2020/10/4

5324:10と20  

 ヨハンナ・マルツィのヴァイオリンによるシューベルト ソナチネ第2番の第1楽章が終わった。続いて第2楽章が始まった。
 
 シューベルト特有の優しく哀しい抒情を背景に、聡明かつ柔軟なメロディーが心に染み入ってくる第2楽章は私が一番好きな楽章である。

 英国の古いオーディオ機器で聴くシューベルトは実にしっとりとしていて、陰影感にあふれている。

 第2楽章が終わった。小暮さんにお願いして、第3楽章と第4楽章も聴かせてもらった。結局ソナチネ第2番を全て聴いた。

 オーディオ機器の聴き比べであるから、最後まで聴く必要はなかったのかもしれないが、途中から「聴き比べなんて、どうでもいいか・・・」という気分に切り替わったのである。

 「オーディオ機器なんて二の次だからね・・・」とオーディオマニアとしてはどうかと思えるような考えが頭の中を支配していたのである。

 ヨハンナ・マルツィのヴァイオリンによるシューベルトの音楽の高貴さに比べると、XERXESが10であろうが20であろうがどうでもいいことのように思われたのは事実である。

 「じゃあ、今度はXERXES 20で第1楽章と第2楽章を聴いてみよう・・・」と小暮さんは、レコード盤を、隣に置かれているXERXES 20のターンテーブルに移した。

 小暮さんは、根っからのオーデュオマニアである。なんだかとても嬉しそうである。「この人は本当にオーディオが好きなんだな・・・」と思った。

 私もオーディオマニアの端くれであるので、先ほどのXERXES 10での時との違いを探り出してやろうと、オーディオマニア的な視点にシフトすることにした。

 第1楽章が流れ出した。「ふんふんふん・・・」と、吉永小百合が若かりし頃に歌った「奈良の春日野」の歌詞のように、私は無意識のうちに心の中で呟いていた。

 「同じ英国製、同じROKSAN、同じXERXES・・・しかし、10と20ではやはり違いますね・・・」私は第1楽章が終わったところで小暮さんに呟いた。

 10の方が私がイメージしている英国感に近いような気がした。「純朴」「素朴」でも芯がしっかりとしている。表面的な華麗さは乏しめで、音色は暗い。

 それに対して20はより華やかである。ふわっとしていて音の光沢も豊かに感じられた。確かに20である。20代の女性の肌のように艶やかで滑らかである。

 ではXERXES10は10代の女性の肌であろうか・・・その例えが適切か否かは微妙であるが、より音に芯があるのは10の方であろう。

 第2楽章も聴いた。「イギリス的ではあるが、フランス的な香りも感じるな・・・」そんなことを思いながら、「シューベルトの部」を終えた。

 続いてかかったのは、べートーベンである。交響曲第6番「田園」である。指揮はカルロ・マリア・ジュリーニ。その第1楽章を聴いた。

 カルロ・マリア・ジュリーニと「田園」の相性は良い。徹底的に歌わせる彼の指揮は曲によっては過剰に感じられることがあるが、「田園」では上手くマッチしている。

 こちらは先ほどとは逆にXERXES 20で聴いてから、XERXES 10で聴いた。これは曲との相性であろうか、あるいはカルロ・マリア・ジュリーニとの相性であろうか、20の方が華やかさや広がりという点において優っているように感じられた。

 好みの問題でもあるし、レコードとの相性もあるし、単純にどちらが優れているかとは言えない兄弟対決であった。

 アナログシステムは、アーム、カートリッジ、そして様々な調整によりがらっと雰囲気が変わるものである。

 それだけに聴き比べ自体それほど意味があるものではないかもしれないが、ROKSANの兄弟モデルの聴き比べは、興味深く、いろいろと感じることが多い経験となった。 

2020/10/4

5323:MC20  

 LANCASTERを駆動するのは、LEAKのアンプ郡である。プリアンプはPOINT ONE STEREO。パワーアンプは、TL-10。どちらも英国製であることを強く主張するかのように、コンパクトな形状をしている。

 2台のROKSAN XERXES、LEAKのアンプ、そしてTANNOYのLANCASTERということで、全て英国製で統一されたラインナップとなった。

 カートリッジはMC20なので、ここは英国製というわけにはいかなかった。MC20は、新しいカートリッジではない。ではヴィンテージかと問われると、そこまでは古くない。中途半端に古いカートリッジである。

 しかし、小暮さんは「MC20は、落ち着くんだよな・・・もっと性能の良いカートリッジはあるにはあるのだけど、最初はこれは良いと驚くけど、だんだんあざとく感じられてきて、結局MC20に戻ってしまう・・・」と話されていた。

 MC20は1978年に発売された。今から42年前のことである。その当時としてはかなり高性能であったようで、オーディオ雑誌の試聴用のカートリッジとして採用されたりもしたようである。

 若かりし頃の小暮さんは、MC20の音質の良さにいたく感動したようで、それから一途にMC20を愛用されているようである。

 その音質は、嫌味のないつややかな音で、バランスが崩れることがなく、確かに安心感がある。とんがったところはないので刺激が少ないと感じるマニアもいるかもしれない。

 小暮さんが「XERXES聴き比べ」のために選択したレコードは、ヨハンナ・マルツィのシューベルトであった。

 まずは、XERXES10のターンターブルに乗せられたのは、ソナチネ第2番である。1955年11月の録音でモノラルレコードである。イコライザーカーブはRIAAではなくNABであるので、POINT ONE STEREOのイコライザーカーブのセレクターがNABになっていることを確認してから、MC20の針先が黒い盤面に落とされた。

 軽めのサーフェスノイズの後に緩やかに楽曲が始まった。ジャン・アントニエッティの華麗で品のあるビアノで始まり、そこにマルツィの威厳すら感じるヴァイオリンが重なった。

 「カートリッジがMC20なんだからステレオレコードにすればいいのに・・・」と内心では思っていたか、そのヴァイオリンの音色を耳にすると同時に「ステレオもモノラルも関係ない・・・」と思いきってしまうほどに、心は引き寄せられていった。



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