2020/9/22

5311:周期コース  

 スタート時間の10秒前になると、電子音のカウントダウンが始まる。その音が10回すると、スタート開始である。

 アバター達は固定式ローラー台から解き放たれて走り始めた。今回もスタート時のトラブルはなく、皆無事にスタートできた。

 今日は、シャンゼリゼ通りの周回コースを走る。多少のアップダウンはあるがほぼフラットなコースである。

 「ツール・ド・フランス」では、最終日にこの周回コースを走る。この周回コースは、石畳が敷かれたシャンゼリゼ通り、凱旋門の外周路、ルーヴル前のアンダーパスなどを含んでいて、景色を楽しみながら走れるコースである。

 実際の「ツール・ド・フランス」では、この周回コースに入ると、それまでの凱旋パレードモードから本気モードに切り替わり、50〜53km/hの平均スピードを刻んで周回を重ねていく。

 スタートしてしばらくするとコンコルド広場を回り180度回転して方向を逆に変えた。アンダーパスを通り過ぎると、ゴール前スプリントに向けた位置取り合戦が始まる。
 
 まだ脚の筋肉のウォームアップが完了していない状態であったが、先頭に近いポジションにいるためにはそれなりの出力が要求される。

 そして、「そろそろ計測開始ラインがあるはず・・・」と思って、クランクを回すペースを相当上げたが、スマホの小さな画面には計測が開始された様子がない。

 「なんか変だな・・・」と思いはがら、半もがき状態でスプリントのゴールを示すアーチの下を潜った。

 周回コースの途中からスタートしたため、最初はゴール前スプリントは設定されていなかったようである。「それ、早く言ってよ・・・」との呟きが心の中で漏れた。

 「では気を取り直して、次の凱旋門前スプリントで勝負するか・・・」と思い直して、備えた。位置取りのためにパワーを上げていった。

 凱旋門前スプリントは通常通り計測が始まった。計測ラインを越えると同時にフルスロットル状態である。10秒ほどもがいてアーチを潜った。

 その後は、周回ごとに1回、どちらかのスプリントポイントでもがき、もう一つの方はパスした。休憩までに5回もがいた。

 チーム内でのローカルルールでは、計測タイムではなく単純に先頭でアーチを潜り抜けたものが、スプリント賞をゲットできることになっている。

 そのため、計測開始前から位置取り合戦が始まる。先頭に近い位置で計測開始ラインを越えないと、勝つのは難しいのである。

 5回もがくと相当に疲弊した。「後半は全部パスするかな・・・」と弱気になってもくる。「5分から10分ほど休憩しましょう・・・」とのリーダーの指示により、凱旋門のすぐ近くで止まって、ロードバイクを降りた。

 クーラーはスタートしてしばらくしてからつけた。扇風機も回っているが、汗が流れた。体からの発熱量は疲労度とともに高めであった。

2020/9/21

5310:シャンゼリゼ  

 「ツール・ド・フランス」に関連して継続されていた、バーチャルチームライドにおける「フランス週間」の締めくくりとして選択されたのは、「ツール・ド・フランス」でもゴールとなるシャンゼリゼ通りの周回コースであった。

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 コース名は「Champs-Élysées」。一周6.6kmで34m上る周回コースである。「MEET UP」として設置された距離は55kmであるので、約8周走る予定である。

 「ツール・ド・フランス」は、前日のタイムトライアルにおいてツールの歴史に残るであろう大逆転劇でポカチャルが総合優勝を事実上決めた。

 最終日である今日はその凱旋パレードとしての性格も有するが、シャンゼリゼ通りに入ってからは、各チームのスプリンターたちの晴れ舞台ともなる。

 「最後のスプリントを征するのは誰か・・・」全世界から注目が集まるので、スプリンターたちは、俄然燃えるはずである。

 バーチャルチームライドにおいては、この周回コースに設定されている二つのスプリントポイントにおいて、スプリント合戦が巻き起こる。

 周回コースを8周するということは、8×2で16回のスプリントポイントを通り過ぎるわけであるが、私の体力では全部もがくのはきつい。

 1周1回ほどのもがきにしないと、脚が持たない。瞬間的にではあるが500ワットを超えるパワーを出すことになるので、もがいた後はかなり疲弊する。

 スタート時間はいつものように8時半である。今日も15分前からセッティングを始めた。先週おかしかったマイクの機能がどうか、気になるところであった。

 Zwiftはいつものようにすんなりと立ち上がり、スタート地点にスタンバイできた。続いてノートパソコンでZOOMを立ち上げた。

 ミーティングに参加する前に、イヤホンとマイクをテストした。イヤホンは問題なかった。続いてマイクのテスト。

 マイクの設定がおかしかったようで先週はマイク機能が失われていたが、設定を変えるとマイク機能が復活した。「良かった・・・これでコミュニケーションが取れる・・・」とほっとした。

 「ミーティングに参加」をクリックして、メンバーに挨拶を済ませた。今日のバーチャルチームライドの参加者は7名であった。

 夏は去り、完全に秋の気候になっていた。朝のうちはとても涼しかった。しかし、走り出して1,2回もがくと体は熱を大量に発するようになる。扇風機の電源を入れて、エアコンのリモコンは手の届く位置に置いておいた。

2020/9/20

5309:勝者と敗者  

 3週間前にニースからスタートした「ツール・ド・フランス」はいよいよ最終盤を迎えた。総合争いは、本命と目されていたベルナルがリタイアし、スロべニアの二人のアスリートの争いとなっていた。

 先輩格であるログリッチが第19ステージを終えたところで、ポガチャルに対して1分近いタイム差をつけてマイヨ・ジョーヌを守っていて、「ログリッチで決まりかな・・・」と思っていた。

 総合争いが実質的に決する第20ステージは、36.2kmを走るタイムトライアルである。戦う相手はライバルではなく、ストップウォッチである。

 通常のレースにおけるチームでの駆け引きはなく、ただただ自分自身の限界にチャレンジするタイムトライアルは時として大きなタイム差を生じさせることがある。

 このタイムトライアルによって、過去にも表彰台の顔ぶれが入れ替わってたり、2011年はマイヨ・ジョーヌの交代劇もあった。

 今年のタイムトライアルコースにおいて特徴的なのは、コースの終盤に「ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユ」が待ち受けていることである。「ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユ」は、厳しいところでは20%の斜度を持つ「激坂」である。

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 今回のタイムトライアルコースは3つのパートに分けられる。第1部はスタートから14.5kmの第1回計測地点まで・・・道は平坦で選手たちは高速で駆け抜けていく。

 第2部は第1計測地点から30.3kmの第2計測地点まで・・・緩やかな上り基調で下りも入る。下りは急峻なカーブが点在し、落車しないように注意しながら走ることになる。

 第3部は、「ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユ」の全長5.9kmの本格的な上りである。この手前まではTTバイクで走り、上りに入る前により軽量な登坂バイクに乗り変える作戦を取る選手も多いはずである。

 平均勾配は8.5%である。フィニッシュ直前は20%の斜度の激坂が待ち構える。「これは厳しい・・・」最後の最後まで気を抜けない難コースである。

 タイムトライアルは総合の順位が低い順にスタートする。多くの選手が厳しいコースに苦労するなか、第30番出走のカヴァニャが57分54秒という好タイムを出した。これがターゲットタイムとなった。

 ログリッチのチームメイトであるファンアールトは28秒カヴァニャを上回り、さらにデュムランがファンアールトのタイムを10秒更新した。その後ポートがデュムランに並ぶ57分16秒でフィニッシュした。

 そして、いよいよ総合2位のポガチャルと57秒差で総合首位のログリッチが、順次スタートしていった。

 第1計測地の平坦区間ではポガチャルがログリッチを上回った。その後もポガチャルは驚異的なスピードで走り続け、なんと55分55秒でフィニッシュした。

 その結果、ポガチャルはポートとデュムランがマークしたタイムを1分21秒上回りステージ優勝を果たした。

 後半伸びてくるかと期待されたログリッチであったが、「ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユ」でも精彩を欠き、2分近くポガチャルから遅れてゴールした。

 この結果、総合首位は入れ替わった。まさに劇的な展開となったのである。スロベニアの二人の明暗はこれ以上ないくらいにはっきりと分かれた。

 チームスタッフと抱き合い喜ぶポガチャルと、ゴール後道に座り込んで虚ろな表情のログリッチ・・・勝者と敗者との対照的な姿が心に刻み込まれる映像であった。

2020/9/19

5308:Eクラス  

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 メルセデス・ベンツ日本はマイナーチェンジを受けたEクラスを発表し、9月10日より販売を開始した。

 あくまでマイナーチェンジではあるが、そのエクステリアデザインはがらっと変わったのでフルモデルチェンジかと勘違いするほどである。

 ヘッドライトの形状が従来型から大きく変わった。CLSやAクラスのように、ヘッドライト内側のラインが従来とは逆向きの斜めラインを形成し、上下方向に薄くなった。

 そのヘッドライトの斜めラインに合わせるかのよう、フロントグリルの形状も従来の逆台形型から下辺の方が長い台形形状に変わった。

 クローム仕上げのダイヤモンドグリルが標準仕様になり、バンパー下部には左右に2本のフィンを配置されていて、スポーティーな印象を与えている。

 メルセデス・ベンツはこのフロントフェイスを「プレデターフェイス」と呼んでいる。リアのコンビネーションランプも大きく変わった。

 横長で外側に向かって上下方向の高さが増す形状である。これもCLSやAクラスに採用された新たなデザインに寄せた形状変更である。

 インテリアの方は、エクステリアほどには大きな変更はない。大まかな造形はほぼ継承されていて、先日発表されたフルモデルチェンジされたSクラスのインテリアと比べると一世代前の印象はぬぐえない。

 しかし、機能面においては様々な改良が施されていて、目玉の一つは「ARナビゲーション」である。

 これは、車両の前面に広がる現実の景色をナビゲーション画面の一部に映し出し、進むべき道路を矢印により表示する機能である。これを使うと曲がるべき場所を通り過ぎてしまうなどのミスが大幅に軽減するであろう。

 「ハイ、メルセデス」をキーワードとして起動するボイスコントロール機能も採用された。これを使うとNAVIの目的地設定も音声のみで指定できるようになる。

 メルセデス・ベンツの中核モデルであるEクラスは、マイナーチェンジにより確実に商品力を高めた。Eクラスのようなオーセンティックなセダンやステーションワゴンは日本ではそれほど注目されることなないかもしれないが、私は現在のBMW 523i ツーリングの前にE350 ステーションンワゴンを6年間乗っていたので、とても気になる存在である。

2020/9/18

5307:第3の扉  

 1930年代のドイツといえば、ヒットラー率いるナチスが政権を奪っていき権力を掌握していった時代である。そんな破滅へ向けてドイツが大きく舵を切っていった時代に製作されたドイツテレフンケン製の8インチユニットを採用したスピーカーを聴いた。

 そのスピーカーは、ジャーマンヴィンテージの得意分野とも言えるフィールド(励磁)型スピーカーであった。

 8インチのフルレンジユニットが2個、横幅1メートル、高さ0.5メートルの平面バッフルに納められていた。

 床との間に挿入されたインシュレーターにより緩やかな仰角を付された姿は、そのサイズ感がQUADのESL64を彷彿とさせるものであった。

 そのスピーカーが置かれていたのは、shanshanさんのリスニングルームである。実は、この部屋には既に2組のスピーカーが活躍していた。1つはグッドマンの10インチフルレンジユニットを採用したもので、もう1つはスキャンスピーク製の高性能ユニットを採用した2ウェイスピーカーであった。

 そこに新たに「第三の存在」として登場したのが、8インチのテレフンケン製フルレンジユニットを採用したフィールド型スピーカーである。それら三つのスピーカーシステムのこの部屋における配置状況は、「これしかない・・・」と思わせる絶妙なものであった。

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 リスニングポイントに置かれた3人掛けのソファに腰を下ろして、早速その「第三の扉」をそっと開けて、その向こう側に広がる世界を覗かせてもらった。

 クラシックのアナログを数枚、立て続けに聴いた。1930年代というと、今から80年以上も前に作られたユニットであるが、フィールド型スピーカー特有の活きの良さが心地良い響きをもたらしていた。

 駆動しているパワーアンプは、300Bのプッシュプルでトランスなども良品が奢られた豪華な構成のものであった。

 shanshanさんは真空管パワーアンプの自作マニアである。その数あるストックのなかに、ユニットと同じく1930年代にドイツのテレフンケンが製造した「AD1」を出力管に持つシングルアンプがあった。そのパワーアンプは純正に近い存在に思われた。

 「つぎは、AD1のシングルで聴いてみましょう・・・」という話の流れになり、駆動するアンプが切り替わった。

 ブリアンプから延びているRCAケーブルを差し替えて、さらにスピーカーケーブルを差し替えれば準備完了である。スピーカーケーブルの先端はバナナプラグ仕様になっているので作業時間は短時間ですんだ。

 そして「1930年代ジャーマンライン」で聴いてみた。フルトヴェングラーが振ったベートーベン交響曲第三番である。

 「1930年代ジャーマンライン」はぴったりとはまった。実にまっすぐに繋がった。音が伸びやかになり、華麗に駆け抜けていくような軽やかさも手に入れた。音楽の美を声高にではないが、高潔に歌い上げた。

 「さすがに相性が良いですね・・・この両者・・・」と感心した。先ほど聴いたモーツァルトやシューベルトなどのレコードも再度聴いてみたが、「テレフンケンの兄弟」は、生き別れて長い時を経てから再会したかのように「喜び」を美声で歌い上げた。

 「第三の扉」の向こう側の世界は、実に魅惑的であった。8インチのジャーマンヴィンテージユニットは他にもシーメンスなどのメーカーのものもあり、オークションなどで入手可能である。ここまで結果がいいと、その先の景色も見たくなるのが人情というものかもしれない。

 「第三の扉」の向こう側の世界を堪能したのち、「旧世界」の状況も確認した。グッドマンの10インチは相変わらずに安定した音楽鑑賞の悦びををもたらしてくれる。

 そして駆動するパワーアンプがQUADからSPECTRALに換わったスキャンスピークの2ウェイは、一気に時代を現代に差し戻す吸引力を有していた。

 三つの扉の向こう側の三つの世界は、それぞれ独自の魅力に溢れていたが、「畳となんとかは新しい方が良い・・・」と諺にあるように、shanshanさんの関心を一番強力に引き付けているのは、「第三の扉」の向こう側の世界のようであった。

2020/9/17

5306:30秒  

 「Alpe du Zwift」の終盤に入った。ゴールが近づいてくると気持ちがやや前向きになってくる。自転車は「気持ちで走る」部分が結構ある。疲弊した脚の具合も気持ちに引っ張られる形で少しばかり活気を取り戻しつつあった。

 230ワットほどの出力の数値がスマホの画面にも出現しはじめた。今日の目標タイムである60分のタイムリミットは容赦なくい迫っていた。

 残り距離と60分までの時間を対比すると実に微妙なところであった。カーブに振られた数字は「4」になり、「3」になった。

 「あともう少しだ・・・最後はしっかりとスパートしよう・・・」と心に決めて重い脚を回し続けた。

 「2」のカーブを曲がり、ついに最後の「1」を通り過ぎた。ゴールに続く直線の上りを頂上に向けて駆けていった。出力はぐっと上がった。

 250ワットほどの出力を維持しながらゴールを示すアーチへ突き進んだ。そして待ちに待ったアーチの下を潜り抜けていった。

 その時にタイムがスマホの小さな画面上に表示された。表示されたタイムは「1:00:30」。ぴったり30秒が60分に足されていた。「おしい・・・もう少しか・・・」と一瞬天を仰いだ。天を仰いでも白い天井が見えるばかりで空や雲が見えるわけではないが・・・

 メンバー間でも「おしい・・」「もうちょっとでしたね・・・」「各セクターであと2秒づつ縮めれば、60分切れますね・・・」と言った会話が交わされた。

 「Alpe du Zwift」のタイム計測終了ポイントを通り過ぎて一旦脚を止めた。今日のルートである「TOUR OF FIRE AND ICE」のゴールはもう少し先である。

 ゆるゆるとクランクを再度回してルートのゴールを示す半透明の青い光のラインを越えた。

 「下り切ってから終わりにしますか・・・」ということになり、急峻な坂を下り始めた。重力に吸い込まれるように、アバター達は走り始めた。

 クランクを回さなくてもスピードは乗っていく。しかし、ややあって下りでもスピード競争が始まった。たまたま遭遇した外人さんとのダウンヒルバトルが勃発したのである。

 私も少し参加したが途中で脱退した。残りは惰性で下っていき、下り切った。ここで今日のバーチャルチームライドは終了である。

 来週は「フランス週間」の締めくくりとして、シャンゼリゼ通りの周回コースを走る予定である。スプリント合戦が周回ごとに繰り広げられるであろう。 

2020/9/16

5305:先頭交替  

 休憩時間を利用して再度マイク機能について確認した。ZOOMの「オーディオをテストする」を選択して「マイクのテスト」をクリック、何度か試してみたが、残念ながら結果は思わしくなかった。「しょうがない、後半もボディランゲッジでいくしかないか・・・」と諦めて、1階に降りていった。

 補給食を摂って、ボトルにミネラルウォーターを補充した。2階に戻ってLOOK 785 HUEZ RSに再び跨る頃には、ZOOMの画面にはほぼ全員が揃っていた。

 休憩を終えてリスタートした。いよいよ「Alpe du Zwift」へ向かうこととなった。「Alpe du Zwift」は、走行距離:12.22km、獲得標高:1,036m、平均勾配:8.5%である。とてもハードなヒルクライムコースである。

 ラルプ・デュエズ(L'Alpe-d'Huez)をそっくり模倣したコースとなっており、コーナー(セクター)の数も同じく21である。

 21個のヘアピンカーブには番号が記されたオブジェが設置されている。メンバーで先頭を順次交替しながら上っていくことになるが、私は序盤脚がまだフレッシュなうちに二つか三つか担当しようと考えていた。

 「まとめる」機能が働いているので、後方に下がると脚を休ませることができるが、今日は今月の末に行われる予定のヒルクライムレースに向けてのトレーニングも兼ねているので、脚に負担がかかり続ける前のポジションに居続ける予定であった。

 リスタートして少しすると「Alpe du Zwift」の計測開始ラインを越えた。前回のバーチャルチームライドのタイムを3分ほど縮めて、60分を切るタイムでゴールすることを目指すことになった。

 序盤は脚にまだ余力がある。230ワットほどの出力で走っていった。前半の11のセクターのうち二つで先頭を引いた。

 ヘアピンカーブに付された番号が一桁になる後半に入ると脚の余力はぐっと下がってくる。「後半も1回くらい先頭を引こうか・・・」と思い、先頭に出ようすとするが、「まとめる」機能が変な作用をして300ワット以上の出力を出しても前に出れない。

 「なんだ、これ・・・?」といらだった。先頭に出る前に脚を盛大に削られる。「もういいや・・・」と諦めて、通常の出力に戻した。

 スマホの小さな画面には、現在走っているセクターのタイムと平均パワーが表示される。その平均パワーが200〜220ワットの範囲に納まるように歯を食いしばった。

 出力が200ワットを切ると脚がすっと楽になる。その魅惑ある誘惑に疲れた体は負けそうになるが、気持ちを立て直してクランクに込めるパワーを増した。

 そんなことを繰り返しながら、後半のセクターをこなしていき、ようやくカーブに付された番号が「5」まできた。長かった「Alpe du Zwift」も終盤に入った。

2020/9/15

5304:スロベニア  

 現在行われている「ツール・ド・フランス」は、第15ステージまでを終えた。その第15ステージでは、マイヨ・ブランを着たポガチャルが、マイヨ・ジョーヌのログリッチをゴール勝負で下し、第9ステージに続いて2度目のステージ優勝を果たした。

 この結果、総合でのログリッチとポガチャルとのタイム差は40秒になった。ディフェンディングチャンピオンのベルナルは、7分以上遅れてゴールし、マイヨ・ジョーヌ争いから姿を消した。

 どうやら優勝争いはログリッチとポガチャルの二人に絞られたようである。この二人の国籍はともにスロべニアである。スロベニアの二人の今後の争いが楽しみである。

 さてそんな状況で2週目を終えた「ツール・ド・フランス」と連携して、バーチャルチームライドも「フランス週間」を継続中である。

 今日は「ツール・ド・フランス」で有名なラルプ・デュエズ(L'Alpe-d'Huez)をそっくり模倣した「Alpe du Zwift」がルートの後半に設定されている。

 バーチャルチームライドを始めたばかりの頃にはスタート時にトラブルが多かったが、最近はスムースにスタートできるようになっていた。

 今日もトラブルなくスタートできた。「Alpe du Zwift」までは13kmほど。多少のアップダウンがあるがほぼ平坦である。ゆったりとしたペースで走っていった。

 比較的ゆったりとしたペースではあっても、しばし走っていくと汗が流れてくる。気候は急に秋らしくなった。気温も涼しげなものに変わったが、クーラーと扇風機はつけていた。

 クーラーの設定温度は20度である。扇風機の風量は「弱」であった。後半になって「Alpe du Zwift」を走る頃には「強」にすることになるであろう。

 「Alpe du Zwift」の上り口まで走ったら一旦休憩して「Alpe du Zwift」の厳しい行程に備えることになっていた。

 前回「Alpe du Zwift」をチームで上った時のタイムは1時間3分ほどであった。「今日は60分を切りましょう・・・」との目標設定がなされていた。

 「まとめる」機能が働いていると単独で走るのとは勝手が違う。出力の差があってもばらけないようになっているので、出力を上げてもそれがストレートにスピードに反映されないのである。

 休憩ポイントに達した。前半はウォームアップ気味に走り終えた。これからが厳しい行程である。その前に脚を少し休ませることにした。

2020/9/14

5303:マイク問題  

 現在行われている「ツール・ド・フランス」では、本命と目されていたベルナルが大きくタイムを失い、総合優勝争いから離脱してしまった。その結果スロベニアの2名のアスリートが総合優勝を争う展開となっている。

 「ツール・ド・フランス」が開催中の間は「フランス週間」が継続されることになっている。今日のバーチャルチームライドのルートとして選択されたのは「TOUR OF FIRE AND ICE」であった。

 マップはFRANCEではなくWATOPIAであるが、「ツール・ド・フランス」で有名なラルプ・デュエズ(L'Alpe-d'Huez)をそっくり模倣した「Alpe du Zwift」がルートに含まれているので、今回選択されたのである。

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 「TOUR OF FIRE AND ICE」の距離は25.5kmで獲得標高は1,161mである。ルートのちょうど半分が「Alpe du Zwift」である。

 前半はのんびりと走って脚を温存し、後半は「Alpe du Zwift」での60分切りを目指して歯を食いしばることになる予定である。

 スタート時間の15分前から準備を進めた。我が家ではZwiftはスマホで、そしてZOOMはパソコンで立ち上げる。

 Zwiftに関して問題が生じることはほとんどない。ただしZOOMにおいては悩まされている一つの問題があった。

 それは「マイク問題」である。現在はワイヤレスのマイク付きイヤホンを使っている。ZOOMを始めて3代目のマイク付きイヤホンである。

 なぜかしらマイク付きイヤホンのマイク機能が損なわれることが多く、そのたびに新しいものに換えてきた。

 今日もZOOMのミーティングに参加する前に、イヤホンとマイクをテストした。するとイヤホンは問題なかったが、マイクが機能していなかった。

 「またか・・・なんだろう・・・」と数分間原因を探っていたが、埒が開かなかった。スタート前5分ほどになったので、あきらめた。

 「今日もボディランゲッジで乗りきるしかないか・・・」と思い、「ミーティングに参加」をクリックした。

 今日の参加者は10名であった。Zwiftのスタート地点にもZOOMの分割画面にも参加予定者が並んだ。スタート時間までの残りタイムは減っていき、10秒前のカウントダウンが始まった。 

2020/9/13

5302:紙袋  

 小暮さんがレコード棚から取り出したのはメロディアの10インチレコードであった。物資の不足していたソビエト時代のレコードである。

 メロディアのジャケットは、1970年代後半まではカラーデザインが印刷されただけの汎用のものであることがほとんどである

 このレコードも、手で触れると紙質が粗悪であることがすぐに分かる紙袋に入れられていた。ジャケットには演奏家の名前も収録されている曲目も記されていない。

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 演奏家や収録曲を確認するにはレコードのレーベル面を見るしかないのであるが、そこには不可解なロシアのアルファベットが並んでいるので、大概解読不能である。

 そのためジャケットに演奏家や収録曲を書いた付箋を貼っておく必要があるのである。小暮さんはそのジャケットと呼ぶよりも「紙袋」と呼ぶべきものの中からやや小さめの円盤を取り出して、ROKSAN XERXES20のターンテーブルにセットした。

 その10インチのモノラルレコードは、マリヤ・ユーディナのピアノによるバッハ「半音階的幻想曲とフーガ」と「前奏曲とフーガ」が納められたものであった。

 針先が盤面を捉えた。メロディアの古い盤は、盤質が悪いことが多い。レコード盤の素材であるヴィニールの質が良くないことと、貧相な紙袋に長期間入れられていたためか、ノイズが多いのが普通であるが、このレコードは比較的コンディションが良かった。

 ジャケットは貧相であるが、演奏は素晴らしい。マリア・ユーディナはスターリンお気に入りのピアニストであった。

 しかし彼女は反体制的な言動が多く、当局から睨まれていたようである。「大粛清」の時代ではあったが、ユーディナが「粛清」を逃れたのは、スターリンが彼女の演奏を好んでいたからであろうか。

 彼女が残した別のレコードであるモーツァルトのピアノ協奏曲第23番は、スターリンの求めに応じて演奏・録音されたものである。

 このレコードに対する謝礼として大金をスターリンから受け取った時、彼女はその礼状に「ご助力を感謝します、イオシフ・ヴィサリオノヴィッチ。私はあなたのために日夜お祈りするでしょう。あなたが人民と国家に対して犯した大罪を、神がお許しくださるように」と記したそうである。
 
 ユーディナの演奏は、高潔と評すべき精神性と精悍なまでの力強さが特徴的である。PYEのモノラルシステムは、その様相を的確に表示する。

 「的確」という形容詞が本当にぴったりとする感じである。誇張することはない。演出もない。そして減退もない。純粋である。

 「モノラルレコードってこうやって聴くべきなのか・・・」と思わず考えてしまった。我が家では、モノラルレコードであっても、ステレオカートリッジで、さらに2台のスピーカーで聴いている。カートリッジからアンプ、そしてスピーカーまでモノラルで一気通貫された音は、潔さに溢れていた。

 「純粋モノラルシステム・・・欲しいな・・・」と心底思った。もちろん我が家の狭いリスニングルームに、もう一つシステムを持ち込むなどは無理難題である。

 その10インチレコードのA面、B面をじっくりと聴いた後、もう1枚のレコードが選択された。こちらは12インチであった。やはり汎用の「紙袋」に入っていた。

 レーベルは同じくメロディアである。女性のヴァイオリニストであった。演奏家の名前はマリアーナ・コゾルポワ。日本ではほぼ無名の演奏家である。

 ヘンデルのアリアなど数曲が納められたレコードを聴いた。これまたその音色の素晴らしさに魅了された。

 このLPもA面。B面の全てを聴かせてもらった。時間の関係で今日はこの2枚のモノラルレコードを堪能するのみであったが、十分にお腹は満たされた。

 それとともに脳内には「純粋モノラルシステムが欲しい・・・」という新たな物欲がしっかりと刻み込まれてしまった。「これをなだめるには随分と時間がかかるかもしれない・・・」そんなことを思いながら、帰路を急いだ。



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