2020/9/18

5307:第3の扉  

 1930年代のドイツといえば、ヒットラー率いるナチスが政権を奪っていき権力を掌握していった時代である。そんな破滅へ向けてドイツが大きく舵を切っていった時代に製作されたドイツテレフンケン製の8インチユニットを採用したスピーカーを聴いた。

 そのスピーカーは、ジャーマンヴィンテージの得意分野とも言えるフィールド(励磁)型スピーカーであった。

 8インチのフルレンジユニットが2個、横幅1メートル、高さ0.5メートルの平面バッフルに納められていた。

 床との間に挿入されたインシュレーターにより緩やかな仰角を付された姿は、そのサイズ感がQUADのESL64を彷彿とさせるものであった。

 そのスピーカーが置かれていたのは、shanshanさんのリスニングルームである。実は、この部屋には既に2組のスピーカーが活躍していた。1つはグッドマンの10インチフルレンジユニットを採用したもので、もう1つはスキャンスピーク製の高性能ユニットを採用した2ウェイスピーカーであった。

 そこに新たに「第三の存在」として登場したのが、8インチのテレフンケン製フルレンジユニットを採用したフィールド型スピーカーである。それら三つのスピーカーシステムのこの部屋における配置状況は、「これしかない・・・」と思わせる絶妙なものであった。

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 リスニングポイントに置かれた3人掛けのソファに腰を下ろして、早速その「第三の扉」をそっと開けて、その向こう側に広がる世界を覗かせてもらった。

 クラシックのアナログを数枚、立て続けに聴いた。1930年代というと、今から80年以上も前に作られたユニットであるが、フィールド型スピーカー特有の活きの良さが心地良い響きをもたらしていた。

 駆動しているパワーアンプは、300Bのプッシュプルでトランスなども良品が奢られた豪華な構成のものであった。

 shanshanさんは真空管パワーアンプの自作マニアである。その数あるストックのなかに、ユニットと同じく1930年代にドイツのテレフンケンが製造した「AD1」を出力管に持つシングルアンプがあった。そのパワーアンプは純正に近い存在に思われた。

 「つぎは、AD1のシングルで聴いてみましょう・・・」という話の流れになり、駆動するアンプが切り替わった。

 ブリアンプから延びているRCAケーブルを差し替えて、さらにスピーカーケーブルを差し替えれば準備完了である。スピーカーケーブルの先端はバナナプラグ仕様になっているので作業時間は短時間ですんだ。

 そして「1930年代ジャーマンライン」で聴いてみた。フルトヴェングラーが振ったベートーベン交響曲第三番である。

 「1930年代ジャーマンライン」はぴったりとはまった。実にまっすぐに繋がった。音が伸びやかになり、華麗に駆け抜けていくような軽やかさも手に入れた。音楽の美を声高にではないが、高潔に歌い上げた。

 「さすがに相性が良いですね・・・この両者・・・」と感心した。先ほど聴いたモーツァルトやシューベルトなどのレコードも再度聴いてみたが、「テレフンケンの兄弟」は、生き別れて長い時を経てから再会したかのように「喜び」を美声で歌い上げた。

 「第三の扉」の向こう側の世界は、実に魅惑的であった。8インチのジャーマンヴィンテージユニットは他にもシーメンスなどのメーカーのものもあり、オークションなどで入手可能である。ここまで結果がいいと、その先の景色も見たくなるのが人情というものかもしれない。

 「第三の扉」の向こう側の世界を堪能したのち、「旧世界」の状況も確認した。グッドマンの10インチは相変わらずに安定した音楽鑑賞の悦びををもたらしてくれる。

 そして駆動するパワーアンプがQUADからSPECTRALに換わったスキャンスピークの2ウェイは、一気に時代を現代に差し戻す吸引力を有していた。

 三つの扉の向こう側の三つの世界は、それぞれ独自の魅力に溢れていたが、「畳となんとかは新しい方が良い・・・」と諺にあるように、shanshanさんの関心を一番強力に引き付けているのは、「第三の扉」の向こう側の世界のようであった。



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