2021/4/23

5531:リリー・クラウス  

 神田神保町にあるクラシック専門の中古レコード屋から出たのは午後5時を回っていた。手には一枚のレコードが入った袋があった。

 購入したのはリーリー・クラウスのピアノによるモーツァルトのピアノソナタ13番と16番その他が収録されたレコードである。
 
 レーベルはディスコフィル・フランセ。1950年代に録音されたもので、モノラルである。1950年代のフランス盤は、どこか高貴な響きがある。このレコードにも間違いなくその高貴な輝きがしっかりと含まれているはずであった。

 その後私は自宅へは向かわずに、中野坂上に向かった。中野坂上は、新宿まで地下鉄で数分という便利な立地にあるが、静かで暮らしやすい環境に恵まれている。

 青梅街道と山手通りが交差する場所にあるため、大きな道路沿いは交通量も多くにぎやかであるが、幹線道路から1本中にはいると、落ち着いた雰囲気に変わる。

 地下鉄の出口を出て少し歩いた。今日の昼間は25度を超えるような気温になり暑かったが、夕方になると上着を着ていても暑さはあまり感じなかった。

 「オーディオショップ・グレン」の小暮さんからメールが来たのは先週のことである。「もう一つソナスファベールの代表的なスピーカーが入ったから聴きに来ませんか・・・?」という内容であった。

 「オーディオショップ・グレン」の常設スピーカーは、ソナスファベールの「エレクタアマトール」である。

 このスピーカーは1988年に発売された。ラテン語で「選びぬかれた友人」と名づけられた小型2ウェイスピーカーである。

 エンクロージャーには無垢のブラジリアンウッドが採用されていて、フロントバッフルには本革が貼られている。その造形はイタリアらしい美しさに溢れている。

 大理石や木材を使用した専用スピーカースタンドにセットされた姿からは、創業者であるフランコ・セルブリンの情熱がひしひしと感じられる。

 その「エレクタアマトール」以外にもう1セット、ソナスファベールのスピーカーが入庫したようである。

 ふと頭に浮かんだのは、「ガルネリオマージュ」である。「ガルネリオマージュ」は1993年から2005年まで製造された。

 その後に続く「オマージュ・シリーズ」の先駆けとなったモデルである。キャビネットの表面に塗られるニスにも徹底的に拘り、リュート形状のキャビネットなど音響的にも練りに練られたものであった。

 ただし、そのニスは時間の経過とともに白濁してしまうという欠点があったようで、後期型では別のものに変えられたようである。

 「あるいは『アマティオマージュ』であろうか・・・」とも思いながら、目的地である白いビルに到着した。

 このビルの1階には週に1,2回は訪れる喫茶店「Mimizuku」がある。今日は小さな窓から店内の様子を少し窺っただけで店内には入らずに、階段を使って「オーディオショップ・グレン」が入っている4階に登っていった。



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