2021/1/22

5438:洗浄前  

 レコード洗浄に関してしばし話した後に、「ちょうど最近購入してまだ洗浄していないレコードが1枚ありますから、試してみますか・・・」という展開になった。

 FMさんが持ってこられたのは10インチのレコードであった。ジャケットはメロディアの共通紙ジャケットである。

 その表面には表現主義的な手法による風景画が描かれていた。紙質は共産圏の当時の生産能力を如実に示すかのように粗悪なものであった。

 Ilze Graubinaのレコードであった。バッハのピアノ曲が収められているものであった。そのA面には「半音階的幻想曲とフーガ」が収められている。この曲を洗浄前の状態で聴いてみた。

このレコードは1961年のものである。60年前のレコードであり、この時代のソビエトのビニールの質は良いものではない。

 そのためサーフェスノイズは大きい。Ilze Graubinaはラトヴィア出身のピアニストである。優れたピアニストであったが、ソビエトでは特別に優遇されていたわけではないようで、レコードの録音は少ない。

 彼女のバッハの演奏は素晴らしい。「子供の頃からバッハはお気に入りの作曲家の一人でした。私はこの作曲家の多くの作品を学生コンサートやコンクールで演奏しましたし、教師たちはこの偉大な作曲家が内包する音楽への愛を私に教え込んでくれました。」と彼女は述べている。

 演奏は素晴らしいが、サーフェスノイズに埋もれがちになるピアノの音はややぼんやりとした印象を受ける。やはり60年という長い年月の間にレコードの表面は劣化が進んでいるのであろう。さらに1961年当時のメロディアの録音機材の性能の低さも影響しているのかもしれない。

 「半音階的幻想曲とフーガ」を聴き終えた。そして、そのレコードをレコードプレーヤーから取り上げて、部屋の後方の壁際に置かれたVPI HW-17の方に持っていった。

 HW-17に10インチの小さなレコードはセットされた。銀色に鈍く光るトグルスイッチを操作すると回転が始まった。

 専用ブラシをセットして丸い押しボタンを押すと洗浄液がブラシから出てくる。それをブラシが盤面にまんべんなく馴染ませていく。

 しばらく盤面は回転していた。そして、FMさんはその脇に置いてあるピンク色をした美容用顔面洗浄機を右手て取ってスイッチをオンにした。

 微細に振動するその顔面洗浄機をレコードに軽く押し当てて、円を描くようにゆっくりと回転させていた。

 2,3分そうしてから、専用ブラシをずらし、今度はバキューム用の器具をレコードの上にセットした。そしてもう一つのトグルスイッチを操作すると、かなり大きな音を立ててバキュームが作動した。そしてゆっくりと回転する盤面から洗浄液を汚れごと吸い取っていった。

 裏面も同じ作業をして完了である。時間して7,8分というところか・・・最後は白いクロスでレコードの表面に少し残った水分をふき取る。

 「これでレコード乾燥台にセットして自然乾燥させれば終了です・・・少しコーヒーでも飲みますか・・・」

 とFMさんはレコード乾燥台にそのレコードをセットされてから、一旦リスニングルームの外に出て行かれた。



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