印象的な写真が使われている。

 その第1楽章を聴き終えた。この演奏を聴くと、その悲劇性を帯びた曲調ゆえか、デュ・プレをその後襲った悲劇のことがついつい頭に浮かぶ。「もしかして、彼女は悪魔と契約し、天才的な演奏能力を得ることの代償に不治の病を引き受けたのかもしれないと・・・」と考えてしまう。 

 「どれも素晴らしいですね・・・このシステム、我が家に欲しいくらいです・・・もちろんスペースがないので置きようがありませんが・・・それに売却先はもう決まっているんですよね・・・ところでスピーカーとプリアンプ、そしてパワーアンプの一式・・・幾らで売れたんですか・・・?」

 「220万円・・・」小暮さんはにこやかな表情で言い放った。ついさっきまで夢の世界にいたが、その値段を聞いて、現実世界に否応なく引き戻されたような気がした。  

2021/6/25

5594:PA-1  

 ややくすんだ感じに色合いが変わってしまっている白い外壁を持つビルの階段を上がっていき4階にまで達した。

 このビルの1階には時々訪れる喫茶店「Mimizuku」がある。2階には扉に「株式会社 光通商」を書かれた看板が掲げられている。

 3階には何の表示もない。人気も全くないので空いているようである。そして、4階に「オーディオショップ・グレン」が入っている。

 扉の脇にインターホンはない。扉をノックするしか来訪を伝える手段はない。右手の人差し指を鉤状にまげてその背で3回、扉をノックした。

 すると「どうぞ・・・」という聞きなれた声が金属製の扉の向こう側から聞こえた。銀色の小さめのドアノブを回して、中に入った。

 靴を脱いで用意されいたスリッパに履き替えてから、リスニングポイントに置かれている黒い革製の3人掛けソファに座った。

 視線の先にはいつものソナスファベールのエレクタ・アマトールではなく、初めて見る小型の2ウェイスピーカーがあった。

 色は黒。専用のスピーカースタンドと一体となって瀟洒な雰囲気を発散していた。サランネットは外されていた。特徴的なのはウーファーの色合いであった。シルバーであったのである。素材も金属であるようであった。

 「このスピーカー、似たものを見かけたことがあります。でも色合いもユニットの素材も違ってましたけど・・・全体の形がとてもよく似てます・・・」

 私がそう言うと「きっとそれはPawel AcousticsのElektraじゃないかな・・・」と小暮さんは返答した。

 「そうそう、そうです・・・それです・・・」

 「このスピーカーもPawel Acousticsが作っているんだ・・・ただし、EnsembleというスイスのメーカーにOEM提供されている。型番は『PA-1』・・・きっとEnsembleからの要望にも応じながら作られたスピーカーだったはず・・・」

 「そうだったんですか・・・Elektraをお持ちの方はEnsembleのCDプレーヤとプリメインアンプで鳴らされていました。」

 「それはかなりレアなオーディオシステムだな・・・でも相性は当然いいはず・・・品よくまとまっていたでしょう・・・」

 「そうですね・・・確かにとても品位の高い音がしていました。大人のゆとりというか、落ち着きを感じるようなシステムでしたね・・・」

 リスニングポイントから見て右側に設置されている大型のオーディオラックには、常設のオーディオ機器のほかに、見慣れないものが2台置かれていた。

 それらはプリアンプとパワーアンプであった。そして視覚的にきわめて特徴的なものであった。フロントパネルが金色の鏡面仕上げであったのである。さらにノブなどは木製であった。

 「このプリンアンプとパワーアンプ、特徴的な外観ですね・・・金色の色合いが実に良い雰囲気を発していますね・・・」

 「これも同じマニアから譲り受けたものでね・・・スピーカーと同じEnsembleのプリアンプとパワーアンプ・・・プリアンプが『VIRTUOSO』、パワーアンプが『CORIFEO』・・・」

 「これは素晴らしい組み合わせですね・・・プリアンプ、パワーアンプそしてスピーカーが純正組み合わせということですよね・・・」

 「この組み合わせ・・・実はもう売却先が決まっているんだ・・・とても高く売れたよ・・・どれも今となってはかなりレアな存在になっているんでね・・・しかも三つが組み合わさるとプレミア度が一気に上がるからね・・・」

 小暮さんは半分趣味でこのビジネスをしているところもあるが、時折商売人の顔つきを見せるのであった。

2021/6/24

5593:Limited Edition  

 「オーディオショップ・グレン」には時折、非常に珍しいスピーカーが入ってくる。主に扱っているのは、イギリスから調達されたTANNOYの古いスピーカーであるが、国内のオーディオマニアから引き取った比較的新しいスピーカーが一時的に店の一角を占有していることがあるのである。

 少し前には、ソナスファベールのエクストリーマという、非常に珍しいスピーカーが少しの間置かれていた。

 初めて見るエクストリーマはエレクタ・アマトールがジムで筋トレを1年間続けたようなマッチョな体型をしていた。

 このエクストリーマ、1991年の登場であるので30年も前のスピーカーである。ヴィンテージと言えなくもない。「準ヴィンテージ」といったところであろうか。

 実はエクストリーマは、2014年にソナスファベールの創立30周年記念モデルとして新型が出ている。その名称は「Extrema Super Limited Edition」である。

クリックすると元のサイズで表示します

 その名の通り限定モデルで、なんと世界で30セットしか生産・販売されなかった。日本でも幸運な数名のオーナーが入手したようである。

 ただしその価格はペアで800万円(税抜き)であった。単に運が良いだけでは、そのSuper Limited Editionを手に入れることはできなかったのである。

 「また、変わったものが入ったよ・・・」と「オーディオショップ・グレン」のオーナー小暮さんから連絡が入ったのは、先週のことであった。

 「まさか・・・『Extrema Super Limited Edition』じゃないよな・・・それはあり得ない・・・世界で30セットの限定販売ということは、現在恐ろしいほどプレミアがついているはず・・・今なら優に1,000万円以上の値がつくはず・・・」

 そんなことを思いながら、BMW 523i Touringのハンドルを握っていた。この車の走行距離は91,000kmを超えた。

 さすかに多少の経年劣化を感じるようにはなってきているが、今まで乗ってきたドイツ車の中では、その経年劣化の具合は軽めである。以前乗ってきたドイツ車はこのくらいの走行距離になると「さすがに、そろそろ乗り換え時かな・・・」と思ってしまっていた。

 スマホには「Mercedes-Benz C-Class 6月29日 日本発売開始 先行予約キャンペーン」という広告が載っていた。

 以前インターネットでフルモデルチェンジされたC-Classを見て「これは絶対に売れるでしょう・・・」と思った。

 「先行予約キャンペーンか・・・登録しとこうかな・・・」そんなことを思いながら車を走らせていくと、いつも停めるコインパーキングに着いた。

2021/6/23

5592:ジェントル  

 「軽い」という形容詞はどちらかというと否定的に使われることが多い。しかし、「軽やか」という形容詞になると、これは肯定的に使われることが多い。

 Audi A3の試乗車に乗り込んで、エンジンを始動させて走り出した際の印象は「軽やか」そのものという感じであった。

 1.0Lの3気筒エンジンのサウンドについて「3気筒だからがさがさした乾いた質感の音質だろうな・・・」と想像していたが、新型A3は相当遮音に気を使っているようで、エンジン音そのものがあまり耳につかない。

 Audi立川の駐車場を出て、芋窪街道を北に向かって走った。「軽やかで静かですね・・・」助手席の営業マンにそう話しかけた。

 室内の設えもAudiらしくクールですっきりとした質感でまとめられている。10.25インチサイズのフル液晶メーター「アウディバーチャルコックピット」はとても見やすい。

 センターコンソールに組み込まれたタッチ式ディスプレイは10.1インチサイズで大きく解像度も高い。

クリックすると元のサイズで表示します

 コンパクトなリチウムイオン電池を積み、ベルト駆動のジェネレータースターターが必要に応じてアシストを行う効果は、アイドリングストップ時に感じられる。

 エンジンのオンオフはタコメーターを見ていなければわからないほどに滑らかである。アイドリングストップは、車が停まる前に作動していて、停車した時にはすでにエンジンの回転数は0rpmで、ジェネレータースターターによる再始動もそれと体感することなく行われる。

 再始動時のあの「ブルル・・・」という振動や音がないのがとても新鮮である。「これは気持ちいいな・・・」と思った。

 随分とコンパクトになったエンジンはさすがに余裕はない。しかし、街中をジェントルに走る分には必要にして十分と言えるであろう。

 スポーティーな加速感や高揚感とは無縁のエンジンである。そういった質感を求めるには2.OLのエンジンを搭載する上級車を購入する必要がある。

 この車は、子供たちが大きくなり大人数で乗車する必要性のない年代になった方が、「もうミニバンには乗りたくない・・・」と購入するのに最適なのかもしれない。

 そういった年代になると運転も比較的穏やかになるものである。(もちろん例外は少なからずあるとは思われるが・・・)

 街中の試乗コースの中には、最近整備された産業道路も含まれていた。その道路は広く交通量が少ない。そこでアクセルをべた踏みしてみた。

 エンジン音が高まる。しかし、それに応じて車速が一気に高まることはなかった。じわじわとややタイムラグを感じさせながらスピードがのってくる。

 「さすがに1.0Lでは苦しそうですね・・・」私は助手席に乗っている営業マンと話した。「スポーティーな感覚を求められる方はS3しかないですね・・・」との返答であった。

 新型A3 SEDAN 1stエディションは、乗り込んでエンジンをかけた瞬間から“いいもの感”がじんわりと感じられた。

 Audiはプレミアムブランドである。クールで上質な質感をとても大事にしている。そのブランドイメージは、この新型A3にも随所に感じられた。

 エンジンが1.0Lの3気筒ということで、「大丈夫なの・・・」と心配したが、静寂性、走行感覚、運転感覚においては、そんな心配を一蹴する高いクオリティー感があった。

 エンジンは確かに余裕があるものではないが、マイルドハイブリッドの効果もあり思っていた以上に上質な質感を感じた。A3 SEDANは「ジェントルマンたる大人の車」という印象であった。

2021/6/22

5591:1stエディション  

 私が最初に乗ったドイツ車はAudi A6であった。1997年のことであり、遡ること24年前ということになる。

 A6としては2代目となるモデルで、私が選択したグレードは2.4Lのエンジンを積んでいた。駆動方式はFFであった。

 サイズは全長4,796mm、全幅1,810mm、全高1,453mmであった。今では珍しくはなくなったが、その当時としては滑らかに弧を描くルーフラインがとても斬新で美しく感じられたことを覚えている。

クリックすると元のサイズで表示します

 Audi立川の建物の中に入って、展示されているAudi A3 SEDANのサイドビューをしげしげと眺めながら、「24年前にディーラーの展示車を見て一目ぼれしたA6のサイドビューに似ているな。今ではこういったルーフラインは当たり前になってしまったけど・・・」と思った。

クリックすると元のサイズで表示します

 Cセグメントに属するA3 SEDANのボディーサイズは全長4,495mm、全幅1,815mm、全高1,425mmである。24年前のEセグメントの車とそれほど大きくは違わない。

 しかし、積み込んでいるエンジンはかなり違う。1.0Lの3気筒エンジンが搭載されているのである。随分とコンパクトなエンジンに48V駆動のベルト・オルタネーターが加わり、小柄なエンジンをサポートしている。

 これは日本でも販売が開始された新型ゴルフとも共通する。ただしゴルフの場合、上位グレードは1.5Lの4気筒エンジンを搭載する。日本でのゴルフの販売の主流は1.5Lモデルとなる可能性が高い。

 A3の場合は上位グレードは一気に2.OLの4気筒エンジンとなってしまうので、販売の主流はこの1.0Lモデルということになるのであろう。

 24年前のことを思い出しながら、その展示車を眺めていると、若い男性営業マンが「試乗車の準備ができました・・・」と告げにやってきた。

 その後ろに従って、駐車場へ向かった。展示車はブラックであったが、試乗車は白であった。展示車と同じくA3 SEDANである。

 「ファーストエディション」と呼ばれる台数限定の特別使用車であり、ほぼフルオプションのモデルである。価格は4,720,000円。「さすがに高い・・・」と思わざる得ない価格ではある。

2021/6/21

5590:謎解き  

 フォルクスワーゲンの屋台骨を支えるゴルフのニューモデルである「ゴルフ8」の発売が日本でも開始された。

 先日フォルクスワーゲン小平からDMが来ていた。「新型Golfデビューフェア」「The new Golf あなたの想像より、新しい。」といった文言がカラフルなパンフレットに添えられていた。

 1.0Lのコンパクトなエンジンを搭載するNew Golfの実質的なベーシックモデルである「eTSI Active」の価格は3,125,000円。オプションや諸経費を含めると300万円台の後半となる。

 「今度のゴルフは売れないような気がします・・・搭載されるのが1.0Lのエンジンで、価格もかなり高めですからね・・・日本ではSUVに人気が集中してますし・・・」とチューバホーンさんは話された。

 今日は二人で連れ立って、ハンコックさんのお宅を訪問した。チューバホーンさんのお宅からハンコックさんのお宅までは車で1時間半で着いた。その道中、オーディオだけでなく車の話もしていたのである。

 まだ緊急事態宣言が解除されていないので、今日のハンコックさんのお宅でのOFF会は時間は3時間、マスク着用、外食なしということで執り行われた。

 OFF会の前半は「オーディオタイム」であった。最近、ハンコックさんは、20年近く使い続けられているWilaon Audioの「WATT3/PIPPY2」を、上下それぞれ別のパワーアンプで駆動するマルチウェイ駆動に挑戦されていた。

 そのマルチウェイ駆動に関して様々な試行錯誤を3人で検証してみたのである。WATT(Wilson Audio Tiny Totの略)は、それ単体で2ウェイスピーカーとして高い能力を持つモニタースピーカーである。

 そのWATTTにサブウーファーとしてのPUPPYが追加されたわけであるが、それぞれを別のパワーアンプで駆動すると良いのではないかとハンコックさんは判断されたのである。WATT3にはMark LevinsonのNO.23.5が、そしてPUPPY2にはSD-05があてがわれていた。

 第1の検証は、WATTとPUPPYへの接続方法の違いである。「WATT:正相 PUPPY:逆相」「WATT:正相 PUPPY:正相」そして「WATT:逆相 PUPPY:正相」という三つのパターンを試してみた。

 これは満場一致で「WATT:正相 PUPPY:正相」が一番良いとの結論が出た。第2の検証は、PUPPY2を駆動するSD-05のボリューム位置の検証である。SD-05のボリュームを上げれば、PUPPYの関与度合いがより上がることになる。

 ボリューム位置が11時、10時、9時・・・さらにプリアンプからの接続をSD-05のゲインがより低くなる「A-1」接続に変えてもみた。

 その結果は「A-1」接続を選択してボリューム位置を低めの9時あたりのポジションにするのがベストとの結論に達した。

 極力PUPPYの関与度合いを下げる状態が一番結果が良かったことになる。イメージとして「WATT3:95% PUPPY2:5%で鳴らしている」といった感じである。WATT3は単体で相当に優れた2ウェイスピーカーであるので、PUPPYは関与度合いを抑えに抑えて「最後の一摘みの塩」的な存在にすべきであった。

 「これで、オーディオタイムは終了ですね・・・後半はミュージックタイムでいきましょう・・・」という感じで中休みとなった。

 ティータイムで休息後「ミュージクタイム」に移行した。ハンコックさん愛聴のジャズレコードから3曲を聴いた。

 「バランスよくニュートラル・・・自然な質感で空間表現も広い・・・」高い評価がさっと下った。

 送り出しはORACLE DELPHIである。SMEのトーンアームの先にはオルトフォンMC20が装着されている。昇圧トランスとフォノイコライザーはフェイズメーション製。プリアンプはMark LevinsonのML1。

 「バランスが良くなりましたね・・・オーディオ的なレベルがぐんと上がりました・・・」と一同笑顔であった。その時ハンコックさんが「UESUGIのフォノイコも聴いてほしいんですよね・・・」という話をされた。

クリックすると元のサイズで表示します

 そこで「UESUGI」の真空管式のフォノイコライザーに接続が切り替わった。その型番は「UTY-7」。電源部が別躯体となっている。古い時代のこのメーカーの製品に使われることが多い渋い茶色の色合いが実に良い感じを出していた。見るからに「手を抜いていません・・・」という感じがひしひしと伝わってきた。

 DONALD BYRDの「FUEGO」からの1曲が再度かかった。先程、フェイズメーションのフォノイコライザーで聴いた曲と同じである。

クリックすると元のサイズで表示します

 1959年に録音されたかっこいいジャズが再度流れ出た。その変化量の大きさに、私はかなり驚いた。「音楽の躍動感というか浸透力が全く違う・・・」優等生的な整いの良さとは全く別のベクトルに音楽は移行していた。

 「音楽があるべき場所に移動した・・・」と内心感じた。オーディオ的な諸要素・・・SN、情報量、ワイドレンジ、空間表現の広大さなどといった物差しとは全く異なった「指標」がもたらされたような気がした。

 その後「オーディオタイム」は完全に終わり、真の意味合いでの「ミュージックタイム」となった。 

 時間は短めであったが、実に示唆に富んだOFF会であった。私にとっては色々な「オーディオ謎解き」の回答が断片的にもたらされたような気がした。



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ