2020/11/3

5355:ORPHEUS  

 大川さんのお宅でModel5000を見かけるまで、Zandenというメーカーに関する知識はゼロであった。日本のメーカーであるが、日本での知名度はとても低い。海外、特にアメリカなどでは比較的有名なようである。

 
 我が家で使用しているカートリッジのメーカーであるZYXもそういったところがあり、日本よりもアメリカやドイツで有名で販売も海外が中心なようである。

 残念ながら、Zandenのデジタル機器はすでにディスコンになっていて、現在はフォノイコライザー、プリアンプ、パワーアンプを2シリーズ製造している。

 Zanden Model5000でコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲とモーツァルトのピアノ協奏曲第20番のそれぞれ第1楽章を聴いた。

 実にきめ細やかな音質である。さらっとした手触り、肌触りを感じる。たとえるならば「春の風」であろうか・・・といっても「春一番」ではない。3月の中旬、厳しかった寒さが和らぎ、春の到来を告げるような柔らかい風である。

 ORACLE CD2000、Zanden Model5000、COPLAND CTA301、COPLAND CTA504、そしてMAGICO A3というラインがスムースにつながり、途中での混濁が一切ないようななめらかを感じるバランス感覚である。

 続いてはDACがKRELL STEALTHに切り替わった。グレーの色合いの1Uサイズで「仕事人」的な風貌のSTEALTHである。

 「STEALTH」という単語を目にすると反射的に「スティルス戦闘機」を連想してしまうが、レーダーに捕捉されない真っ黒な戦闘機のように、身を潜めて音色を支配する「影の仕事人」的な性格を有しているのかもしれない。

 先ほどと同じく2曲の協奏曲のそれぞれ第1楽章を聴いた。かなり古い時代のDACではあるが、投入された技術は実に確かなものであったようで、緻密な輪郭描写は、1990年代のハイエンドサウンドという印象である。

 KRELLの現状はきっと惨憺たるものであろうかと想像されるが、もっともKRELLが輝いていた時代の輝かしい製品である。

 その輝かしさや誇りのようなものが感じられる1990年代ハイエンドサウンドは、コロナ禍で落ち込みがちな気分を盛り上げてくれる。

 最後に登場となったのは、ORPHEUS ONE SEである。その外観はシンプルである。無駄が一切ない感じである。

 機能がデザインを決める的な指向性を有しながらも、その実は恐ろしいほどにデザインにこだわっているという感じであろうか。

 それをイタリア的なおおらかさでひけらかすのではなく、理知的に冷静に抑えて表出するという感じでまとめられている。

 ORPHEUSの製品を見るのも聴くのも初体験であるが、少なくともその外観に関しては、好印象を持った。「こういう感じ実は大好きなんだよな・・・」と思ったのである。

 3度目の二つの第1楽章を体験した。3度目となると飽きてきそうであるが、大川さんの選曲が良かったのでそういうことにはならなかった。

 むしろ、ONE SEになって実に新鮮な風を感じた。「やっぱり、見た目は人を裏切らない・・・」とも思ったりした。

 デザイン・外観に好印象を持ったONE SEであるが、その奏でる音にも好印象を持った。この3台のDACの中では比較的新しい(といっても10年以上前の製品であるが)ためか、SWISS MADEの高性能さゆえか、一番音がフレッシュに感じられた。

 見た目はどちらかというと繊細系の分類に入る。しかしその音は柔らかさ、しなやかさという要素に振れた音ではなく、結構力感もある。

 ムキムキのマッチョではないが、「細マッチョ」とでも評すべきか・・・しなやかであるが力強い筋肉である。

 しなりをうまく利用して飛距離を稼ぐタイプである。瞬間的なヘッドスピードは45m/sを超えてくる感じである。芯を食えば250ヤードを超えるであろう。

 3台のDACはその個性的な外観の通り、それぞれが魅力的な音を聴かせてくれた。どれが優れているかというものではない。どれが自分の好みに合っているかという観点から、この3台を見た場合、私の場合はORPHEUSを選択するのかもしれない。



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