2020/4/10

5144:MIMESIS 39A  

 Audi A6 Avantの試乗を終えた。建物の中に戻り、テーブル席に座って、ディーラー所定のアンケート用紙にチェックマークをいくつか書き込んだ。形式的ではあったが、Audi A6の見積書とカタログをもらってから、BMW 523i Touringに乗り込んだ。

 BMW 523iに乗り込んで、そのインテリアデザインを一通り眺めた。A6と比べるとやはり一世代の差を感じた。

 古くさいと感じるほどの落差ではないのであるが、A6の冷徹なまでのシャープでクールな質感とは根本的に違う要素が、BMWの場合にはその多くを占めていた。

 BMW 523iの丸いエンジンスタートボタンを押した。2.0Lの直列4気筒エンジンはしっかりとしつけられている犬のように、すっと立ち上がった。

 Audi A6から乗り換えるとやや重めに感じられるステアリングを操作してAudi 西東京の駐車場から出て、新青梅街道を西へ向かった。

 BMW 523iに乗り換えると車とのコミュニケーションがとてもスムーズで頻度高いものに感じられた。そのステアリングのしっとりとした重さが、一体感を求めているように感じられ、車全体の挙動もドライバーに対する訴えかけがA6よりも濃厚に感じられる。

 A6は、車が極めて優秀で、どこかしら乗せてもらっている・・・という感じが試乗している間いつまでも続いていた。

 自動運転機能は限られたもので、あくまでもステアリングを握る人間が車をコントロールしているのであるが、車に任せておけば安心という感覚が心の多くを占めていた。

 やがて完全なる自動運転の時代が来るのであろう。それは10年後ぐらいであろうか・・・いやもしかしたらそれほど先ではないのかもしれない。

 新型A6は、やがて来たる完全なる自動運転時代の雰囲気を先取り的に感じさせてくれる車であった。近未来的でクールに徹した感のあるそのインテリアデザインは、車が近い将来に向かうであろう方向性を暗示しているかのようだ。

 Audi A6のインテリアを眺め実際に操作している時、何故かしら1990年代のGOLDMUNDの製品を連想した。

 具体的に頭に浮かんできたのはMIMESIS 39Aである。どこかしら共通するものがあったのであろうか・・・
 
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2020/4/9

5143:クール  

 しばし待っていると、担当の営業マンがやってきて「試乗車の用意ができました・・・」と告げた。

 半分ほど残っていたアイスコーヒーに多少の未練を感じながら席を立った。駐車場に置かれていた試乗車の色はグレーである。

 グレーはシックで落ち着いた色合いである。地味と言えば地味であるが、大人の風格の様なものを感じる色で印象は良かった。

 Audiのデザインは先鋭的な要素が多いが、写真で見るよりはとんがった感じがしなかった。AudiらしくLEDを活用したデイライトはかなり凝った意匠である。

 試乗車には「ドライビングパッケージ」がオプションで装着されているとのことである。これは電子制御連続可変のアダプティブダンパーと後輪操舵をセットにしたものとのこと。

 とりあえず、標準モードである「オートモード」でスタートした。駐車場から出て新青梅街道を走った。

 最新のディーゼルエンジンらしく、窓を閉めた状態ではディーゼルエンジンとは分からない。音も振動も実に巧妙に遮断されている。

 走り出して最も印象的なことは、路面からのあたりの優雅さである。「ゆるゆるふわふわ」という感触とは違う柔らかさである。
 
 芯はあるけどその表面がビロードで覆われているような感覚である。「上質・・・」という言葉が自然と頭の中に浮かんでくる。

 毛足の長い高級絨毯の上を歩くような感覚にとらわれながら車を進めた。オプション価格が46万円と大変高い値付けであるが、この乗り味が得られるなら「ドライビングパッケージ」をつけることはマストなのかもしれない。

 道が空いてきたところで少しスピードを上げてみた。速度が高まると足回りは引き締まった感じになる。きっと高速道路をひた走っても、極めて高い安定感を感じさせるのであろう。

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 その上質な乗り味以外に、新型A6のもう一つの売りはインテリアデザインである。「これこそクールと評すべきであろう・・・」と思ってしまった。

 実に整然としていて見ていてスカッとするデザインである。ボタン類は極力排除されほぼ全てがタッチパネル式である。

 試乗車には「Sラインパッケージ」というオプションが装着されていたので、ダッシュボードとセンターコンソールはマットアルミ調のパネルとなっている。この意匠がさらにクールさを引き上げている。

 近未来的なデザインである。「実際の操作性に関してはボタンスイッチのほうが良いのでは・・・」という気がしないでもないが、見た目的な清涼感はやはりこっちのほうがある。

 新型VW GOLFのインテリアデザインも一気にデジタル化・液晶化が進んでいて驚いたが、それをさらに高級にしたようなAudiのデザインは、やはりセンスの良さを感じさせるものである。

 試乗時間は30分ほどであった。短い時間、街中だけの試乗であるのでその真価のほどを正確に把握できたわけではないが、新型A6のキーワードは、「上質」と「クール」であろう、と感じた。この二つの言葉でA6から受けた印象の80%は表現できるような気がした。

2020/4/8

5142:A6  

 Mercedes-Benz E-Class、BMW 5シリーズとともに欧州では人気の高いAudi A6がフルモデルチェンジされて日本にも導入されたのは2019年3月のことであった。

 しかし当初日本に導入されたのは、ガソリンの3.0L V6ターボエンジンを搭載するモデルだけであった。

 これはラインナップの中での上級モデルになり、価格も1000万円を超えてしまう。「Audi JAPANは、日本でA6を本気で売る気あるんだろうか・・・?」と疑問に思っていた。

 そして、ようやく日本でもベーシックモデルとなる2.0L直4ガソリンエンジン搭載車とと2.0L直4ディーゼルエンジンを搭載したモデルの販売が開始された。

 2.0Lガソリンエンジンを搭載するA6 45 TFSIクワトロが740万円から、2.0Lディーゼルエンジンを搭載するA6 40 TDIクワトロが745万円からとなっている。

 日本での直接的なライバルとなるMercedes-Benz E220dアバンギャルドは757万円から、BMW 523d xDrive が765万円からという価格に対して絶妙な位置づけとなる設定である。

 「これで、Audi A6も日本での販売台数が一気に増えるか・・・?」というと、残念ながらそういうことはないであろう。

 Audi A6は欧州や中国ではE-Classや5シリーズと互角の戦いを繰り広げているが、日本では相当の差を開けられている。

 しかも、日本で売れるのはSUVモデルがほとんどである。Audiも日本での販売の中心はQ2、Q3、Q5といったSUVモデルにシフトしている。

 しかし、私の様な古い世代の人間にとって、Audi A6のステーションワゴンモデルであるA6 AVANTは、気になるモデルの一つである。

 今のBMW 523i Touringを購入した4年前も、Audi A6 AVANTを実際に試乗し購入を検討した経緯があった。

 その時に対応してくれたAudi 西東京の営業マンは時折メールを今もくれる。今回もA6のベーシックモデルが出たことについてメールが来ていた。

 「ディーラーには今、2.OLのディーゼルエンジンモデルを搭載したA6 AVANTの試乗車が入っています。一度試乗されませんか・・・?」

 と、添えられたメールを読んでいて、結構気になった。BMW 523i Touringは走行距離が70,000kmに達した。今まで走行距離が100,000kmを超えてから買い替えていたので、まだ買い替え時期ではないが、気になるA6 Avantのクリーンディーゼルエンジンモデルはぜひとも体験してみたかった。

 そこで、Audi西東京まで出かけた。日曜日の午後、ディーラーの建物の中は閑散としていた。やはり外出自粛要請が効いているのであろう。営業マンも受付の女性もマスク姿である。当然私もマスク着用である。

 「こんな時期に新車を購入しようとする人間は少ないはず・・・しかもプレミアムブランドであるAudiなどは、その影響が大きいはず・・・」

 そんなことを思いながら受付の女性が案内してくれたテーブル席に着席した。「飲み物いかがですか・・・?」との問いかけに「アイスコーヒーを・・・」と答えた。

 運ばれてきたアイスコーヒーを飲みながらしばし待っていた。私が座ったところのすぐ脇には白いQ5が展示されていた。ミディアムサイズのSUVである。「今日本で一番売れているAudiはQ5なのだろうか・・・?」と思いながらその姿を見ていた。そのQ5の誇らしげな表情からは「もう背の低い車は時代遅れですよ・・・」と諭されているような気がした。

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2020/4/7

5141:帰路  

 少々追い込んでしまったヒルクライムで一時的に下がった免疫力も、時坂峠から望める美しい風景を目にすると、一気に挽回したような気がした。この快感度合いは、病みつきになる性質のものなのかもしれない。

 しばしの時間、一人っきりで過ごした。ここでは時の流れがおそろしくゆっくりと流れているような気がした。

 いつまでもそうしているわけにもいかないので、時坂峠の美しい景色に別れを告げて、下り始めた。

 時坂峠はどちらかというとマイナーな峠であるが、下りきるまでに反対方向から上ってくるローディー2名とすれ違った。二人とも単独走であった。

 すれ違いざま、会釈をした。軽く合わせた視線には「こんな時期でも・・・走りたくなるものですよね・・・」という無言のメッセージが、込められているように感じた。

 時坂峠を下り切って檜原街道に出た。帰路は下り基調である。一定のスピードを維持しながら順調に走っていった。

 檜原街道を走っていて、一つ気になる店を発見した。それは、檜原村の名産品を販売している「山の店」の道を挟んで斜め向かい側にある小さなパン屋であった。

 檜原街道沿いに、ひっそりと佇んでいる感のあるお店で、名前は「森の風」。「もりのかぜ」と読むのかと思ったが、よく見ると「風」という文字の右上に小さな「○」が付いている。それで無理くりではあるが「もりのぷう」と読ませるようである。

 どうも気になったので停車して立ち寄った。狭い店内には素朴な感じのパンが並んでいた。アンドーナッツとクルミパンを購入した。

 店の外にはベンチが置かれているのでそこで賞味した。素材の持ち味を大切に作られていることが分かる実に心和ませてくれる味わいであった。
 
 補給食でエネルギーをチャージして、帰路を急いだ。檜原街道を順調に走り終えて、睦橋通りに入った。

 南風は時折強くなったが、ロードバイクの走行に不具合を生じさせるような性質のものではなかった。

 睦橋通りでも一箇所、立ち寄ったところがあった。それは「熊野神社」である。睦橋通りに面している小さな神社である。

 その境内に入り、派手さはないがどことなく趣のある佇まいの本殿にお参りした。ささやかな祈りを形式にのっとってした後、鳥居の近くにある桜を愛でた。
 
 広くそれなりに交通量のある睦橋通りに面してはいるが、境内は静かで神社らしい静謐な空気に満たされていた。風にそよぐ桜はまだ見頃を留めていた。

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 睦橋通りを走り切り、一旦国道16号を少しの間だけ走り、玉川上水に沿って続く道に向かった。

 有名な小説家である太宰治は玉川上水に入水して自殺した。1948年6月のことである。70年以上前のことである。

 今見るとそれほどの水の深さはないが、その当時はもっと水量が多かったのであろう。帰路では水の流れと同じ向きに向かって走った。

 「現在の暗く重苦しい空気も、時間が流れていくとともに徐々に解消されていくのであろう・・・しかし、そのためにはもうしばらくの時間の経過が必要なようだな・・・」そんなことを思いながら、帰路の最後の行程を走っていった。 

2020/4/6

5140:時坂峠  

 「払沢の滝」の駐車場には結構な台数の車が停まっていた。この駐車場から「払沢の滝」までは徒歩で15分くらいであろうか、川に沿った緑豊かな林道を歩いていくと、その滝はある。この時期、その滝の姿は多くの人々に心の癒しを与えてくれることであろう。

 その駐車場の近くの桜がとても綺麗であったので、思わず記念撮影をしてから、時坂峠のヒルクライムを開始した。

 前回の山伏峠のヒルクライムでは体が重く、ラップパワーは230ワットが限度であったが、今日はそれよりも負荷高めで走る予定であった。

 駐車場が途切れるあたりでラップボタンを押した。ここからチームで走る時のゴール地点である道が分岐する平坦地点まで3km弱。

 走る距離は短いが、斜度はしっかりとあり、なめてかかると痛い目に会う。前半斜度は厳しめになったり、緩んだりを繰り返す。

 峠道の表面は所々荒れているの。できるだけタイヤが跳ねるような箇所は避けて走っていった。

 ラップボタンを押してからの平均パワーは、「ラップパワー」としてサイコンに表示されているが、今日はあえてその数値に視線を向けないようにしていた。

 何度かヘアピンカーブを曲がった。内周は斜度がきついので、外の方を走った。時坂峠は残り1kmほどになる箇所の斜度が結構きつい。

 脚の余力は、真夏のソフトクリームのように、急速に溶けていった。ようやく風景が一気に広がるエリアに達した。

 その瞬間、サイコンの「ラップパワー」を見た。「251ワット」であった。私としてはかなり高めの負荷である。

 視界の先にはこれから走っていく道がはっきりと見えた。その道はまだまだ距離があり、高い地点まで続いている。

 その光景は疲弊してきた体と心に重くのしかかってきた。ケイデンスが落ちてきた。エンジンのパワーも明らかに低下してきた。

 どうにか「ラップパワー」を250ワット以上に保ったままゴールしたかったが、その数値は少しづつ落ちていってしまった。

 私としては前半オーバーペースだったようで、ゴール手前で脚はすでに売り切れ状態になってしまった。

 ヘロヘロ感満載でようやくゴール地点に達した。「ラップパワー」は結局246ワットであった。ロードバイクを木に立てかけて、座り込んだ。

 しばし、呼吸を整え、体を休めた。心の中では「免疫力を下げるほどに疲労してはいけないんだった・・・」と後悔したが、後悔先に立たずである。

 やや休んだのち、景色が美しい展望ポイントまでロードバイク跨って移動した。300メートルほど移動すると、展望ポイントがある。

 ここには数年前まで「峠の茶屋」があったが、今はもう営業はしていない。ここからの眺望は素晴らしい。特に今日の様に天気の良い時には、素晴らしさが際立つ。

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 しばし、木製のベンチに腰掛けながら静かな一時を過ごした。春らしく野鳥が遠くで絶え間なくさえずり続けていた。

 時折吹く風は南風で肌に触れるその感覚は優しいものであった。ヒルクライムでの疲労感はすっかりと体から抜け落ちていくようであった。

2020/4/5

5139:桜  

 コンビニ休憩を終えて、先へ向かってリスタートした。気温は天気予報のとおり上がってきた。ウィンドブレーカーなしでちょうど良かった。

 睦橋通りを走っていくと、少し前に同じく単独で走っているローディーの姿が見えた。徐々にその背中は近づいてくる。

 「どうしようか・・・ペースを落として間隔を開けて後方を走るか、現状のぺースを維持してパスするか・・・」

 しばし、思案したが、ペースを少し上げてその右を駆け抜けた。パスする際に軽く頭を下げて、前に出ていった。

 睦橋通りは信号が多い。赤信号で止められることもあり、何度かストップ・アンド・ゴーを繰り返しながら、まっすぐに走っていくと、JR五日市線の終点である「武蔵五日市駅」が見えてきた。

 その手前を左折して檜原街道に入った。商店街になっている市街地を走っていくと、少し前に家族で来たことのある「寿庵 忠左衛門」のささやかな佇まいの店が見えた。

 ここの蕎麦はちょっと値段が高めであるが、しっかりとしたコシがあり美味しい。つゆは出汁が効いていて深みのある味わいで、蕎麦との相性が良好。天ぷらもさくっと揚がっていて上品な仕上がり。素材の良さが活かされている。

 「また、家族を連れてこよう・・・」と思いながらその前を通りすぎた。市街地を抜け切ると緑の比率が高くなってくる。

 天気が良いので、景色が素晴らしい。時折、まだまだ花を残している桜が目を和ませてくれる。肌で感じる風は春のものであり、心をくすぐるものである。

 やはり、外を走るのは気持ちが良いものである。ひと時ではあっても世の中の喧騒を忘れ、心の中の澱もどんどんと排出されていくようであった。

 やがて道は両側を鬱蒼とした木々が覆う「陰地」の中に入っていった。「陰地」ではヒヤッとした空気感が全身を覆う。ただし、冬の様な厳しさは微塵もなかった。

 道の右側に「檜原村役場」の建物が見えてきた。「村役場」という言葉の響きよりもはるかに立派に見える建物の前を通り過ぎると「橘橋」のT字路交差点が見えてきた。

 「時坂峠」へ向かうにはこのT字路交差点を右折する。左折すると21km先に「都民の森」がある。大半のローディーは左折するが、私は圧倒的な少数派である「右折派」に今日は属していた。

 右折して小さな集落を通り抜けた。数年前この道で私は「猫落車」をしたことがあった。道の左側を順調に走っていた私は同じ道の右端をゆっくりと同じ方向に歩いている猫の存在は認識していた。その猫が私が近づいてきた瞬間に何を思ったか左斜めに猛ダッシュしたのである。

 予想外のその猫の瞬間ダッシュに私はブレーキレバーを思いっきり引いたが間に合わず、前輪がその猫の横っ腹に乗り上げるような形になり、落車した。

 猫は「ギャッ〜」と声を上げて走って逃げていった。私はアスファルトの上に転がった。サイクルウェアの所々が破れていた。

 そんなことを思い出しながら走ってくと道の左側に黒猫がいた。こっちに向かってきていた。ロードバイクを右に大きく膨らませてやり過ごした。この黒猫は不穏な動きは一切しなかった。

 ややあって檜原豆腐で有名な「ちとせ屋」の店舗が見えてきた。日本の滝百選にも選ばれている「払沢ノ滝」の入口にある「ちとせ屋」は、手作りにこだわった昔ながらの豆腐屋である。チームで来た時には必ずここの「うの花ドーナツ」を食べる。

 「ちとせ屋」の手前を左折した。少し上っていくと公衆トイレがある。「払沢の滝」に向かう観光客用の駐車場があり、結構な台数の車が停まっていた。その駐車場の近くの桜はとても綺麗な色合いを放っていた。その前でLOOK 785 HUEZ RSを停めてスマホで写真を撮った。 

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2020/4/4

5138:単独走  

 日々発表される東京都のコロナウィルス感染者数は高い数値を維持している。いつになったら終息方向へ向かうのか、まったく不透明である。

 サイクリングは「不要不急の外出」にあたるのか・・・あたるといえばあたるが、小池都知事が避けてほしいと発表した「密閉」「密集」「密接」の三つの「密」とは、無縁である。チームで走る場合は少々難ありであるが、単独走であれば問題はなさそうである。

 ロングライドにとってこれ以上ないのでは思えるほどに良いコンディションであるこの時期、サイクリストとしては外を走りたい、と思うのは自然な流れである。

 もちろん室内でZwiftという選択肢があるのであるが、外を走ることにより精神が受ける快感度合いは、けた外れに大きい。

 「一人で走ろう・・・」と意を決して、朝の7時半にLOOK 785 HUEZ RSに跨って自宅を後にした。

 サイクルウェアは春仕様にした。テレビの天気予報が伝えていた今日の最高気温の予想は22度である。かなり暖かくなりそうであった。

 しかし、朝のうちはまだ少し肌寒くウィンドブレーカーを着用して走り始めた。目的地は「時坂峠」と決めていた。

 この時期、疲労のために免疫力を下げてしまうような過酷なトレーニングやロングライドは避けなければならない。時坂峠の場合、距離が比較的短く、上り返しもない。体に優しいロングライドコースである。

 自宅を出て南西の方向へ走った。やがて道は玉川上水に沿って続く道に達した。玉川上水沿いには多くの木々が植えられている。桜も多く、すでに葉桜になってしまっているが、それでも目に麗しい桜の色合いは、心を和ませてくれる。

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 単独ライドの良いところは、「綺麗だな・・・」と思える風景に出会うといつでもロードバイクを停めて、スマホで写真を撮れるところである。

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 1時間も走っていると暑くなってきたので、ウィンドブレーカーを脱いだ。午後には確かに20度を超える気温になりそうな気配である。

 国道16号に達して左折した。少し走って睦橋通りに向かって右折した。睦橋通りでは結構な数のローディーを見かけた。その多くが単独走か2,3名の小集団であった。

 20kmほど走ってから、睦橋通り沿いの「ファミリーマート」でコンビニ休憩をした。単独走の場合休憩を端折る傾向があるが、「疲労度を抑えて・・・」と思い、休息タイムを挟んだ。 

2020/4/3

5137:FTP  

 ローディーの間では時折会話の中に「FTP」という単語が混じる。正式名称は「Functional Threshold Power」である。単純に直訳すると「機能的な閾値のパワー」となる。

 これだと何のことだかさっぱりわからないが、その実質的な意味合いは「1時間出力し続けられ、それ以上は出力できないというパワーの数値」ということになる。

 チームで参加する「Mt.富士ヒルクライム」や「乗鞍ヒルクライム」などでは、この数値が高いほど有利でタイムが良くなる。

 その「FTP」、正確に計測するにはかなりつらい計測方法を体験する必要があるが、Zwiftでのトレーニングを何度か実施してみると、そのFTPを概ねこのくらいでしょうという感じで予測してくれる。

 私のFTPは215ワットぐらいとの予測結果のもと、これを少しでも上げるためのトレーニングを細々とではあるが、始めた。

 東京都のコロナウィルスの状況は最近非常に悪化している。その影響でチームでのロングライドは再び自粛となり、危険性が指摘されたスポーツジムは3ケ月間の休会手続きをとった。

 週に1回通っていたテニススクールも当分の間中止との連絡が入り、家族の進言により社交ダンスの教室も中断した。さらに4,5月に予定されていたゴルフコンペは全て中止となった。

 となると室内でトレーニングできるZwiftぐらいしか汗をかく手段がない。Zwiftは実に様々なメニューが用意されている。

 多くのコース、多くのイベントがあるほか、多くのトレーニングメニューがある。そのトレーニングメニューのなかで最近選択するのが、「FTP×2」という名称のものである。

 これは全体で55分間のトレーニングメニューである。まずは10分間のアップから始まる。出力は低い数値から徐々に上がっていき170ワットになる。10分間のアップが終わったら私の推定FTPである215ワットで15分間漕ぎ続ける。

 15分が経過すると休憩がはいる。一気に出力は130ワットまで下がり、その状態で10分間軽くなったクランクを回し続けて、脚を休ませる。

 10分間の休息時間が終わったら2回目の「FTPゾーン」に入り込む。1回目と同じで15分間215ワットで脚を回し続ける。

 1回目の15分間は比較的余裕があった場合でも、この2回目の15分間は結構つらい。汗もこれでもかという具合に流れ出てくる。

 ようやくその2度目の「FTPゾーン」を潜り抜けると、5分間のクールダウンになる。出力は160ワットからゆっくりと下がっていき、最後は軽くクランクをクルクルと軽く回せる状態で終了する。

 全部で55分である。指定された出力はスマートトレーナーが綿密に機能し、ほぼ指定通りの出力が維持できる。ケイデンスが落ちるとクランクが重くなり、ケイデンスが上がると軽くなる。その調整具合は正確で、指示された出力のプラスマイナス1ワットほどの数値がスマホの画面には表示され続ける。

 この「FTP×2」のトレーニングメニュー、「今日、ちょっと疲れてるな・・・」「明日には疲れはあまり残したくない・・・」「この時期免疫力を下げるほどにハードなトレーニングは避けるよう言われているし・・・」という具合にテンションが低い時には、30分間に短縮できる。

 その短縮バージョンは、10分のアップ、15分のFTPゾーン、そして5分の休息タイムでちょうど30分である。これだと疲労感は少なめである。

 今年は、6月に開催される「Mt.富士ヒルクライム」は中止の可能性が高く、8月の下旬に予定している「乗鞍ヒルクライム」もその開催が危ぶまれている。そのためモチベーションが上がりづらいが、どうにかZwiftの豊富なトレーニングメニューを活用して、細々とではあっても、体を絞り続けていきたいと思っている。

2020/4/2

5136:根源  

 そのコンパクトにして精緻な質感のNAGRA CDCに最初にセットされたCDは、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲であった。

 ヴァイオリンは五嶋みどりである。バックを務めるのは、クラウディオ・アバド指揮ベルリンフィル管弦楽団。

 五嶋みどりの演奏は実に安定感がある。凄みを切っ先鋭く発散しようとする力みは全くない。いたって素直にかつ柔軟に演奏している。

 贅肉といったものの存在を感じさせない演奏は、見事にシェイプアップされた美しい肢体を眺めているような感覚にとらわれる。

 もっとグラマスな体型の女性(演奏)を好む方もいるであろうが、正統的でかつ完成度の高いその演奏には、心をむやみに陽動しようとする感じがなく、穏やかな心情で第1楽章を聴き終えた。

 「どう・・・このCDプレーヤー・・・taoさんのところもTANNOYのモニター・シルバーにヴィンテージの真空管アンプの組み合わせだから、ここのシステム構成に近い。やはり似た感じだった・・・?」と小暮さんに、その印象を求められて、はたと返答に困った。

 「えっと・・・なんというか・・・表現が難しいですね・・・音楽が流れ始めて少しするとCDプレーヤーの存在を忘れるというか・・・これといった個性がないというか・・・オーディオ的な聴き方をする・・・例えばSN比がどうのとか、レンジが広いとか狭いとか、サウンドステージの奥行きが深いとか・・・そういったことがどうでもいいことのように感じさせてくれる・・・そんな感じでしょうか・・・ハイエンド機器に時折感じるような畏敬の念は沸いてくることはなく、ただ演奏者の真摯な演奏に静かに耳を傾けていたくなるような感じですね・・・一言でいうと自然・・・ある側面からすると大したことない・・・そんな印象ですね・・・」

 「それって褒めてる・・・?」と問われたので「どうでしょうか・・・ある意味においては最大の賛辞かもしれませんし、音にばかり耳が行くオーディオマニア的には『値段のわりにしょぼい・・・』という評価になるかもしれません・・・玉虫色ですね・・・でも、見た目通りですね・・・人を驚かすようなものは決して狙っていません・・・」私は素直に感じたままを口にした。

 「確かに200万円を超える価格の超高級CDプレーヤーとしては、度肝を抜くような音は出てこないからね・・・しかし、NAGRAの他のオーディオ機器にも通じる独自の造形美と存在感、すっと耳に馴染むような感覚のある音質など、この製品をまとめあげた技術者の芸術的なセンスの高さが窺える・・・そんな印象を受けるCDプレーヤーだね・・・」と小暮さんは話されていた。

 そんな会話をしばし続けたのち、2枚目のCDがNAGRA CDCに装着された。グレン・グールドのピアノによるR.シュトラウスの『ピアノソナタ ロ短調』と『5つのピアノ小品』が収められたCDであった。

 グレン・グールドがR.シュトラウスの作品に深く傾倒していたことはよく知られいる。ロマンの香りが色濃く残る「ピアノソナタ ロ短調」は、1982年の録音である。グールドが亡くなる1ヶ月前のことである。
 
 その「ピアノソナタ ロ短調」を聴いた。いつものように曲に深く没頭し、彼岸の彼方にワープしながら演奏するかのようなグールドのビアノは、異様なまでの美しさに彩られている。

 その演奏を聴きながら、小暮さんがヤフオクに出品すれば数十万円の利益が出ることが明白なのに、あえて手元に残すことを選択した心情が少し分かるような気がしてきた。

 このNAGRA CDC・・・はっとするような凄みはない、個性的な演出もない・・・でも、何かしらしっかりと大きな根源に根を下ろしているような、そしてその根は思いほのか広く深く張っているような・・・そんな気のするCDプレーヤーであった。

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2020/4/1

5135:CDC  

 LEAK POINT ONE STEREOはとてもコンパクトな形状をしている。現代のプリアンプのサイズからすると60%程度のサイズ感である。

 その隣に設置されたそのCDプレーヤーは、POINT ONE STEREOの隣にあっても決して大きくは見えないものであった。

 そのCDプレーヤーはNAGRA CDCであった。CDCが発売されたのは10年以上前である。けっして最新の機器ではない。

 プレーヤーメカニズムは基本的な構造はフロントローディングであるが、トップローディング方式の長所も兼ね備えた独自の方式を採用している。

 フロントローディングが好まれるのはその利便性による。設置に関する制限も軽くなるので、現在はフロントローディングが主流である。

 CDCはトレイだけが出入りするのではなく、プレーバックモジュールごと前後に移動するかなり凝った構造を採用している。

 CDメカニズムはフィリップスCD-Pro2を使用している。NAGRAの他のオーディオ製品と同様の質感と造形でまとめられたそのデザインは、溜息がでるほどに美しい。

 プロ機器がもつ極限まで突き詰められた機能性と美しい造形美が見事に両立した稀有な製品である。
 
 コンパクトな形状でありながら、いやむしろコンパクトであるがゆえにより一層、独特の存在感を発散しているように見える。

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 「NAGRAですか・・・」と、私は小暮さんが淹れてくれたコーヒーを飲みながらぼそっと呟いた。

 すると小暮さん「これはね・・・お客さんから買い取ったもので、当初はヤフオクで売れば結構な利益が出るとほくそ笑んでいたんだけど、しばしラックに置いているうちに手放しがたくなってきて、長年使ってきたGOLDMUNDのMIMESIS39とMIMESIS12のペアを処分したんだ。形としてはCDCがGOLDMUNDを追い出した感じになるね・・・良いデザインでしょう・・・CDCはプリアンプ機能が付いているんだけど、デザイン的にはこのCDCが一番素晴らしい。CDPだとここまで独自のオーラが感じられないんだよね・・・」と話された。

 「操作感も素晴らしくてね・・・指になじむというか、指で触れる重さが絶妙で、ライトの点灯の具合、このメカニックごと出入りする際の音など、実に気持ちい良いんだよね・・・プレイやストップはこのダイヤルで操作するんだけど。操作するたびに快感って感じでね・・・癖になるよこれ・・・」と続けた。



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