2019/11/22

5003:SHAKTI  

 ナポリタンを完食して、珈琲カップの中の珈琲も無くなった。喫茶店「Mimizuku」の店内では時が止まったかのように感じられるが、もちろん時刻は現実の世界同様に進展している。

 スマホで時刻を確認すると6時50分であった。小暮さんには7時ごろに行くと言ってあるので、ちょうどいい時刻になった。

 会計を済ませて、店の外に出た。「オーディオショップ・グレン」は同じビルの4階にある。古いビルなのでエレベーターはない。

 階段をゆっくりと登っていった。踊り場で180℃曲がりながら階段を進むと、2階には「株式会社 光通商」というちょっと何をしているのか分からない怪しげな会社の看板が入口に掲げられていた。3階は空いているようである。そして4階に着いた。入口には「オーディオショップ・グレン」と書かれた小さな看板が掛かっていた。

 金属性のドアをノックした。「ゴン、ゴン、ゴン・・・」と鈍い響きがした。「どうぞ・・・」と扉の向こう側から声が小さく聞こえた。

 扉を開けて中に入った。玄関の所で靴を脱いでスリッパに履き替えた。リスニングポイントに置かれた黒い革製のソファに座った。

 リスニングポイントの正面の壁の両コーナーに置かれたスピーカーはTANNOYのコーナー・カンタベリーであった。

 「ユニットはモニターシルバーですか・・・?」「そうそう、ようやく見つかってね・・・イギリスでの価格も上がっていて、日本での販売価格も200万を超えるようになったよ・・・」「そうですか私は同じタイプのスピーカーを見るのは2回目ですけど、前回のモデルは168万円だった記憶があります・・・」

 リスニングポイントから見て右側に置かれているラックに収まっているオーディオ機器は常設のものばかりであった。

 レコードプレーヤーはROKSAN XERXES 10。デジタル系はGOLDMUND MIMESIS 39とMIMESIS 12の純正組み合わせ。プリアンプはLEAK POINT ONE STEREOで、パワーアンプはLEAK TL-10である。

 どれも美しいオーディオ機器である。横長で大型のオーディオラックの空いている棚板の一つに黒い平たいものが二つ重ねて置かれていた。それは見慣れないものであった。

 小暮さんが淹れてくれた珈琲がソファテーブルに置かれた。その珈琲カップの細い取っ手に手をかけながら「面白いものって、その黒い物体のことですか・・・?」と訊いた。

 「さすが、目ざといね・・・そうそうこの意味不明の物体のことだよ・・・」と言って二つ重ねてあるうちの一つを手に取って私に見せてくれた。

 手渡されたその黒い物体をしげしげと眺めた四隅の上が小さくカットされている。横が15cmほどで縦が10cmほどの長方形をしている。

 重いものではなくむしろ軽い。その上面には「SHAKTI」と刻まれていた。「これは『シャクティ』と呼ぶんですか・・・?」と私は小暮さんに訊いた。



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