2021/4/4

5512:共通性  

 B&Wのスピーカーというと、高性能なモニタースピーカーというイメージが強い。実際に数多くのレコーディングスタジオでB&Wのスピーカーはモニタースピーカーとして活躍している。

 日本でもB&Wのスピーカーは人気が高く、多くのオーディオファイルにより使用されている。人気の高いB&Wのスピーカーの中でも一番人気なのが「805」であろう。

 歴史の長い805の現在のモデルは805の後に「D3」が付く。その現在の最新モデルであるD3シリーズは、最近生産中止が発表された。

 D3シリーズはすでに生産された在庫分だけが今後販売され、近い将来にニューモデルに切り替わる予定である。

 当然「805 D3」も生産が中止された。2015年に出たD3シリーズはすでに発売から6年が経過したので、モデルチェンジのタイミングだったのであろう。

 今日は、歴代のB&W 805シリーズの中でもっともセンシティブでセッティングにシビアな反応をすると言われている「805 SD」をお使いのgenmiさんが、我が家を訪れてくれた。

 genmiさんのお宅にお邪魔したのは昨年の2月のことである。その後コロナに翻弄される日々が続いたので、1年越しの「相互訪問」となってしまった。

 わが家のTANNOY GRFは1950年代の代物である。「骨董品」と揶揄されてもしょうがないほどに古い時代のスピーカーであり、genmiさんがお使いの805 SDとは対照的であり、得意分野も違う。

 しかし、そういった方向性の違うオーディオシステムであってもお互いにその違いを認め合いリスペクトし合う関係であれば、OFF会は実り深いものになる。

 昨年お伺いしたときにピアノの音がお好きと聞いた記憶があったので、OFF会の最初はピアノから入った。グレン・グールドの演奏でバッハのゴールドベルク変奏曲を聴いてもらった。

 グールドは「ゴールドベルク変奏曲」を2度録音している。1955年録音のデビュー盤と1981年のデジタル録音とである。

 かけたのは後者である。ゴールドベルク変奏曲はカイザーリンク伯爵の不眠症をいやすために作曲されたと言われているが、グールドの演奏では眠くなるどころか、精神を力強く高揚させる。

 さらにgenmiさんは「高音フェチ」とのことであるので、マリーナ・レベカのソプラノでドニゼッティのオペラのアリアをかけた。

 朗々と響く高音は耳の奥をくすぐるような独時の快感をもたらしてくれる。イタリアオペラの濃厚な味わいは、「癖が強い!」ところがあるが、否応なしに引き込まれる魅力に溢れている。ただし長時間聴くとちょっと胃もたれするかもしれない。

 小休止ののち、アナログへ移行した。まずかけたのはスコット・ロスの演奏によるラモーのクラヴサン曲集 第1巻。

 スコット・ロスが実際に住んでいたアサス城で録音されたもので、ダイナミックかつ繊細なロスの演奏が実に見事に記録されている。

 さらに次はグリーグの「ペールギュント組曲」から3曲を選択。ハイライトは「Solvejgs Lied」・・・Adele Stolteのソプラノが本当に素晴らしい。一時ではあるが天井界に連れて行ってくれる歌である。

 そんな感じでOFF会は進み、後半ではgenmiさんに持参してもらったCDをかけた。普段我が家では聴かないジャンルである。

 「MISTY」は山本剛トリオの今も語り継がれる人気作。抒情性と力強いスウィングが同居するピアノトリオの銘盤である。

 さらにジャズが続いた。SAMMY NESTICOが率いるSWR BIG BANDのエネルギッシュで明るい演奏がリスニングルームにぱっと広がった。明るく乾いた空気感が耳に心地いい。

 そして曲はポピュラー系に移行した。エリック・クラプトンの「Unplugged」から選択された曲は、息子の死を悼んで作られた「ティアーズ・イン・ヘヴン」。心に染みる名曲である。

 そして、genmiさんの愛聴盤である遠藤響子「Hotchkiss」から「ここにいる」を聴いた。「自然体」という表現がぴったりと隙間なく密着するような質感である。声もピアノも実に自然で変な脚色がない。無垢の音である。

 ジャズやポピュラー系であっても、アコースティックなものであれば、我が家のシステムでもどうにか対応できたようである。これがエレクトリック系や打ち込み系になると厳しいであろうが・・・

 前半、後半を終えた。珈琲を飲みながらの「オーディオ談議」の後、「おまけ」として急遽追加されたのは、チェロである。

 まずはフルニエのチェロでヴィヴァルディ。1952年の録音。モノラル。オーディオ的な意味合いでは良い音では決してないが、その演奏の気品は素晴らしい。

 そしてミクローシュ・ペレーニの演奏によるバッハ無伴奏。ペレーニの魅力といえば独自の音色と卓越したボウイングである。一音一音を丁寧にそして清澄な響きで演奏する。ペレーニが描くバッハの世界に聴き手は自然と入っていってしまう。その自然さは遠藤響子の「ここにいる」とも相通じる世界である。

 「ペレーニと遠藤響子が計らずしも示してくれた共通性は、もしかしたらGRFと805 SDとの間にも成り立つのかもしれない・・・」そんなことを思いながら楽しいOFF会は終了を迎えた。



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