2020/12/27

5409:沼  

 しばしの雑談タイムを経て、レコードを聴かせてもらった。フォノイコライザー、プリアンプ、そしてパワーアンプがFM ACOUSTICS製であるFMさんのオーディオシステムがどのような音を奏でてくれるのか、その興味は相当に高まっていた。

 まず、FMさんが選択して、DELPHI5のターンテーブルに乗せたのは、ネッリ・シュコルニコワのレコードであった。

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 PARSIFAL ENCOREからまず放たれたのは、ヘンデルのヴァイオリン・ソナタ第1番であった。ピアノ伴奏はユリア・グシャンスカヤである。
 
 清澄な透明感を有しながら、強靭さをも感じさせる音の質感に感心した。その音は鼓膜を通るとすぐに心の襞にすっと染み込んでくるような感覚であった。

 ハイエンド系のシステムらしく見通しのとても良い空間表現力は、PARSIFAL ENCOREがもたらす美点であろう。

 そして鋭敏な切れ味の良さを感じさせながらも、濃いめの陰影感が音楽の立体感や奥行き感を彫り深く表現してみせるのは、きっとFM ACOUSTICSの製品のもたらす美点であろう。

 FM ACOUSTICSの音は「中毒性のあるの音」と評されることが多いが、確かに他にあまり類のない感じの麻薬的な美音を醸し出す機器なのかもしれない。

 私の個人的な印象としては、真空管の音色に近い感じがする。細かな音の情報量は多いけれど、けっしてそのことが音楽性からの乖離を伴わない。

 ヘンデルのヴァイオリン・ソナタ第1番が終わった。その後に続いたのバッハのシャコンヌである。無伴奏で奏でられるネッリ・シュコルニコワのヴァイオリンは、FMさんのオーディオシステムとの相性が抜群に良いようであった。

 バッハのシャコンヌが終わった段階で、ZYX OMEGAの針先は一旦盤面から上げられた。「とてもいい感じで鳴っていますね・・・」と一言、私の口から漏れ出ると、「FM ACOUSTICSって好きな方とダメな方とにはっきり分かれるんですよね・・・taoさんは普段真空管アンプを聴かれているから、相性はかなり良いと思いますよ・・・どうですか、いっそFM ACOUSITCSを試されてみては・・・」とFMさんは笑われていた。

 続いてかかったのは、ウラディミール・マリーニンであった。かかったのは、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ KV 305である。ピアノ伴奏は マリア・シュテルン。

 「なんだか・・・確かに麻薬的だな・・・」といった印象を受ける。空腹を抱えて、炊き立ての白米を一口頬張った時のような、じんわりとした幸福感に浸りながら、聴き進んだ。

 そして、レコードを聴き始めてまだ1時間も経たないうちに「FMさんがFM沼に嵌って抜け出せない理由が分かるような気がする・・・」という気持ちになった。

 その後も何枚かのレコードを聴いた。FM 122はイコライザーカーブを変えられる。古い時代のモノラルレコードの場合、そのレーベルに合わせて、FM 122のカーブを変えられていた。

 「完結している世界観があるな・・・」そんなことを思いながら、オーディオタイムを過ごした。

 そして「価値観というか世界観というべきか・・・そういったものがしっかりとしていると、やはりぶれないんだな・・・それが沼であっても、ぶれずにずぶずぶと沈んでいくのはむしろ幸せなのかもしれない・・・」そういった思いを強くしたOFF会であった。



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