2020/2/20

5093:智  

 小暮さんの説明によると、専用のスピーカースタンドはDIATONE製ではなく、ティグロン社製のものを採用しているとのことである。当然DAITONE側からの様々な要望に応じて、そのサイズや構造など細かな調整が行われているので、スピーカーとの相性はばっちりのようである。

 「オーディオショップ・グレン」の試聴スペースの広さは15畳ほどであろうか。そのスペースの短辺側にスピーカーは置かれている。背面の壁からは相当離されて置かれており、内振りをつけない平行法でセッティングされていた。空間が広く再現されるセッティングである。現代型の見るからに空間表現に長けている形状のスピーカーであるので、このセッティングは効を奏する感じであった。

 送り出しは小暮さんが長い間使われているものである。CDトランスポートは、GOLDMUND MIMESIS39でDAコンバーターは同じくGOLDMUNDのMIMESIS12である。随分と前の機種であるが、その美しさは色褪せることは決してない。

 残念ながらプリメインアンプであるOCTAVE V70SEはフォノイコライザー内蔵タイプではなかったので、今日はデジタルのみでの試聴となった。

 GOLDMUND MIMESIS39、GOLDMUND MIMESIS12、OCTAVE V70SE、そしてDIATONE DS-4NB70というラインナップである。心躍るというか、一人のオーディオマニアとしてはかなり好奇心のそそられるラインナップでの試聴ということになった。

 最初にかかったのはチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の第1楽章であった。ピアノはマルタ・アルゲリッチ。クラウディオ・アバド指揮によるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との共演である。録音時期は1994年12月である。
 
 アルゲリッチらしい躍動感のあるピアノ演奏にアバドはしっかりと寄り添い的確にサポートする。両者は長年パートナーを組んだダンスペアのようにぴったりと息の合った動きで聴衆を魅了する。このCDはライブ録音である。聴衆がすぐさま魅了されていくさまが空気感として分かってしまうような印象を受けた。

  DS-4NB70はブックシェルフ型であるが、低域に不足感をあまり感じさせない。先入観として「DAITONEは高域が硬くきつめ・・・」といったものがあったが、そういったネガもほとんど感じさせなかった。

 この DS-4NB70は、とあるオーディオマニアのお宅で3年間鳴らされてきた個体であるので、エージングがすっかりと完了しているということもあるのかもしれない。卸したての新品であったならまた違った印象を持ったかもしれない。

 色気や艶やかさという点に関しては、陶酔感をもたらすような響きというよりも、冷静で緻密な響きの質感を感じるので、フランコ・セルブリンが活躍していたSonus faber社の往年の銘器のような官能性は少なめである。

 OCTAVE V70SEとの相性も良いようで、両者の長所を上手く連結させている印象があった。デザイン的にもGOLDMUND MIMESIS39と12、OCTAVE V70SE、そしてDS-4NB70はそのすべてが理知的な造形の製品で、「情よりも智・・・」といった風情を感じるものでラインナップが構成されている。音にも、その「智」が前面で出てくる。

 続いてGOLDMUND MIMESIS39にセットされたCDは、ショスタコーヴィッチの交響曲第五番であった。リモコンを操作して小暮さんが選択したのは第四楽章であった。

 交響曲第5番が作曲されたのは1937年。この当時はスターリンの粛清が嵐のように吹き荒れており、ショスタコーヴィチにもその危険が及び始めていた。

 そのためショスタコーヴィチはこの第5番を作曲するにあたって前衛的な手法を手控え古典的な手法を採用した。これが幸いし第5番は革命20周年の記念日(1937年)に初演され、ソ連内で大きな評価を得た。そしてこの作品は社会主義リアリズムの傑作として称えられた。

 演奏はエフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー交響楽団。1973年、日本の東京文化会館でのライブ録音である。



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