2021/1/31

5448:無駄の堆積  

 AurexのCDプレーヤ1号機であるXR-Z90に一枚のCDがセットされた。セットされたのは、DANIEL LOZAKOVICHのヴァイオリンによるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が収録されたものであった。

 2019年、まだ世界がコロナ禍に見舞われる前の録音である。DANIEL LOZAKOVICHは2001年スウェーデンに生まれた。

 極めて優れた才能を有するヴァイオリニストで、その演奏についてボストン・グローブ紙は「落ち着いた物腰、澄みきった音色、みごとな技巧」と賛辞をおくっている。

 第1楽章を聴いた。Aurex XR-Z90、OPTONICA SM-3000 MK2、OTTO SX-551というシンプルな構成であるPaoさんのサブシステムの音の質感は、予想していたものよりも艶のあるバランスの良いものであった。

 もちろんPaoさんのメインシステムと比べると見劣りする点が多いのは事実であるが、かかっているコストを考慮すると、「相当に検討している・・・」と評価できるものと思われた。

 このシステムだけを聴いている分には「これはこれでいいのでは・・・」と思えるクオリティーを有していた。

 肩ひじ張らずに、穏やかな心情で聴ける音の質感で、圧迫感のない、軽やかな美しい音質に「そんなに悪くないですよ・・・十分に聴けます・・・」その評価をPaoさんに伝えた。

 「そう・・・そう思う・・・まあ、ハイファイとはちょっと違うけど、それほど悪くないかな・・・」とまんざらでもない表情であった。

 気を良くしたのか、続いてもう1枚別のCDを取り出して、CDを入れ替えた。Aurex XR-Z90はカセットデッキにカセットテープを入れるようにCDを縦にセットする。

 XR-Z90には小窓がついていて、その窓からCDが回転するさまを目で見ることができる。今見ると結構斬新でかっこいいデザインと言えるであろう。

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 次にかかったのは、EDGAR MOREAUのチェロによるヴィヴァルディのチェロ協奏曲であった。彼も若い。

 EDGAR MOREAUは1994年のパリ生まれである。2009年のロストロポーヴィチ国際チェロコンクールにおいて「最も将来性のある若手奏家」賞を受賞し、さらに2011年のチャイコフスキー国際コンクールで第2位となった。

 鮮度感溢れる演奏である。「やはり若いって良いな・・・」と、なくしてしまったものを惜しむような気持になった。

 「サブシステムか・・・まあ、趣味の世界は効率だけでは割り切れない世界である。物欲の沼にはまり込んでしまう危険性もあるが、趣味というものは無駄の堆積であってもいいのかもしれない・・・」とPaoさんのサブシステムを聴きながらぼんやりと思った。

2021/1/31

5447:SX-551  

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 「今は無き三洋電機はかってOTTO(オットー)というブランド名でオーディオ機器を生産・販売していたんだ。そのOTTOから1976年に発売されたのが、このSX-551なんだ・・・」

 「このスピーカーは、かなり気合が入っていてね・・・まずユニットが良い・・・低域用のは25cmコーン型ウーファーの振動板は西ドイツのクルトミューラー社にオーダーしたもので、北欧産の針葉樹パルプ紙を柔らかく厚手に抄造したものを採用しているんだ。かなりコストがかかっている。」

 「中域用の3.9cmソフトドーム型スコーカーの振動板も、その素材には動物性ファイバーと植物性ファイバーを混紡して織り上げたものが使われてたり、高域用の2.7cmソフトドーム型ツィーターも当時としてはかなり手の込んだもので、開発担当者の強い思い入れが感じられる。」

 「さらにキャビネットの突板として用いられているのは西アフリカ原産のブビンガ材で、これが実に良い発色なんだよね。木目の美しいその明るめの色合いはとても日本製とは思えないようなオーラを放っていたんだ。」

 Paoさんは片方のスピーカーのサランネットを取り外してユニットを見せてくれた。三つのユニットがきれいに配置されていて、アッテネータも装着されていた。

 「実はこのスピーカー、我が家に来たと時にはひどい状態でね・・・ネットワークとユニットは取り外して、オーバーホールしてもらい、キャビネットも補修のために専門の業者に送って、今の状態に仕上げてもらったんだ・・・」

 「そのためのコストは結構かかったけど、しっかりとメンテナンスしたから、見た目も良くなったし、今後10年間はトラブルもないはず・・・」

 Paoさんは、このスピーカーに結構な思い入れがあったのであろう。コンディションが悪かったものをヤフオクで落札して、かなりのコストをかけて復活させたようである。

 「このOTTO(オットー)というブランド名、もしかしたら音(おと)から来ているんでしょうか?」

 私は思いついてそう言うと「そうかもね・・・きっと語呂合わせという面もあっただろうね・・・このロゴもかっこいいよね・・・」

 Paoさんは一旦外したサランネットを元に戻しながら、そのサランネットの右上についている「OTTO」と記されたブランドロゴを愛でるように眺めていた。

 AurexのCDプレーヤー、OPTONICAのプリメインアンプ、そしてOTTOの3ウェイスピーカーというシンプルな構成が、Paoさんのセカンドシステムであった。それが6畳ほどの広さの部屋に綺麗にセットされていた。

 「聴いてみる・・・まあ、音の方は期待しないでね・・・こっちは音度外視だから・・・」そう言いながら、サイドテーブルの上に置かれた数枚のCDのなかから1枚を取り出した。

2021/1/30

5446:OPTONICA  

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 「まずはこのプリメインアンプ・・・見たことないでしょう・・・これはOPTONICAのSM-3000 MK2・・・」

 「OPT0NICAって知ってる・・・?」

 「聞いたこともありません・・・日本のメーカーなんですか・・・?」

 「もちろん・・・日本製・・・実はシャープが昔々オーディオブランドを持っていたんだけど・・・それがOPTONICA・・・そのOPTONICAブランドで1974年に出したのがSM-3000。その翌年に出たのがSM-3000 MK2なんだ・・・」

 「良い面構えしてるでしょう・・・これ・・・まさにMADE IN JAPANの真心が形になっているよね・・・実に良いな・・・」

 「このずらっと等間隔に並んだスイッチやノブの整然としたさま・・・フロントフェイスにおけるこれらの配置の素晴らしさ・・・眺めてるだけでもご飯が二杯はいけるって感じだよ・・・」

 Paoさんは、そう言って見たことも聞いたこともない日本製の古いプリメインアンプを紹介してくれた。

 「OPTONICAですか・・・しかし、また狭いところ突いてきますね・・・誰も知らないででしょう・・・そんなブランド・・・」

 「まあ、まあ・・・CDプレーヤーも結構レアだよ・・Aurexは知ってる・・・?」

 「Aurexは知ってますよ・・・確か東芝ですよね・・・東芝のオーディオブランドだったはず・・・」
 
 「正解・・・!オーディオブランドとしてはやはり『日陰組』に属するブランドだけど、OPTONICAよりはまだまし・・・という存在かも・・・でもやはりさすが東芝だけに、時折これはっと思わせる良い製品を出してるんだよね・・・」

 「このCDプレーヤーはAurex XR-Z90。1982年に発売されたAurexのCDプレーヤー1号機なんだ・・・なんとその当時の定価は225,000円もした。」

 「AurexのCDプレーヤーの1号機ですか・・・今見ると実に斬新ですね・・・このCDを縦に入れるのが、実に新鮮です・・・」
 
 「まだ、CDプレーヤーのデザインが固まる前だったからね・・・その後日本製のCDプレーヤーはほとんどのものがトレイ方式になっていくけど、CDプレーヤー黎明期にはいろんなものがあって、この縦にCDをセットするフロントローディング機構を採用したメーカーも結構あったんだ。」

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 Paoさんのセカンドシステムは、御本人が「珍品」と評する通りに珍しいもので構成されていた。

 AurexのCDプレーヤ1号機であるXR-Z90に、シャープの古のオーディブランドであるOPTONICAから1975年に発売されたSM-3000 MK2という型番のプリメインアンプというシンプルな構成で駆動系が構成されていた。

 そして、セカンドシステムの要となるスピーカーもやはり古いものであった。そして、駆動系同様見たことのないものであった。

 美しい突板に覆われたスピーカーのフロントには薄茶色の良い色合いのサランネットが取り付けられていて、ユニットは見ることができない。そのサランネットには小さなブランドバッジが右上に取り付けられていた。

 その小さなブランドバッジにはアルファベットが四つ並んでいた。「OTTO」と見て取れた。今見ると絵文字のようにも見える。

2021/1/29

5445:甘泉園公園  

 最近の気候はまさに日替わりである。小春日和かと思わせておいて、翌日には真冬に逆戻りということが何度も繰り返されている。

 今日は3月下旬並み暖かさである。しかし明日の天気予報は最高気温が6度ほどで今日よりも9度ほど下がるとのことである。さらに夕方には雪が降るという、今日の気候からすると想像もつかない急展開である。

 暖かい空気のなか、車を走らせた。新青梅街道を延々と走ってゆき、何度か交差点を曲がると、道は新目白通りに入った。

 新目白通り沿いのコインパーキングに車を停めた。道は思いのほか空いていた。やはり緊急事態宣言の影響であろうか。

 都電 荒川線の「面影橋」駅近くのコインパーキングから、Paoさんのお宅まで徒歩で数分である。

 予定していた時間よりも早く着きすぎたので、その途中にある新宿区立 甘泉園公園に立ち寄ってみることにした。

 甘泉園公園はメインが回遊式庭園で、その脇には遊具を備えた児童公園とテニスコートが併設されている。

 一旦中に入ってしまうとここが新宿区とは思えないようなのどかな景色と空気感に包まれる。

 「甘泉園」の名は、ここから湧く泉の水がお茶に適していたところからきたと言われている。池を抱く日本庭園が周辺とは別世界の静けさを演出ている。

 Paoさんのご自宅はこの甘泉園公園に面している。昭和の時代を濃厚に感じさせる古い家屋で、親から相続して今はPaoさんが一人で暮らしている。

 回遊式の日本庭園をくるっと一周した。その真ん中には大きな池がある。池の中には鯉がゆったりと泳いでいた。

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 「セカンドシステムか・・・そういったものを持っているのもいいかな・・・いやいや・・・現代はミニマリストがかっこいいとされる時代である。不要な持ちものを減らし、本当に自分に必要なものだけで暮らすのが時代の潮流である・・・」

 「Paoさんのセカンドシステムって、まったく予想がつかないな・・・きっと変わったものばかり集めたんじゃないの・・・」

 そんなことをぼんやりと思った。ベンチがあったので、少し座った。スマホで時刻を確認した。予定の時間よりも10分ほど早かったが、「まあ、いいか・・・少し早い分には・・・」と思って、公園を出て、Paoさんのお宅へ向かった。

2021/1/28

5444:セカンドシステム  

 「セカンドシステムだよ・・・セカンド・・・taoさんも随分と前にセカンドシステム持っていたでしょう・・・」Paoさんはそう言った。

 「まあ、メインシステムが行くとこまで行ってしまった感があって、もういじりようがない感じになっちゃったのでね・・・完全に遊びの領域でもうひとセット揃えようか思いついてね・・・」

 Paoさんのメインシステムは、スピーカーがYAMAHAのNS-5000である。これをマーク・レビンソンのNo.26LとNo.27.5の組み合わせで鳴らされている。送り出しは昨年、Cary AudioのCD 306 SACを導入された。しかもかなりレアな存在となるブラックタイプである。

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 「仕事を完全にやめてしまったからね・・・時間が余ってしまって・・・この家に一人暮らしだから、部屋も空いているし・・・」

 Paoさんは、定年退職後1年ごとに更新できる嘱託職員として区役所で働いていたが、昨年は更新しなかったようである。

 「あと2年ほどは働けたんだけどね・・・なんだかやってられないって気になってね・・・まあ、年金もたっぷりあるし悠悠自適だよ・・・」と、昨年話されていた。

 「もう揃えたんですか・・・一式・・・?」

 「そうそう・・・全部ヤフオクでね・・・ラックだけは自作したけど・・・コロナで巣籠だったからね・・・」

 「結構お金かかったんじゃないですか・・・?」

 「ぜんぜん、メインシステムに比べると本当に安いよ。音は置いといて、昔懐かし個人的に思い入れのある珍品ばかり集めたからね・・・そういった古いものはとても安く出品されているんだ・・・もちろんコンディションが悪いものが多いので、その辺は気を付けないといけないけど・・・ジャンクの場合は修理してくれるところも知っているから、ジャンクの場合はそこに持ち込んで直してもらってね・・・」

 「音はひどいよ・・・笑っちゃった・・・まあ、見てるだけでもいいって感じで・・・BGMとしては聴けなくもない・・・かな・・・」

 「つまりビジュアル系ってわけですね・・・」

 そんな会話をしたのが先週のことであった。

 「セカンドシステムか・・・」我が家にも10年以上前にはセカンドシステムがあった。「なんで二つあるの・・・?」という家族からの攻撃にあって、撤退を余儀なくされたのである。その点、Paoさんは独り暮らしなのでやりたい放題ができるのであろう。

2021/1/27

5443:第2弾  

 ZOOMをノートパソコンで立ち上げて、「ミーティングに参加」をクリックした。すると、画面に映し出されたメンバーたちの表情からは、今が佳境といった感が表出されていた。

 残るセクターは七つという状況であった。「アルプ・デュ・ズウィフト」のセクターは全部で21ある。ここからの頑張りが1時間切りの目標達成のためには必須となる。

 メンバーは皆苦しげな表情であったが、明確な目標があったので、それに向けて力を合わせていた。順次先頭を交代しながら良いペースで走っている感じであった。

 Zwiftの画面を見ることができないので、状況を正確に把握することができないが、ZOOMの画面を見ながら、私もLOOK 785 HUEZ RSのクランクを回し続けた。

 残りのセクターを順調にこなしていって、ついに最後のセクターとなったようである。ZOOMに映る皆の表情が一層険しいものになった。ラストスパートに入ったようである。

 そして、ゴールを迎えた。1時間を切れたようである。58分台後半のタイムとのことであった。どうやら今日のミッションは無事達成できたようである。

 私自身は今回のミッションには、「メカトラ」で参加できなかったが、来週のバーチャルチームライドでは、ヒルクライムミッション第2弾となる「ventoux KOM」にチャレンジする予定となった。

 「ventoux KOM」は、ツール・ド・フランスでも登場する魔の山「モン・ヴァントゥ」を模したzwiftのコースである。

 KOM計測区間は、距離が19kmで獲得標高が1480m、平均斜度は8%とのことである。その数値からしても、相当にきついヒルクライムコースである。

 前回、チームで走った時には1時間35分かかったとのことであったので、「では目標タイムは1時間30分で・・・」ということになった。

 「アルプ・デュ・ズウィフト」はセクターがカーブごとに区切られていたので、先頭交代がしやすかったが、「ventoux KOM」では、そういった分かりやすい先頭交代の目安がない。

 「一定の距離ごとに先頭交代しますか・・・」

 「時間で交代しますか・・・5分ごととか・・・」

 いくつか意見が出た。「まとめる」機能が働いているので先頭を走るメンバーには余分に負荷がかかる。先頭交代をスムースにかつタイミングよく行うことはチームとしてのタイムを短縮するうえで重要なテーマである。

 今日は不完全燃焼状態であったので、来週は「メカトラ」を起こさないよう万全に準備をして、厳しいヒルクライムコースにメンバーと一緒にチャレンジしたいところである。  

2021/1/26

5442:自主練  

 スマホの具合が悪く、Zwiftに接続できなかったので、バーチャルチームライドには参加できず、結局自主練をすることになってしまった。

 「しょうがない・・・スマホは後でauショップに行って診てもらうしかない・・・いつもジムでやっているメニューでもこなすか・・・」

 そう思いながら、ZOOMを立ち上げる予定であったノートパソコンを立ち上げてYouTubeを開いた。そして「Mt.富士ヒルクライム」と検索した。

 するとずらっと「Mt.富士ヒルクライム」の走行動画が並んだ。その中から適当に一つを選んだ。2018年の大会の動画であった。

 動画上の天気は曇天であった。霧雨が少し降っているような天候である。それは窓の外に広がっている景色と一致していた。

 その動画を見ながら、5分間のウォームアップを行った。5分経過したら、出力を200ワット程度に上げて、その後55分間その出力を維持する。

 先日メールが来ていた。今年のMt.富士ヒルクライムの開催日が決定したという内容のものであった。

 「富士の国やまなし 第17回Mt.富士ヒルクライム実行委員会は、本大会を2021年6月6日(日)に開催することを決定いたしました。実行委員会では新型コロナウイルス感染拡大が続く社会情勢を念頭に置き、本大会を安全に運営し、皆さまに安心してご参加いただくことを最優先として検討を進めてまいりました。安心・安全な運営のための新たな企画や制度もご用意し、このような情勢下でも目標を持ってサイクリングに取り組む全国のサイクリストに挑戦の機会を提供させていただくために、関係各所との協議を経て、本日の発表に至りましたことをご報告いたします。」

 「開催日が決定か・・・今年はいつも通りの運営でレースができるのであろうか・・・」と思った。

 昨年2020年は開催日が延期され、運営方法も感染対策のため随分と変更があった。「多少の変更があってもいいけど、できれば防寒着などの入ったリュックを背負わずに走りたいな・・・」とそのメールを読んで、感じたのであった。

 選択した動画では5km通過時点でのタイムは17分25秒であった。「速いな・・・このくらいのタイムで走れればいいな・・・」などと思いながらクランクを回し続けた。

 「このペースで走れれば10km地点では34分くらいかな・・・15km地点では50分くらい・・・1時間20分を切れるペース・・・」

 私のベストタイムは1時間22分48秒である。1時間20分が切れればいいのであるが、それは現状ではかなり高い目標となっている。

 ようやく所定のトレーニングを終えた。汗が大量に流れたので、タオルで汗を拭った。5分間のクールダウンをしている時、「アルプ・デュ・ズウィフトの方はどうなったであろうか・・・1時間切れたのかな・・・」とバーチャルチームライドでチームメンバーがチャレンジしている1時間切りが気になった。

 「そうだ、ZOOMを繋いでみよう・・・」と思い、ノートパソコンに表示されているYouTubeを消して、ZOOMを立ち上げた。

2021/1/25

5441:接続  

 「リアル」から「バーチャル」に切り替わったチームライドも3週目を迎えた。「バーチャル」の良いところは天気を気にしなくてもいいところであろう。

 テレビでは日曜日には平野部でも積雪の可能性が高いと伝えていたが、日曜日の朝、寝室の窓から外を覗いてみると、そこには真っ白な世界が広がってはいなかった。雨が降り続いていたが、雪には変わらなかったようである。

 雪が積もると、車が使えないうえ、自宅の前の道路の雪かきをしないといけないので気が重かったが、いつもと変わらない景色を目にしてほっとした。

 1階に降りて行って朝食を摂った。「バーチャルチームライド」の場合、スタートが8時半なので朝はゆっくりとできる。

 「リアル」の場合は7時には自宅を出ないといけないので6時には起きだす。日曜日の朝をのんびりと過ごせることも「バーチャル」の良いところである。

 今日のコースは「TOUR OF FIRE AND ICE」である。前半と後半で全くコースの状況は変わる。

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 前半は多少のアップダウンはあるが、ほぼフラット。後半は「アルプ・デュ・ズウィフト」を上る。

 「アルプ・デュ・ズウィフト」は距離が12kmで平均斜度が8.5%と厳しいヒルクライムコースである。

 「アルプ・デュ・ズウィフト」は、ツール・ド・フランスで有名なラルプ・デュエズをそっくり模倣したコースとなっており、コーナー(セクター)の数も同じく21である。

 この「アルプ・デュ・ズウィフト」を1時間以内で走り切れば、まずまず健脚とのことである。ここをチームで走って1時間を切るというのが今日の目標であった。

 「まとめる」機能が働いているので、一人で走る時とは勝手が違う。先頭を引く者は後ろに引っ張られるところがあり、順番に先頭交代をしながら走ることになる。

 スタートの15分前になったので準備に取り掛かった。まずはサイクルウェアに着替えた。走っているうちに暑くなってくるが、走り初めはやはり寒い。長袖のサイクルウェアを選択した。

 私はZwiftはスマホで、ZOOMはノートパソコンで立ち上げる。スマホはケースの裏側に、ガーミンのサイコン用のレックマウントに取り付けられるようにアダプターが取り付けられている。スマホでは画面が小さいのが難点であるが、慣れてしまえばどうにかなるものである。

 スマホの画面上のZwiftのアイコンをクリックしたのは、スタート前10分ほどの時である。しかし、Zwiftの画面には見慣れない表示が出た。

 「Zwiftのサーバーに接続できません」と表示されたのである。Zwiftに関しては今までトラブルは一度もなかった。「あれっ・・・なんだ・・・?」と焦った。

 「ここは落ち着いて・・・とりあえずスマホを一度再起動させてみよう・・・」と思い、スマホを再起動させた。

 そして、再度チャレンジしたが結果は同じであった。スタート時刻は迫ってきていた。「まずい・・・もう一度試そう・・・」と、再度スマホを再起動させて試したが結果は同じである。

 スマホを確認すると何故かしらインターネットに繋がらない状態になっていた。昨日までは全く問題なく動いていたのに、その原因が思い当たらなかった。

 ZOOM用に使うノートパソコンは年末に新調したもので、Zwiftをインスツールしていない。「どうしたものか・・・」と思案しているうちにスタート時間となってしまった。

 リーダーからスマホに電話があった。参加表明していたのにスタートに間に合わなかったので心配して連絡をくれたようである。

 「スマホの具合がおかしくて、Zwiftに繋がりませんので、今日は自主練します・・・」と告げた。

2021/1/24

5440:マリア・ユーディナ  

 マリア・ユーディナの演奏による10インチレコードの盤面に、zyxのカートリッジがゆっくりと降ろされた。

 バッハの「半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV 903」が収録されたのは1948年の9月である。70年以上前の録音である。

 古いレコード特有の濃い目のサーフェスノイズがしばし続いたのち、彼女のピアノ演奏が颯爽と始まった。

 マリア・ユーディナはスターリンお気に入りのピアニストであった。彼女が録音したモーツァルトのピアノ協奏曲第23番は、スターリンの求めに応じて演奏されたものである。

 ただし、マリア・ユーディナは体制に迎合するところが全くなく、自分の信ずるところをそのまま言動に表す人であったようで、当局からの締め付けにあうことも多かった。

 有名なエピソードが残っている。上記のモーツァルトのピアノ協奏曲第23番のレコードの謝礼として多額の現金を受け取った際、彼女はその礼状に「ご助力に感謝します、イオシフ・ヴィサリオノヴィッチ。私はあなたのために日夜お祈りするでしょう。あなたが人民と国家に対して犯した大罪を、神がお許しくださるように」と記したと伝えられている。

 上記のエピソードが真実であったかどうかは不明であるが、彼女のひととなりを表すものである。

 その演奏は 奔流のような勢いと骨太な明瞭さにあふれている。純粋な音楽だけが大平原の中を進む列車のようにまっすぐに進むさまが脳内イメージ・スクリーンに映し出された。

 「半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV 903」の後には「前奏曲とフーガ イ短調 BWV543」が収録されている。

 こちらも「怪演」である。聴くものを捉えて決して離さない腕力はすごいものがある。演奏そのものが宗教的な祈りであるかのような真摯さに満たされていて、夾雑物の全く含まれない純粋性は稀有と言っていいかもしれない。

 このレコードも古いもので音質が良いとは言えない。盤面の状態も古い時代のメロディアのそれであるが、そういったマイナス要素が彼女の芸術性を損じることがないのは実にありがたいことである。

 カートリッジが拾った音楽信号は、その後三つのFM Acousticsのオーディオ機器により変調・増幅されて、VerityAudioのParsifal Encoreによってリスニングルームに放たれる。

 VerityAudioのParsifal Encoreは、全く知らなかった。決して最新のスピーカーではないようであるが、その姿同様清澄な響きが美しいスピーカーである。

 今日は二人のロシアのピアニストを堪能した。コロナウィルスが蔓延している時期なので滞在時間は1時間半ほどと短めであったが、濃厚な音楽体験ができた。 

2021/1/23

5439:洗浄後  

 しばし待っていると、FMさんがコーヒーカップを二つ小さな木製のお盆にのせて持ってきてくれた。イタリアンローストの濃いめの味わいのコーヒーを飲みながら、しばし雑談をした。

 話題はやはりレコードである。「メロディアのレコードは、ここ4.5年嵌まってます・・・何というか純粋というか、飾り気がないというか・・・すっぴんなんですよね・・・それが良いですね・・・」とFMさんは話されていた。

 珈琲を飲み終えて、先程VPI HW-17を使って洗浄したレコードを聴いてみることになった。レコード乾燥台に置かれていた10インチのレコードが再びORACLE DELPHI5のターンテーブルにセットされた。

 FMさんのレコードプレーヤーはDELPHI5であるが、通常のモデルとは違い、ベース部分のアクリルがブラックアクリルである。

 DELPHIの30周年アニバーサリーモデルである。通常のモデルとの違いは、ベース部分がブラックアクリルになることと、装着されるアームがSMEのシリーズ5になることであった。

 シリーズ5の先端にはZYXのOMEGAがセットされている。その針先がゆっくりとIlza Graubinaのレコードの表面に降りていった。

 さて、洗浄後の音の印象はかなり変わった。古い時代のレコード特有の濃いめのサーフェスノイズがなくなることはないが、ピアノの音の質感は明らかに鮮度が上がった。

 「はやり効果がありますね・・・洗浄前はくぐもった感じがありましたが、それが随分とすっきりとしました・・・」バッハの「半音階的幻想曲とフーガ」を最後まで聴き終わった。
 
 「残念ながら、HW-17はもう正式には輸入されていないようです。本国でもカタログ落ちしたのかどうかは不明ですが、HW-16.5の方はまだ販売されているようです・・・定価が128,000円ですから、まずまずリーズナブルだと思いますよ・・・」

 「この美容用洗顔機は、数千円で購入できます・・・レコード洗浄液はいろんなものが出ていますが、私は最近HANNLのものを使ってます。500mlで4,000円ぐらいです。」

 FMさんの話を聞きながら、「15万円ほどの予算でレコードクリーニングセットが揃うか・・・」と頭の中の電卓を叩いていた。

 「じゃあ、今度は同じメロディアのレコードですけど、雰囲気のガラッと違うピアニストをかけてみましょう・・・ちょうど同じ曲の入ったレコードがありますから・・・」

 「スターリンに愛されたピアニストとしての逸話が有名な、Mariya Yudinaです。鋼鉄の女という感じですかね・・・」

 そういうと、整然と整理されたレコード棚から、一枚のレコードを慎重に取り出した。先ほどと同じく粗悪な紙製の共通ジャケットに入れられた10インチのレコードであった。



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