2020/11/5

5357:故障  

 喫茶店「Mimizuku」に立ち寄ったのは、午後3時過ぎであった。大田区にある顧問先での打ち合わせの帰りであった。

 車をいつものコインパーキングに停めて、少し歩いた。今日は穏やかな秋晴れである。ゴルフやテニス、ロードバイクでのツーリングなどで過ごすことができたら最高な気候であるが、仕事を休むわけにはいかなかった。

 古びた木製のドアは陽を浴びていた。陽光に照らされた木材は独特の香りを放っていた。古びて朽ちていこうとする木が発する匂いであった。

 扉を開けて中に入った。カウンター席にはノートパソコンに向かう人影があった。「ゆみちゃん」である。相変わらずテレワークである。

 「いらっしゃい・・・」女主人のくぐもった声が店内に静かに響いた。私は「こんにちは・・・まだ、テレワークなんだね・・・」と、「ゆみちゃん」に声をかけながら、カウンター席の一つに陣取った。

 「ええ、まだまだ当分テレワークです・・・コロナが収まっても、もしかしたら続くかも・・・会社に行くのは週に1回だけです。」

 彼女は少し手を休めた。彼女は新宿区内のIT企業に勤めてる。3月ごろからテレワークが始まった。

 私はブレンドコーヒーを頼んだ。しばしの時間出来上がっていくコーヒーが放つ緩やかな香りを楽しんでいた。

 私と「ゆみちゃん」は、近況を報告しあった。「そうそう、YAMAHAのカセットデッキ壊れちゃったんです・・・どこかに修理に出さないと・・・」彼女はそのなかでそう話した。

 彼女の家にはカセットデッキがある。彼女は31歳。カセットテープを知らない世代である。しかし、なぜかしら若い世代の人でも、カセットテープに興味を抱くことがあるようである。

 そのきっかけとなったのは、彼女が追っかけをしているインディーズバンドである「ねこ」が、CDと同時にいつもカセットテープでアルバムを発表することであったようである。

 彼女はいつもCDとカセットテープの両方を購入して、カセットテープは1970年代のSONY製のラジカセで聴いていたが、数年前にカセットデッキを購入して、古いオーディオ機器に接続して聴くようになっていた。

 彼女は選んだカセットデッキはYAHAMA製である。型番はK-9である。カセットホルダーがない独特のデザインで、彼女のお気に入りポイントはアナログメーターである。

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 「夜、部屋を暗くして聴いて、このメーターが淡い照明のなかで動くのを見るのが好き・・・」と彼女は話していた。

 1981年発売の古い製品である。購入したのは中目黒にあるカセットテープ関連製品の専門店である「Ruts」である。ここにはミュージックテープが大量に在庫されている。さらにカセットテープを再生するための機材が整備されて販売もされている。

 「そういった古い時代のオーディオ機器を修理してくれるところはいくつかあるからね・・・」と私はスマホを操作した。

 「ここがいいかもね・・・カセットデッキ専門の修理をしているようだから・・・」と彼女に薦めたのは「西村音響店」である。



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