2020/2/21

5094:相性  

 白黒の写真で見るショスタコーヴィチの顔はどこか陰鬱で暗い。スターリンが恐怖政治でソ連を支配した時代という雰囲気を象徴するような印象を受ける。

 この交響曲第5番は命の危険が身に迫るなか、起死回生の1曲となった。革命とそれに続く社会主義政治の勝利を謳歌するような構成は、ソ連の体制側から熱烈に歓迎された。

 この曲により一気に名誉挽回したショスタコービッチはソ連という冷たく強固な体制の中で居場所をしっかりと掴んだのである。

 しかし、彼の死後この第5番に隠されたショスタコービッチのメッセージに関する諸説が披露されるようになった。

 その一つが今聴いている第4楽章に関するものである。第4楽章の冒頭やクライマックスに何度も、カルメンの有名なアリア「ハバネラ」の中の一節が引用されている。その歌詞は、「信用しちゃだめよ!」の部分に相当する。

 加えて、クライマックスでは、トランペットが「信用しちゃだめよ!」という歌詞のフレーズを演奏する裏でバイオリンがひたすら「ラ」の音を弾き続る。「ラ」は、古いロシア語で「リャ」と発音し、「私」を意味する。そこから2つの言葉を結びつけると、“私は信用しない"というメッセージが埋め込まれていた・・・というものである。

 そんなことを頭にうっすらと思い浮かべながら「革命」という名前が日本で付けられた交響曲の最終楽章を聴いた。

 DIATONE DS-4NB70は、この劇的に盛り上がる最終楽章をとっ散らかることなく、冷徹に描き分けていった。

 冒頭の金管の咆哮も過剰に派手になることはない。重々しく激しいティンパニーの連打も適切な位置でしっかりと存在している。

 勢いに任せた激走ではなく、冷静なペース配分に基づいたラストスパートのような印象を受けた。「ここで、行こう・・・」という強い意志を感じた。

 OCTAVE V70SEの冷静沈着な性格も効を奏しているのであろうか・・・このアンプはドイツ製である。ドイツ車に感じられる一種の冷徹さが感じられる。もしも駆動するアンプが例えばUNISON RESEARCHのSinfoniaであったりすると、相当印象が変わったのかもしれない。

 「とても俯瞰的というか、こっちにぐわっと迫ってくる感じではなく、冷静にかつ正確に描き分けていますね・・・なかなかすごい・・・」と私はその印象を呟いた。

 「スイス・ドイツ・日本の連合体だからね・・・ラテン系が入っていない。このスピーカーの能力は相当高いよね・・・好き嫌いは分かれるかもしれないけど・・・」と小暮さんは応じた。

 「taoさんはクラシックオンリーだから、こういうのは聴かないと思うけど、ちょっと面白いからかけてみるね・・・」と小暮さんが言って、GOLDMUND MIMESIS39にセットしたのは、THE SMITHのファーストアルバムであった。

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 アルバムタイトルはバンド名と同じ「THE SMITH」。発売は1984年。その最初の曲である「Reel Around the Fountain」と2曲目の「You've Got Everything Now」を聴いた。

 ジョニー・マーのシャープなギターとモリッシーの浮遊感のあるボーカルの絡み合いが独特の雰囲気を醸し出す。

 イギリスのマンチェスターのバンドである。実際にマンチェスターに行ったことはないが、「マンチェスター」と聞いてイメージするどこかしらグレーの色合いの空気感がその楽曲からは感じられる。

 ドラム、ベース、ギター、そしてボーカル・・・シンプルな構成である。そのいずれもが「適切」と評すべき音色と空間で配置されていて、ゆったりとリラックスしながら音に耳を傾けていた。

 「クラシックよりも相性がいいかも・・・」と内心思っていた。2曲聴き終えたところで「ポピュラー系のほうが相性が良いようですね・・・」と小暮さんに話しかけた。

 「そうだよね・・・どちらかというとね・・・クラシックも悪くないけど・・・じゃあ、こういうのかけてみようか・・・taoさんは絶対に聴かないだろうけど・・・」と言って小暮さんは一枚のCDを取り出した。



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