2020/11/1

5353:ワイド&ロー  

 青梅街道から五日市街道に抜ける道の一つに向かって右折した。脇道に入ると極端に道幅が狭くなる。対向車が来たらすれ違えないような細い道を進んでいって、どん詰まりの私道に車を入れた。

 車から降りて大川さんのお宅のチャイムを鳴らした。「どうも・・・どうも・・・」という感じで大川さんは出迎えてくれた。

 リスニングルームに入って、リスニングポイントに置かれたウェグナーがデザインした3人掛けソファに腰をかけて、しばしの雑談タイムを過ごした。

 濃い目の味わいのコーヒーを飲みながら、「今年の12月でいよいよ定年ですよ・・・まあ、65歳迄は希望すれば再雇用で働くことはできますが・・・年収は半分以下、人によっては3分の1になる人もいてね・・・ちょっと気が抜けそう・・・」大川さんは目前に迫った定年後の生活について語った。

 私よりも3歳年上である大川さんにとって、今年は一つの区切りとなる年になるようであった。50歳後半から60歳になるまでの期間は、いろんなことが変化する。子供たちは大学を卒業して独立していき、人によっては孫を抱くようにもなる。

 仕事面でも55歳での役職定年を経て60歳で定年を迎え、第一線を退く。体力や健康面においても衰えがはっきりと目に見えてくるようになる。

 自分の人生を振り返り、過ぎにし方を振り返る時間も増えてくる。そんな時期にある二人には共通の話題がいろいろとあった。

 コーヒーを飲み干して、今日の本題に戻った。新しいDACである。「これですか、オルフェウスのDACって・・・このサイズが良いですね・・・1Uサイズって独特のかっこよさがありますよね・・・」私は大川さんの大きめのオーディオラックの一枚の棚板の上に置かれた新しいスイス製のDACを眺めながら話した。

 オルフェウスのDACの製品名は「ONE SE」である。大川さんによると、オルフェウスの初期の製品には、「ONE」以外にCDプレーヤーである「ZERO」、プリアンプである「TWO」、パワーアンプである「THREE」、プリメインアンプである「FOUR」とフルラインナップを揃えていたようである。

 私は不勉強でオルフェウスの製品については知識がほとんどないのであるが、その姿形は確かに古い時代のGOLDMUNDを思わせるクールな雰囲気をまとっている。

 「オルフェウスの現在の製品は全く違うものになっています。この初期の時代の製品だけなんです・・・こういうきりっとした雰囲気を持っているのは・・・」と大川さんは説明してくれた。

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 1Uサイズは高さがなく横幅が広い。車のデザインでスポーツカーやクーペなどの背の低いタイプの車を「ワイド&ロー」と表現することが多いが、このオルフェウスのDACは「ワイド&ロー」である。

 車の世界では背の高いSUVが全盛であり、「ワイド&ロー」の車はすっかりと影を潜めているが、「ワイド&ロー」はやはり独特の精悍さを持っているものである。



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