2019/11/26

5007:幻想曲  

 巨大な電源部を有する市野式DACの実力はどのようなものなのか、早速検証することになった。リスニングルームには近くにお住いのAさんも来られていた。

 CDトランスポートはSONY NAC-HD1である。これは一旦CDのデーターをハードディスクに読み込んでそのデジタルデーターをDACに送り込む。

 NAC-HD1は250GBのハードディスクを搭載していて、「約380枚のCDデーターを高音質のまま収録できるHiFiジュークボックス」としてかって販売されていたものである。

 最初に聴かせていただいたのはモーツァルトの幻想曲ハ短調 K475。演奏はマリア・ジョアン・ピレスである。

 モーツァルトとしては珍しい「ハ短調」という厳粛な調性のこの曲は、地を這うような低弦の重い響きがら始まる。

 曲は転調を重ね、緩急のテンポを繰り返す。「幻想曲」というタイトルの通り、さすらっているように感じられる。

 当時、「ハ短調」については「愛の告白、あるいは愛する魂の渇望、苦悩・憧れ・ため息」といった説明がなされていたが、まさにこの曲はそうった感情がちりばめられているようである。

 市野式DACを通じてデジタルからアナログに返還された音の質感は、言い古され陳腐化してしまった表現ではあるが「アナログライク」という表現がぴったりとくるものである。

 パワーアンプを思わせる威容を誇る電源部の効果は絶大で、音の抜けきり感が素晴らしい。抑えつけられたような感触が全くない。

 1989年、30年前の録音であるピレスの演奏は、何かが降りてきて彼女の魂に乗り移ったかのようである。とても精神性の高い演奏である。

 その精神性の高い演奏を、市野式DACでは決して矮小化することはない。スムースに等身大で提示してくれる。

 「良いDACですね・・・この巨大な電源部を目にした時からただ者ではないとは分かていましたが、本当にただ者ではなかったですね・・・」

 と、幻想曲が終わった時に感想を述べた。Aさんも感心されていた。Mさんはしたり顔でニヤニヤされていた。

 その後他の曲も聴いた。その印象は変わらなかった。DACは電源部が大事ということは以前聞いたことがあったが、今回の体験はその認識をより強くするものとなった。



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