2019/12/25

5036:E65  

 BMWの7シリーズを初めて間近に見たのは、大学生4年の頃であった。場所は成田空港。その一隅に発売されたばかりの2代目BMW(E23)が展示されていたのである。

 成田空港に行ったのは、自分が海外旅行をするためではなく、当時付き合っていた女の子が卒業旅行で海外に旅行に行くので、空港まで送っていったのであった。

 送り終えての帰り際にその7シリーズの展示を見つけて、時間に制約がなかったので、しげしげと眺めた。

 その姿は端正にして優雅。実に良いデザインに思えた。ウルトラ貧乏学生であった私には全く無縁の車に思えたが、憧れといった感情はしっかりと心に刻まれた。

 それから十数年が経過し、初めてBMW 7シリーズを購入したのは大学生の頃憧れの眼差しで見つめたE23の次の世代のモデルである735i(E38)であった。

 2002年に公開された映画「トランスポーター」で、ジェイソン・ステイサムが演じた主人公の愛車はE38の735iであった。

 E38は一世代前のE23の面影というか雰囲気をしっかりと踏襲していた。端正で落ち着いた造形美を誇っていた。

 その後BMW7シリーズは、次の世代になった時に大きな変革がもたらされた。新たにBMWのデザイン責任者になったクリス・バングルが最初に手掛けたのが第4世代の7シリーズ(E65)であった。

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 その変革ぶりは結構衝撃的で、従来のBMWファンからは批判が相次いだ。その批判に対してクリス・バングルは「一つのメーカーのデザインが安定してしまうと、それを見る人々の思想も固定されてしまい、顧客が固定されてしまう恐れがある。そしてタイムフレームの問題がある。革新的な作品に対して最初人々は驚きますが、やがて理解されるようになり 、評価が完結する。現在のBMWのデザインも5年、7年と時間が経過してから、評価が決まる。」と話した。

 E23、E38の調和的なデザインに対して、E65は確かにアバンギャルドな造形に溢れていた。それはエクステリアだけでなく、インテリアも同様であった。

 私も最初にE65を目にした時には首を傾げた。「これのどこが良いのであろうか・・・?」と思わざる得なかったのである。
 
 しかし、日本で発売が開始されたから2年ほどした頃に、そのE65は我が家のガレージに迎え入れられた。

 確かにE65のデザインは灰汁が強い。しかし、その灰汁は時間の経過とともに何かしらの魅力でもあると思えるようになったからである。

 そのE65は5年と半年の間、私の相棒として活躍してくれた。ともに走った距離は11万キロほどであった。

 12月22日の日曜日に、市野さんに初めて会った時、一番驚いたのがその乗られてきた車であった。

 E65であった。型番は745i。「マイナーチェンジ前の745iは15年ほど間に販売が終了した・・・ということはそんなに長い間、この車を乗り続けられているのであろうか・・・」と少し驚いた。

 あとで市野さんに車の件を確認すると、長い間乗り続けられたわけではなく、数年前に中古車を安く入手されたとのことであった。

 その個人的な思い入れのあるE65の745iのトランクには、二つの段ボール箱が入っていた。その二つの段ボール箱は次々に我が家のリスニングルームに運び込まれた。



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