2020/10/11

5332:意表を突く  

 私は完全に意表を突かれた感じであった。「なんだこれは・・・全く予想外のCARY AUDIO・・・真空管アンプのメーカーじゃなかったっけ・・・CDプレーヤーなんか出していたんだ。」

 Paoさんは説明を続けた。「これは、型番にSACDと入っているように、SACDもかかる。SACDがかかるって大きいよね。一体型だけど、高機能プレーヤーってわけだ・・・」

 Paoさんは得意気であるが、ソフトとしてのSACDは、いまや「風前の灯」と評してもいい状態である。音楽はネット配信で聴く時代である。SACDがかかることが決めてという時代ではない。

 何かしら腑に落ちないものを感じながら、「しかし、音はもしかしたら良いのかもしれないと・・・」と思い始めていた。

 先日、このリスニングルームで聴かせてもらったYBAのCDプレーヤーも、全体としてつかみどころのないデザインデあったが、音の印象は良かった。

 このCD 306 SACDも、そのデザインといい、型番といい、なにかしら妙な雰囲気をまとっているけれども、音楽の再現性には優れているのかもしれない。

 Paoさんがまず取り出したCDは、やはりマーラーであった。Paoさんは大のマーラー好きである。交響曲第5番の第2楽章がかかった。

 その大蛇がうねるように進行するマーラーの音楽に耳を傾けていると、「かなり基本性能はしっかりとしているな・・・」と感じられた。

 音が薄くならないし、楽器が重なりあっても混濁した感じがない。クリアな空気感が維持されながらも、薄く軽めに推移していかないのは、好印象であった。

 第2楽章が、静かに幕を引いた。リモコンを操作してトレイからCDを取り出しているPaoさんは「結構良い線いってるよね、このプレーヤー・・・」と、私に向かって言っているのか、独り言を言っているのか、分からない感じて呟いた。

 「確かに基本的な性能は相当しっかりしてますね。新品の時の価格は相当高かったんじゃないですか・・・」と私が言うと、Paoさんは、「120万円だよ・・・新品の時の販売価格は・・・それが中古になると225,000円だ・・・」と返答した。

 「225,000円ですか・・・良い買い物をしたんじゃないですか・・・そう思いますよ・・・」私は100%ではないが、75%ぐらいはそう思って、口にした。

 次にかかったのは、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番であった。その第1楽章がかかった。映画「蜜蜂と遠雷」でのラスト、とても印象的なシーンで演奏されていた曲である。

 その疾風怒濤といえる滑走感を、CD 306 SACDは、脚がもつれることもなく、軽やかに描ききってみせた。

 映画のなかでは、松岡茉優演じる心に傷を持つピアニストが、吹っ切れたように俊敏な疾走感をもって演奏を繰り広げる。観る者に心地良い感動を与えてくれるシーンであった。

 CD 306 SACDを送り出しとして、YAMAHA NS-5000から放たれる音の羅列もやはり心地良いものであった。

 Paoさんのシステムは、この10年ほどの間にすっかりと変わった。「長岡鉄男信奉者システム」から脱して、かなり高レベルなハイエンドシステムに移行したようである。それにしても、CD 306 SACDに関しては、意外であった。

2020/10/11

5331:CARY AUDIO  

 コインパーキングに停めた車から降りて少し歩いた。甘泉園公園の入り口の前を通り過ぎた。Paoさんのお宅は西側が甘泉園公園の深い緑に接している。家屋の中に入ってしまうと、ここが新宿区であることが全く分からなくなるほどに静かである。

 北隣はとても古い分譲マンション。南隣は教育系の小さな出版社の社屋。そして西側は甘泉園公園の深い緑・・・という具合にオーディオに関する周辺環境は恵まれている。

 白い小さな呼鈴のボタンを押した。ボタンが下にあるタイプで現在では見かけることのなくなった型である。

 引違の玄関のすりガラスの向こう側にPaoさんのぼやけた姿が映し出された。がらがらとその引き戸が開けられた。

 毎日が日曜日になってからやや表情が間延びした感のあるPaoさんが、「どうぞ、どうぞ・・・随分涼しくなったよね・・・まあ、上がって・・・」と招き入れてくれた。

 Paoさんのリスニングルームは2階にある。古い木造家屋にありがちな急な角度の階段を上がって右に向かうとその部屋がある。

 もともとは和室であった8畳間を洋間に改造した部屋がPaoさんのリスニングルームである。

 センターラック方式で配置されたオーディオシステムが視界に入ってきた。私はすぐさまラックの最上段に置かれているCDプレーヤーに視線を集めて、フォーカスを合わせた。

 「んっ・・・なんだこれは・・・?」というのが、私の第一印象である。「きっとMark LevinsonのNo.390SLかNo.39Lだろう・・・」という私の推測はすっかりと外れた。

 ラックの最上段には、私の見たことのないCDプレーヤーが鎮座していた。コンパクトとは言えないサイズ感である。大きくはないが、普通サイズである。色はブラックである。

 薄いトレイはセンターにあり、その上にディスプレイ。青いライトにより鮮やかに数字などが表示されている。

 天板の真ん中には丸い覗きガラスのような円がある。「そのデザインは決してセンスが良いとは言えない・・・しかし、ひどいというわけでもない・・・間が抜けているようで、カチッとしている・・・とらえどころのないデザインである・・・」狐につままれたような表情のままリスニングポイントに置かれたイージーチェアに座った。カリモク製の少し古いデザインの椅子に深く腰を下ろした。

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 Paoさんが、やや得意げにそのCDプレーヤーについて説明をしてくれた。「これは、Cary AuidoのCD 306 SACDというCDプレーヤーなんだ・・・一時日本にも正式に輸入されていたもので、シルバーだけが販売されていたんだけど、輸入代理店が数台だけブラックも入れていて、それが回り回って、ここにあるというわけだ・・・」と一気にその概要を語った。



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